落ちぶれ才女の幸福
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落ちぶれ才女の幸福

えとう綺羅/瀬尾優梨/一花夜

ヒロインが小賢しいなんて!

ネタバレ
2024年12月30日
このレビューはネタバレを含みます▼ 公爵令嬢であり、筆頭聖奏師であるセリアは王陛下との婚約も望まれる美人であったが、その事に当たり前だと思い、やや傲慢でもあった。という件りが意外。頑固な彼女の生き様が、彼女に没落の一途を辿らせる。ただ、セリアはブレない信念を持っていた。聖奏は、傷を癒すが、それに頼り過ぎると自然治癒能力が下がるとか、何とか。完全治癒をしない事を疎まれ、悪意を向けられるセリア。セリアは自分の意思を曲げずに王宮を去る。なんか、1巻のセリアの頑なさに思うところはあるんですよ。何で上手にかわして生きられないのかと。完治させませんよ!とか言う必要無いし。ここからは本人の治癒能力を信じましょう、我々がお手伝い出来るのはここまでです。と言っておけばいいものを。心象が悪いったら無い。そんなこんなで王都を追放され、身分も無いセリアは郊外でそれなりに人並みの幸せな生き方を学ぶ。謙虚になったセリアはこれまでの生き方を顧みて、静かに暮らす事を選ぶ。ところがそんなセリアは望んで無いのにも関わらず、隣国と祖国の争いに巻き込まれて行く。後半は結構血生臭い戦争のお話。命を賭けた闘いに巻き込まれて、愛のため、力の無い平民の為、身を投じるセリア。後にセリアは眠りから覚めるけども。愛の代償に聖奏師としてのチカラを失うセリアが哀れでもあり。自分でも過ぎた不可思議なチカラは持たない方が幸せでもある、という訓話の様でもあり。何とも言えない読後感でもありました。愛する人の前には自己犠牲を厭わない、というのは美しいけれども。最後に救われたので良しとしましょう。実際にはそうは行かないけれども。誠実に生きてさえいれば、報われるというお話。ここにはもう一つ愛のお話があって。最後の最後にセリアと結ばれるデニスは祖国の王の為に彼にかけられる筈の呪いを一身に受ける。忠義の為に。それは禁呪をかけたエルヴィスの命と引き換えになるものだったが、デニスは自身の命を賭けて悪政を強いるエルヴィスを伐つと決意する。というか、みすみす忠臣のデニスを見殺してまで護りたい国ってなんだよ?!とも思ってみたり。もやもやがあるものの。総じて美しいお話である事は確か。愛と愛は、何よりも強く。それが無いと何よりも弱い。
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