ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける
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ヤンデレ魔法使いは石像の乙女しか愛せない 魔女は愛弟子の熱い口づけでとける

クレイン/ウエハラ蜂

一途なヒーローの深すぎる愛に涙

ネタバレ
2025年1月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ TL小説としては、両想いになってからのラブラブエピソードがもう少し欲しかったですが、TL小説というジャンルを超えた一つの作品として、メッセージ性を感じさせる素晴らしい物語でした。
両親に殺されそうになった過去を持ち、弱者は淘汰されて当然だというアリステアに、ララが繰り返し伝えた「人は1人では生きていけない」ということは、シンプルでありふれたメッセージでありながら、現代を生きる自分の胸にも響くものがありました。また最も心を打たれた点は、ヒーローの深すぎる愛です。彼女が目を覚ます時、もう自分は生きていないかもしれない。けれど、いつか彼女が目を覚ました時のために、彼女が理想とする世界を作っておいてあげたい。それを自分が実現させたことを、彼女に知ってほしい、そして褒めてほしい、誇りに思ってほしい。ララが再びに石像に戻ってしまった時も、いつかまた目覚める彼女のために、彼女のいない未来を、死ぬよりも辛い絶望の中を、 1人生きていこうと決意したヒーローの、悲しいほどに深い愛。この2人はハッピーエンドですが、もしも叶わなくとも添い遂げることができなくとも、誰かを愛することに意味はあるのだと。巡り巡って時を超えて、誰かのためになることがあるのだと。感動せずにはいられませんでした。伝わる人には伝わってほしいのですが、ドラマ「海に眠るダイヤモンド」から受け取った感銘と同じものを感じました。
一方ララは、博愛主義で自己犠牲的な行動をする聖女のようなヒロインで、正直共感できない部分もありました。しかし、アリステアへの愛を自覚したことで、竜に食い殺される寸前の魔術師を見殺しにします。自分が身代わりになれば、アリステアを再び一人ぼっちにしてしまうから。それが何よりも、アリステアがララを愛するのと同じくらい、彼女も彼を愛している証明に感じ、胸が熱くなりました。
ララが2度目に目覚めた時の、ディズニーアニメ美女と野獣のクライマックスを見ているかのような感動と、終盤にに明かされる秘密にも驚きがあり、最後まで面白かったです。
他にも、この作者様の作品を読んでみようと思います。素敵な物語をありがとうございました…!
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