このレビューはネタバレを含みます▼
3話まで読了。
中学生の頃に母が亡くなった場所で出会った、かつて母の生徒だった男性。そして母が愛した曲を共に踊り男性への恋を自覚する。
感覚的に分かる、彼が母に恋をしていたこと。母を通して自分を見ていること。それを全て知りながら打ち明ける恋心。
淳が乗る電車を見送って続く会話のシーンが特に印象に残ってるけど、全話通して情景、行動、心情などの描写が上手い。それぞれの生活とダンスで交わる時間の描き方。彼らの生活圏で違和感のないリアリスティックなものしか使われていないのに、ドラマティックに感じるのは完全に作者さんの手腕。会話もモノローグも明確で血が通った言葉だけがそこにある。
アラサー社会人と大学四年生なので、この社会を生きるうえでの責任や大変さが大袈裟でなく地に足をついて描かれてるし、互いに恋愛対象が異性だってのも彼らが思いを巡らせる物事に焦点が合ってるので設定としての意義も感じます。なあなあに進む関係でなくしっかり思い悩んでいる姿も、覚悟って表現があったけどフェアな関係をしっかり意識させてくれて、男同士って事への言い訳はないんだなって嬉しかった。
恋愛関係に至らなくても、2人なら社交ダンスと晃介の母をキッカケに兄弟のような親愛を育むだけでも素晴らしいとは思うんだけど、どの場面をとってもビシバシ伝わる色っぽさとキラキラの恋の眼差し‥もうロマンティックが止まらん。舐めるように読みましたヨ。
恋に落ちて不完全になるっていうか、恋を知って人間の不完全さをも知るって感じ‥淳なんか頭も良いんだろうし冷静なロジックで物事考えることもできそうだけど、3話の晃介への行動を見る限り考えるより先に動いてしまう感じがもう‥それは恋に片足突っ込んでないか?とニヤニヤ。
キーパーソンが死者だからこその存在感はあるけど、この作品はそういう哀しみに取り憑かれるというよりそれも全て包みこんで、温かく軽やかなワルツを踊ろうってことなんだろうね?
違う意味でも母を愛してくれた人との会話自体がグリーフだろうし、その会話もセツクスも生きることも、他人と一緒に踊ることのよう。作者さんの意図は知らんけど、自分の中で自然と全てがひとつの円のように繋がって感じられました。
商業初なのか?作者さん何者?!名前からしてダンス経験者?
3話で語りすぎよね‥単行本発売したらまた文字数ギリギリで書くだろうよ!