穢れのない人【コミックス版】
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穢れのない人【コミックス版】

虫飼夏子

純愛とは決して違う、複雑な感情の物語

ネタバレ
2025年1月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ この話にいわゆる萌えは無い。
BLと言うよりかどちらかと言えば小説のような内容だった。でも正直作者の人生観にも触れられるこういう話は好き。
それにプラスしてキャラクターが魅力的だった。どちらも上下巻でブレることなく、キャラクターを理解しやすかった。

ここからは考察になるのだけれど
穢れのない人はどちらかにかかっているのではなく両方なのでは無いかと。
親からの愛を得られなかった子供が愛を欲しがるのは穢れのないこと、必然なことであるように思える。
また、秋鷹さんの方は言わずもがな。秋鷹さんは救いの象徴のような存在である。始まりが始まりなだけに(人生の負け組みたいな感じ)秋鷹さんの心の広さや寛大さが伝わりきらないのが少し損しているところだと思う。

薄いと言っている人がいるけれど、それは否定できないところもある。
私も秋鷹さんの気持ちがよく分からない。
第一印象が良かったというのも分かるが、逆にそこのせいで少し分からなくなってる。いっその事秋鷹さんを根っからの理解できないレベルの善人としてくれた方がどこで惚れたのかわかりやすい。というか、多分秋鷹さんが優しかったのは心の底から善人だからなので下巻の方の、『触れられると嬉しい』(意訳)的な表現はあまり要らなかった。あの台詞のせいで返って、『秋鷹さんは同情ありきで攻めと一緒にいるんじゃないの?秋鷹さん攻めのこと純粋に好きだったの?』となってしまった。
私が変な方向に考察しているだけで、本当は秋鷹さんは最初らへんの時点で純粋に攻めに惚れていたのかもしれないけれど。

あともうひとつは攻めの方は本当に秋鷹さんのこと好きなの?ってところ。個人的には、攻めが犯罪を犯して教会に逃げた時に優しくされて惚れたっていう見方と、誰でもいいから自分に愛をくれそうな人と一緒に居たかったという二択だと思う。

どちらにしてもこの2人の恋愛をただの恋愛で片付けることは出来ないし、こんなにだらだらと書いても真意は分からない。けれど、こんなに考察したり何度も読み返したくなるということは本としては素晴らしい。BLBLしいのが読みたいなら買わない方が良いけれど、物語性のあるBLが読みたいなと思ってる人には是非とも読んで欲しい一作だった。
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