『行方不明。』【単行本版】
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『行方不明。』【単行本版】

kanipan

トリップしたい時に読むBL

ネタバレ
2025年2月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 全体的にぬめっとまとわりつくような作品だった(褒めてます)…
逃避行は逃避行でもロードムービーのような壮大さはなく、クライムサスペンスのようなスリルもなく、楓と亮2人だけの世界にスポットを当てた低予算映画のようなコンパクトさ。
家庭に恵まれない彼らが不作為だったり衝動的に殺人を犯したために短くも濃厚な逃亡生活が始まるわけなのですが…何もかも忘れて快楽に逃げ込むしかなかった2人の密着感が素晴らしく依存的でとても官能的。
自首をしなければ罪が重くなるという悪状況の中でさえストーカー亮が楓への奉仕に徹しているから、ぜんぜん苦痛に見えないんですよね。逃亡中であることを読者ですらも忘れそうになる。
本当なら、亮の首に“証拠“が残っている間に警察に駆け込めば正当防衛だったかもしれない。それでもとっさに楓の手を引いたのは、二度と離れたくなかったからなんだろうな…仕方がないとはいえ8年も離れていた2人なので、機会を失えばまた会えるとは限らないと踏んで、1ミリも迷わず逃避行を選んだのかもしれない。
犯罪を共有した仲だし、ここまで身も心も溶け合ってしまったなら捕まるまで逃亡か心中コースしかないだろうと予想していたのですが、良心に背くことなく先を見据えて自首したのには驚きました。
これからもずっっっと一緒にいたかったんだろうね…主に亮が。
ただでさえイケメンな亮の笑顔よ…これ以上ないくらいきれいなラストだったけれども、贅沢をいえば、逃亡ハイでキマった状態での倒錯的おせっせだけじゃなく、穏やかなその後のイチャイチャも見たかったです。

※亮も逮捕されないことについて考えられる要素は、時効か正当防衛か少年法か情状酌量…か、この先も2人だけで罪を背負う覚悟でいるか。ここら辺を追求すると「すん…」としちゃうので、このくらいのふんわり感は致し方なし。
※続く番外編はエロに特化。ストーリーとはほぼ無関係でした。
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