もう少しだけ、そばにいて
」のレビュー

もう少しだけ、そばにいて

白野ほなみ

愛しいの答えに近いものをもらいました

ネタバレ
2025年2月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ SNSで回ってきた試し読みから出会いました。
最初はきっと事故で下半身不随になって、昔通り恋人と接することが難しくなっちゃったけど紆余曲折あって上手く収まりました!これからもラブラブ!みたいなよくあるBLのお話だと思いました。

でも、違いました。二度と失いたくないものに直面し、自分の夢を捨ててまで必死に尽くす晃と半身の機能が失われたことによって自分の尊厳の在り方と戦う晴人、そして同性が対象の恋愛の難しさや尽くし尽くされる関係の苦しさ…綺麗事だけでは描けない”人生“がそこにありました。

特に晴人の”普通に近い生活を送るために必要なこと“の描写がとてもリアルで思わず可哀想だと思ってしまう。でもその感情は晴人が一番向けられたくない感情で…言葉に尽くしがたいですが、健常者と障がい者での価値観の違いを自分も追体験した気分になりました。

この作品を通じて、私は”愛しい“が何か知った気がしました。この感情を私はあまりわからなくて…でもこの2人から教えてもらった気がします。お互いを阻む逆境(同性愛や障がい者への理解のない世間)があってもそれを乗り越えたいと思うことや自分がしたかったこと、行ってみたかったところに行っても自然と相手を想ってしまうこと、相手のために生きたいと思うこと…他にもたくさん。2人を難しいテーマで描き切ってくださった先生のおかげです。ありがとうございます。

最後のシーンについては、必要な場面だったと思いました。晴人が唯一の救いとしてずっと持っていたもの。それをおじいちゃん同士になるまで使わなかったことは、色んな壁と戦うことはあっても2人でそれまで幸せに生きてきたという証拠だと思いました。自然死もできるのに何故という気持ちはありましたが、それも晴人の”選択“なのだと。晃と人生の全てを楽しんだ、でもエッセイが書けないほど認知症が悪化してしまった。愛する人を忘れる自分になってしまう前に。そこで晃との人生が色褪せないことを”選んだ“のだと解釈しました。またそれも1つの愛の在り方なのかなと思いました。晃も一緒になのか、それとも晃はその後も晴人に見せたかった世界を回るのかがこちらの想像に任されている感じも良かったです。

この作品に出会えたことが私は幸せです。
素敵な作品をありがとうございました!
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