このレビューはネタバレを含みます▼
淵先生の他作品が素晴らしかったので、こちらも読んでみました。
青春に学問に奮闘せんと上京した学部一年の梨木学は、般教で取った映画論の講師で院生の赤澤満と出会う。映画をきっかけに満に懐くが、自分の中に独占欲や嫉妬心が芽生えていることに気づく学。そんな学の瑞々しい感性に、満もまた心惹かれていく。ノンケしか好きになれないゲイの満と、純真無垢な学が、お互いの生きやすさを見つけていくラブストーリー。
大学という場から吸収できるもの全てを吸収しようとする学くんの意欲的な姿勢が素晴らしい。私も学くんくらい最大限コマ取ってみっちり頑張れば良かった〜と後悔に頭抱えました(笑)農学部で勉学に励む碧くんと、遠距離から碧くんを想う郷くんが見られたのも嬉しかった。
淵先生の作品に出てくるホモソ文化から遠い男性って興味深いんですよね、碧くんも学くんも文くんも。周囲に染まれず染まらず自分らしい道を見つける強さに尊敬の念を抱きます。
そして、恋愛対象と性愛対象にずれがある満さん。その絶望、その腹立たしさに強く共感しました。市場は異性愛基準ですからね〜…。
傷と矛盾と経験とみっともなさと、複雑な感情が渦巻いて動けない満さんを包み込むのが、恋愛初心者も初心者で邪なところが一切ない学くんというのも良い。
「生きづらさに巻き込んでごめん」の答えが「生きやすくなったよ」、こんなに救われるような愛の告白ってあります?いやない。改めて淵先生の言葉の選択と感性が大好きです。
エンドロールが終わっても、すぐに次の上映が始まるように、長く続く二人でいて欲しいです。
(読み放題にて)