アバウト ア ラブソング【単行本版】
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アバウト ア ラブソング【単行本版】

夏野寛子

瓶の蓋を閉める勇気

ネタバレ
2025年3月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ バンドマンとコンビニ店員を掛け持ちする星名みづきと、バイト先の眩しくてかわいい瀬戸佑成が恋人になるまでの5年間の物語。

たとえ漫画であっても成人と未成年者の恋愛を肯定的に描くことに反対する会代表を自称する身としては、高校生だと発覚した後の理性の働きにほっとする反面、突き離すつもりで消えない残り香を刻みつけていく星名はなんてずるい大人なんだと途方に暮れました。
会わないと言いながら追いかけ、影響を与えることを恐れながら縛ろうとする、それを自らずるいと予防線まで張られたら、何も言えず忘れられもしない…。

なし崩し的に攻められるのに弱いらしい瀬戸くん、星名さんを好きになったきっかけも若さゆえに見えてしまうんですよ。親に将来の夢すら言えず相談する前からヤケを起こす高校生、そこに現れる優しく話を聞いて受け止めてくれる色っぽいお兄さんなんてさ…罪な大人だ全く。
広い世界に出て様々な出会いや経験を重ねてから再会、気持ちを再確認しても充分間に合うほど若いという自覚を若者が持つことは難しいと思うけどそこをなんとか…。

17歳から22歳。瀬戸くんが望んだとしても、二度とない貴重な青春を待つことに使わせた重みを星名さんは噛み締めて欲しいです。
瓶の底にきらめく遠い思い出のまま蓋をした方が、私にとっては美しい終わりだと思いました。
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