猫背が伸びたら
」のレビュー

猫背が伸びたら

大島かもめ

作者買いです

ネタバレ
2025年3月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ ラフなタッチでササっと描かれている中に、不意に表れるドキッとするような表情が見るものを釘付けにします。
攻めの新井は中学時代の出来事がきっかけで心を閉じてしまい人と深く関わらないようにして生きてきました。自分の周りに壁を作って、好きな人に対してさえも普段口から出るのは当たり障りのない返事ばかり。その反動なのか心の声は饒舌で、お陰で新井という人間がくっきり浮かび上がって感情移入しまくれました。冒頭に書いたドキッとする表情というのは全て受けの石渡のものですが、纏わりつくような新井のモノローグの合間に、何とも言えない石渡の表情が、暑い中吹き抜ける涼風のようで、一瞬全部忘れて見入ってしまうんです。「あ~、好きだな~」って思ってしまう。
また石渡という男がとんでもなくイイ男なんですよ。特別な何かがあるわけじゃないのですが、本当に自然にありのままで存在してる感じが凄くイイ。仕事柄か洞察力もあって、新井のことをよく見ていて、壁を作る相手に対してどうアプローチすればいいか慎重に考えるところなんか、とても優しい人なんだなと思いました。そういうさりげない気遣いは一朝一夕で身に付くものではないと思うので、石渡にも今まで生きてきて色々あったんだろうなと察します。石渡の背景についてはほとんど触れていなかったけれど、彼自身が分かりやすい性格なのでモヤモヤすることはなかったです。
エチシーンは修正がいらないくらいの描写でしたが、石渡の表情がいいのなんのって!2人の初めての夜も経験値の差を感じる中、キスされて驚いて2回目をねだる石渡に私まで大興奮!そんなねだり方反則だよ。想いが通じ合った後の仲直りエチも、告白の仕方が物凄く石渡らしくて、私が言われたわけではないのに心臓を撃ち抜かれ即死でした。石渡がモテてたのは顔が良いからだけじゃないのでは?正にケツで抱く男ですよ。母性すら感じます。
石渡の人柄に触れ、恋愛だけの問題ではなかった大きな壁を乗り越えることができた新井。猫背が少し伸びるまでの過程は、誰もが共感できるのではないかと思います。自分と向き合うきっかけにもなる素敵な作品。お勧めです。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!