このレビューはネタバレを含みます▼
弟から見たお兄さん(嵩大)の話。母親は看護師で忙しく、寝たきりで日々介護が必要な祖母の面倒も弟の世話も家のことも、ほぼ全て兄がしてくれ、弟は兄に育てられたような子。その恩が強く心にあり、感謝しきれない思いを胸に刻んでいる。巻末には兄の恋人(ナナ)から見た嵩大の話もありますが、弟もナナも嵩大をとても愛してるので、彼への深い理解や愛情のフィルターを通して語られる彼の人生に、芯からの温かさがあるので泣けてきます。
家族に尽くしながらも成績優秀で運動も出来た自慢の兄、そして中学の頃から男の同級生ナナと恋仲になった兄、いつも人に尽くした兄が恋人には甘えている、そんな頼りになり可愛くもある愛しい存在。兄に愛情を埋め込まれたからこそ、兄が母親に悲しいことを言われた時もお兄さんのために出来た事。愛や恩を心に刻まれてそれを相手にも返したいと思う人や、色々な人の姿や気持ちも描かれていて、読み応えのある作品。短いのにグッと心に響く作品でした。