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魚豊

目覚めた主人公、目覚めない主人

ネタバレ
2025年3月24日
このレビューはネタバレを含みます▼ 夫が新興宗教にはまっています。高校生の頃からなのでかれこれ20年近くです。結婚当初は日曜日の2~3時間の外出だったのが、子供ができてから仲間に脅されたのか、今では朝6時から23時(ときに明け方)まで布教活動に明け暮れています。読んでもいない○○新聞を5部も購読登録し、Web集会の日にはスマホで大音量で流しながら帰宅。聞くと【KUDOKU】があるらしいですよ(笑)んなわけあるか。おかげ様で離婚することにしました。

さて、4巻の途中まで夫の自伝を読んでいるようでしたが、ラストは全然違いました。
何でも人のせいにして楽な方ばかり選んでいた主人公は、最後に自分自身が問題なのだと気づきました。でもそれはおそらく、主人公が陰謀論にはまった期間が短期間であり、先生も腰抜けだということが見える形で示されたから。主人公がもっと長い期間陰謀論に染まっていたら、先生がワイフェスでそれなりの発言ができていたら、結果は全然違ったと思います。それじゃあ4巻で全く収まらないし、おそらくハッピーエンドじゃなくなるのでしょうけれども(笑)

目覚めた主人公と目覚めない夫の違いは何なのかと考えてみたら、小学生の頃に褒められたことが主人公は「論理的思考」で、夫は「足が早い」こと。自分の頭で考える力というのは大事なのだとつくづく思いました。

とにかく感情が揺さぶられる漫画です。
自分だって一歩間違えたらこうなるかもしれないという恐怖を感じます。
私も夫を説得しようとしてその宗教について調べすぎた結果、却ってその対抗宗教の考え方に染まってしまいハッとしたことがあります。
極端な思考に陥りそうになったときに我に返れるかどうかは、軌道修正してくれる関係の家族や友人知人を持てるかどうか、あるいは自分を客観的に見る視点=漫画のように自分を俯瞰できる視点を持てるかどうかにかかっていると思います。夫は元の性格も相まって、そういう知人友人がゼロです。この主人公には飯山さんがいて本当に良かった。

今回統一協会の解散命令がありましたが、日本はもう少し国が個人の問題に踏み込んだ方が良いと思います。よく日本人は優しい、海外の人は冷たいと聞きますが、日本人は日本人同士の問題に対して海外なんかよりよっぽどドライです。

この漫画を読んで、カルト宗教で悲しい思いをする人が少しでも減りますように。
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