またね、神様
」のレビュー

またね、神様

ヴヤマ

病みつきになる作品…再読のススメ

ネタバレ
2025年4月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 不穏な気配と背徳感を携えて、一気に引き込まれる1巻。
手の甲から悪い味を覚えたあの時から狂う歯車…いや、あの図書室で目が合った時から既に引き返す術がなかったのかもしれない。
愛に飢えた無垢で無邪気な幸太郎と、甘い毒に魅せられた艷めくエレナ様…彼の弱さに許しを乞う汚い大人たち。
屋上で流れる雲が鮮やかに白い程、痛くて…通報した時の雨模様も心に渦巻くうねりに見えて描写も好き。
儀式で繋げた事後、幸太郎に映る窓枠が複数の十字架に見えて泣いた。
骨になっても愛するくらいの狂気と執着。落ちる時の自己愛と顕示欲。同棲してからもっと加速する破滅の音に、ページをめくる手が止まらない。
彼の足枷になる十字架が母から両に移行しただけに見える不安定さをずっとはらんでいたから、初見は最終話まで気が抜けなかった。ガムテで縛ろうとしたり、泣いて縋り許しを乞う両が伏線回収のように無様で悲しかった。
再会した夜も、復縁した日常も、幸太郎の母に会いにいく時も、密かにメリバ展開あるんじゃないかと怯えながら読んだ。それだけ高校時代の足を取られて身動き取れない息苦しい程の愛情の応酬が濃密だった…私にとっても。

ハピエンを知ってからの再読も実に面白い。
伏線回収というか、苦しさも悲しさも因果応報で巡っている。
「両がオレのこと大事に想ってんの ちゃんと伝わっとるよ」と、許しを乞う両に慈悲深い微睡みを与える幸太郎は神のようで皮肉のような別れの救済。屋上で生徒に寄り添ったのは、あの頃の自分と幸太郎への大切な上書き。
総じてラストが生きる構成で好き。
長文書くほどの熱量と感謝を先生に捧げます。
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