天才魔術師による不器用師匠を愛する方法
」のレビュー

天才魔術師による不器用師匠を愛する方法

ミヤサトイツキ/篁ふみ

奥深いテーマとキャラ達の関係性が興味深い

ネタバレ
2025年4月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ これは…主要キャラ三人のカップリングとか関係性で「思ってたのと違う…」現象が起こる可能性が高そうです。私が覚えてる中では2冊めくらい…?に珍しいパターンと思いますので、地雷がある人は気をつけてほしいです。私はネタバレを気にしない(というか、色々知った上で安心して読みたい)ので、分かった上で読んで楽しめました。

心理描写の掘り下げと、その表現力が秀逸でした。不毛な恋愛を「低音火傷」に例えるところは素晴らしかったです。火傷ほど決定的で明確な傷や怪我にはならないけど、知らないうちにできる傷としてはそれなりに威力がある気がします。

ストーリーは三人の恋模様と、ある陰謀を交えた形で進みます。事件・事故については軽く推理しながら読むのが楽しかったです。ラストでアキとヴェルトルの関係がはっきりしますが、私はそのシーンに作品のテーマが凝縮されている気がしました。

「恋人」と「家族」で、二人は心の在りどころが逆だったんじゃないでしょうか。一般的に人は家族と恋人になりたいとは思わないですよね。それこそ遺伝子学的にそのように組み込まれているとかいないとか…だからまずは他人同士が「恋人」になり、その後「家族」に。逆はありません。

アキはヴェルトルと「恋人」になりたかったのだと思います。でもヴェルトルにとってアキは「家族」だった…この、そもそもの出発点が違った為にどうやっても結ばれる事はなかったのかなと思いました。恋人ではないけど、お互いに大切な存在として許し合い認め合う、思った以上に重いテーマがあったように思います。ユースとアキの関係にも二転三転するような事実が隠されていて、そちらも読み応えがありました。
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