午後の光線
」のレビュー

午後の光線

南寝

美しい、むごい、寂しい、温かい…

ネタバレ
2025年4月26日
このレビューはネタバレを含みます▼ 言葉では分類できない感情が渦巻いて、ただ本を抱きしめ、深くため息をついた。

本当のところは誰にもわからない。
哲郎の口ぶりだと、事故であることに間違いはなさそうだ。
でもその瞬間に淀井が何を考えたかは、誰にもわからない。

淀井が村瀬と共にありたいと思っていたことは確かだ。
それを生きることで成し遂げようとしていたのか、それとも。
これからの人生に微かな希望を見出していたと信じたいけれど、
ただひたすらに祈ることしかできない。

でも残された村瀬は、よろけそうになりながらも光に向かって立っている。
あの状況で引きこもるでなく哲郎にまで辿り着いた行動力。
淀井への思いを繊細な言葉で紡いだ合唱祭の挨拶。
「ガタンガタン キィーー バン!」から「タタンタタン…」に変わった電車の音。
きっと村瀬は生きていく。
二十年を経て、彼は今頃どんな大人になっているのだろう。
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