箱庭の熱帯魚
」のレビュー

箱庭の熱帯魚

Luria

倫理観や固定概念を揺さぶる名作

ネタバレ
2025年5月5日
このレビューはネタバレを含みます▼ 早々にエチシーンがある作品は苦手ですが、いや~これは別格です!想像以上にいろいろ深く考えさせられました。ホワイトくんはピュアで可愛いらしいし、乾さんは誠実で男前で、物語もめちゃ面白いんですが、とにかくテーマが深すぎる!
自分の中の固定概念や倫理観や正義感や善悪の判断など、全て根底から揺さぶられ、覆されたというか…
アクアリウムは悪か?パパは悪か?誰にも手を差しのべられず、あそこでしか、ああいう風にしか生きられない子供や人々を救う手がこの世界に本当にある?そういう世界でやっと生きる意味や価値を見出した人に、その価値観や生き方は間違ってると否定できる?否定したとして、実際に手を差し伸べられる人はどこにどれだけいる?ホワイト達は外の世界を知らなかったけど、出ようと思えば出られた、こういう場合は?外の世界なら本当にもっと幸せに暮らせる?あの箱庭以上に安全と安心を与えられる?…など、考えたらキリがない。
アクアリウムやパパを絶対悪には描かなかった作者様の深い想いや思索が伝わってきました。ホワイト達は誰一人パパを恨んではいないけど、彼らがパパと出会って良かったのか悪かったのか、私にはわからないし、言及もできない。乾さんと出会えた事は本当に良かったけど、それもほんの一握りの人達だと思うと…
実は凄く深く重いテーマというか、当事者は望んで救いがあっても、他方では倫理的に否とされる問題…たくさんありますよね。解決なんて不可能で、目をつぶる納得と飲み込みと暗黙の了解しか永遠にないのかも。
児童〇待や性風俗の裏側や現実について、こういう面からアプローチする手法もあるのかと。ファンタジーだけど現実味があり、説教臭くないのに説得力があるというか。読む人や年代や時期により、解釈が異なるような、素晴らしいというより凄い作品。自分でも読む度に解釈が違うと思う。これからもずっと読んでいくのが楽しみです。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!