半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】
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半分あげる【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

有馬嵐

重しが半分になっただけでも浮き上がれる

ネタバレ
2025年5月16日
このレビューはネタバレを含みます▼ 自分が親になって思うようになったのは、『親は子どものものだけど、子どもは親のものではない』ということ。
産む産まないの選択は親にしか出来なくて、ましてや産む選択をした段階で子どもを守り育てる責任が生じると思っている。
前にファッション誌のコラムに『子どもの性を売る親』という記事があり、とてもショックを受けたのを覚えている。記事が載っていたのが週刊誌のようなセンセーショナルな話題を取り上げる媒体ではなく、『母でも妻でも完璧な自分』を演出するようファッション誌であったこと。子どもの年齢が小さい故に表面化しづらいが、ファッション誌で扱われるほど身近に起きている問題であること。
家庭と学校が世界の全てみたいな子どもに逃げ場はなく、親の所有物として扱われる自分。
心も親に売られたとき、絶望からただ受け入れるしか道が無かったんだろう。客観的に見てどんな酷い親でも、子どもには唯一の居場所なのがつらいよなあ。

正直、黒川と心が家出から連れ戻されたあとの黒川にはガッカリしかなかったけど、黒川も子どもだっただけなんだよね。責任感から然して仲が良かったわけでもない心を何とか助けようと家出したものの、生活する術があるわけでも無く不安でいっぱいな黒川を見て心が家出を切り上げるところは泣けて仕方なかった。
その後、口も聞かず疎遠になった二人が悲しくて仕方なかったけど、再会して心の重しの半分をずっと黒川が抱えていたことが知れて良かった!
心はそのお陰で自分で選択をし、自分の意思で親を捨てるために身体を売って生きてこれたわけだから。というか、心が生き延びていてくれたことがホントに嬉しかった。

画のかわいさからは想像もつかない重いテーマでしたね。
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