鬼の花嫁
」のレビュー

鬼の花嫁

クレハ/白谷ゆう

作者のお気に入りと嫌いな人物の差が激しい

ネタバレ
2025年5月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 作者は心が綺麗な女性や良い花嫁の描写を「庶民派」「ケチ」「あやかしに何を言われても何をされても受け入れるお人形」で描写し、強い女性像を「絶対に譲らない頑固者」「見かねて助けてくれたりアドバイスしてくれる人に拗ねた返事で不貞腐れる」「周囲に嫌われたり評価が下がる言動をしても絶対に改めない」といった描写で表現します。
この作品で作者が推す主人公の柚子のように「心が綺麗」「花嫁になるにふさわしい女性」は上記のまともな人間が読むと不快に感じる描写が多いです。
逆に客観的に読むとまともに感じる女性は「男女(男勝り)」「性格が悪い」「男にめちゃめちゃモテるぶりっ子」「(嫌味っぽい)完璧」というどうしてそんな酷い言葉を使うの?というほど、容姿が良い女性や優秀な女性のことをとにかくこき下ろします。
作者の価値観(恐らく自分が前者に近く、後者のようなタイプが身内にいたのか小説の中で徹底して攻撃する)という、同性として読んでいてぞっとする描写が多いです。
特に「梓」という作中で最も美人に描かれている人間女性(花嫁)に対する登場人物の集中攻撃、客観的な事実から読み取れる悲惨な境遇(親に売られた、婚約相手のあやかしに抵抗しても拒否しても性的なことを強要される、嫌がっているのに同居と進学先を相手のあやかしに勝手に変えられる、将来絶対子供を産むように命令される)という女性人権団体が聞いたらぎょっとしそうな設定なのに、平凡で(言ってしまうと容姿がぱっとしない)柚子と透子は美人と絶賛される梓や、柚子の妹の花梨の事を「性格悪い」「相手のあやかしが可哀想」と徹底的に貶します。
ですが、美人の花嫁や美人のあやかしの桜子のように「ちゃんと頑張っている桜子、正しい知識を教えてもらえず放置されて花嫁の地位を誤解した花梨、人間の扱いをされなくて心が病んで凶行に走った梓」の三人をまるで主人公を苦しめる存在のように描くのはどうなんでしょうか。
この三人にむしろ幸せになってほしいです。
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