このレビューはネタバレを含みます▼
婚約者の浮気で、心に傷を負い、けれど周りの温かな人達のお陰でのびのびと生きる「ダセェと言われた令嬢」クララベルの華麗なる成長譚。そんなクララベルの傍らで、ツンデレだが、優秀で素晴らしい恋人・ロイドも自身のコンプレックスを克服して行く。2人を見守る王子と王子妃。学生時代を共に過ごした彼等が、大人になり、その子供達の事まで描かれている。4巻完結編とーっても尊い!驚かされたのは、クララベルを裏切り、婚約破棄されたダメンズ・アランが、ザマァされて追放エンドかと思いきや。親の言い付けで、片田舎の領地を任され、子連れの未亡人と結婚しているということ。ここまで悪役に丁寧に寄り添った物語があっただろうか。戸惑いながらも急に出来た家族と向き合い、連れ子と打ち解けて行くアラン。彼は本物の悔恨を知り、本当の真心でついにクララベルに謝罪するまでに至る。もちろん幸せになったクララベルも静かに謝罪を受け入れる。
そもそもクララベルが「ダセェ」とまで言われたのは、親の関心の低さにもあった。長男は家を継ぐ子だから大事。末の娘であるクララベルはいつも後回し。お下がりばかりでお金も手もかけてもらえない。そんな親達にもある意味見切りを付けていたけども、そんな彼等とも向き合って和解するのもこの物語に深みを与えているところ。家族だから、身近な人だから。蔑ろにしてしまう事もあるかもしれない。けれども身近な人だから、向き合って気持ちを伝え合い、大切にしなければ。大事な事を見失ってしまう。冒頭は垢抜けない娘が恋をして美しく変身する、ありがちなシンデレラ・ストーリーかと思っていたけれども。意外にもシビアな、心の成長と家族の在り方の物語なのでした。4巻で、アランを誘惑した傲慢な女・マリアンヌの息子が、何故か両親を反面教師として素直に育ってるのも良い。悪役にもとことん救済を用意されているのも周到だ。クララベル達が築いた子供達の未来は明るい。完結、おめでとうございます。