このレビューはネタバレを含みます▼
宮崎のおおらかな風土の中で漫画家を夢みていた、かなりイージー思考な女の子と、画家なのにビシバシ竹刀を振り回して暴言を吐く、かなりスパルタな絵画教室の先生との師弟物語。特殊な世界の話のようでいてこんなに心に刺さるのは多分、「孝行をしたい時には親はなし」の先生バージョンだから。
映画はわかりやすい感動作になっていましたが、原作漫画の方がより、作者自らが「ひどい話」という後悔や懺悔、若い頃の葛藤や自分のことで精いっぱい感、先生の「描くこと」への純粋な思いが細やかに伝わってきます。(恐怖の絵画教室シーンなども、漫画だとギャグ感満載!)
反発できるのは、先生や親がいつもそこにある「帰る場所」だから。でも若い頃はそのおせっかいやカッコ悪さが恥ずかしくて腹立たしかったり、期待に応えられていない自分が後ろめたかったり。
帰る場所がずっとあるわけじゃないと気づいた時には、たいていの人は間に合っていなくて、多分これはみんなが繰り返していくことなんだろう。
今なら先生の気遣いのビール一気飲みできるし、今なら先生を海外に連れていってあげられる。間に合わなかった色々を抱えて、「描くしかない」。
各章の先生への呼び掛けを、そしてラストの呼び掛けを、しみじみ噛み締めたくなる作品です。