光が死んだ夏
」のレビュー

光が死んだ夏

モクモクれん

切ない

ネタバレ
2025年5月28日
このレビューはネタバレを含みます▼ 光くんが何者なのかは光くん自身もわかっていないような感じ。名前もない不確かな何か、で、それを感じ取れる人間が神様、化け物?みたいな感じで勝手に自分の中の何かに当てはめて認識しているみたい。不思議な話で、読み物としてはいかにもオカルトな雰囲気が世紀末的な懐かしさもあるんだけれど。何者でもいいし何者でなくてもいいから大事な人と離れたくないけどそれは先々を思えば不安なことでもあり……っていう、愛別離苦に悩まされる感じが、人間ドラマとして興味深いなと思います。残された人間には墓標が必要っていうことにも繋がる気がします。墓標があれば亡くなった人にいつでも会いに行けるという感覚で僅かながらでも慰めを持てる可能性がある気がするので……。でも現実は、生きていた頃のその人と、墓標に眠っているその人とは別人なわけで。作品上で「光くん」が表現しているのはそのことなのかな、と勝手に思っています。「死んでもみんなの心の中に生きている」とか「忘れられた時にもう一度死んでしまうから忘れない」とか、愛別離苦を前向きに捉えるような台詞は聞いたことがあったけれど。「光」は生きているけれど死んでいる、という厳しい事実、残された側にとってのつらさをこういう形で表現しているのは斬新だなと思いました。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!