藤子・F・不二雄大全集 エスパー魔美
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藤子・F・不二雄大全集 エスパー魔美

藤子・F・不二雄

高畑さん、うちの婿に来てくれ

2025年5月29日
漫画の神様と言えば手塚治虫ではありますが、私の漫画の氏神様は藤子・F・不二雄です。
発想力、観察眼、漫画表現の巧みさ、どれをとっても超一流。そして何より、倫理観であるとか、子供のために描こうという意志とか…子供騙しではない、本当の意味での「児童向け」を描けた、数少ない作家であると思っています。1巻収録の『くたばれ評論家』に見られる「創作」への姿勢は、非常にすっきりと地面を両足でとらえて立っているストイックなもので、創作に携わる人間(こうしてレビューを書く程度の自分も含めて)は全てこの話を読むべし、くらいに思っています。
そんな私の氏神様の作品で、一番のお気に入りがこの『エスパー魔美』。
超能力という夢のある設定ながら、日常からはみ出しすぎずに経験を積んでいくようすが素晴らしい。少年少女が直面する現実にあるさまざまな問題を、悩んだり若さある率直さだったりで、解決できたり解決できなかったりの匙加減が素晴らしい。説教臭くないのに道徳的ですらあります。
明るく元気でやさしくて少しうっかりで料理下手の魔美ちゃんがすごく可愛いのは当然として、そんな魔美ちゃんを支えてくれる高畑さん、彼がものすごくかっこいいんですよね。
基本的には頭脳面でのバディとしての存在ですが、運動ができないしケンカも弱いという弱点をもってなお、必要とあらば体を張る……そして魔美に「信頼」というかけがえのないものを与え、あの料理も食べてくれる……自分の娘にはこういう相手が良いな!って藤本氏自身も思ってらしたんじゃないかと妄想しちゃうレベルに、理想の婿殿です。
あと、父親の絵のヌードモデルという設定は、当時お色気を求められる風潮のもとで足された設定のようで、正直無くてもいい設定……ではあるものの、それを単純なお色気路線にせずにうまく話の面白さに組み込んでいるあたりが、さすがうちの氏神様。ドヤァ

紙本が大判でこだわりの作りにカラー再現、ということで、お値段お高めです。
こちらを購入して損はありませんが、物語の内容さえわかれば、というタイプは、コミックスの新装版がお安いよ!

ところで、子供の頃アニメで見ていたこの作品、大人になって改めてこの原作を読んで「中学生」だったことにびっくりしました。高校生だと信じていました……仲間は素直に心で挙手してください。
昭和中頃より前世代の中学生って実際大人っぽいですよね〜。
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