ないしょのマリーちゃん 新装版【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】
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ないしょのマリーちゃん 新装版【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

kanipan

内緒も秘密も自分の一部

ネタバレ
2025年5月31日
このレビューはネタバレを含みます▼ 読み終えた後の多幸感!爆萌ハチャメチャときめき最高作品でした。拗れて内心が面倒なことになっている受けと、体当たりでぶつかってそれを解していく攻め。
弥彦さんの抱く「選ばれない」不安と焦燥感は、経験を積んできた人なら共感しやすい気持ちだと思います。誰しも選ばれるばかりの人生は歩めない。ありのままの自分は選ばれない代わりに、作り上げた作品は他人に評価されて求められる。身近な比較対象であるマリーと比べて、選ばれない自分のことは、誰がすくい上げてくれるのか。そうして消えそうになる自分を守るために、マリーを表にして、自身を裏に隠して、何を言っても言われても本当の弥彦さんには届かない、というような状況だったのだと思います。作中でも言われていたように、弥彦さんは難しく考えすぎだけど、それは弥彦さんが真面目だからなんですよね。踊ることが好きで、マリーのことも好きだから、マリーが愛されるようイメージ通り振舞っていた。でも弥彦さんはマリーも含めての弥彦さんで、全て弥彦さんが積み上げてきた努力の結晶です。秀正さんの気持ちが弥彦さんにやっと届いて受け入れられたシーンで、自分も一緒に涙が込み上げました。その場面に辿り着くのも、ちゃんと二人が喧嘩して向き合ったからで、全部無駄じゃなかったのが、報われている感じがして良かったです。
こちらの作品、思い出し萌えしてしまうシーンが何個もあります。詳細は省くのですが、本作品最後辺りの、素の自分をさらけ出せるようになって気の緩んだ弥彦さんと、気持ちが通じあって安心して余裕の出てきた秀正さんとのやり取りが、全て可愛い!もちろんそれまでの、少し頑張っている弥彦さんと、振り回されたりしている秀正さんとのやり取りも可愛くて好きなのですが、それを経ての両思いのラブい二人が、今までのギャップも相まって本当に愛い。きゅんきゅんします。
自語りですが、恋愛ものは、感情の解像度の細やかさが、作品自体で感じた面白さに直結するタイプです。なので、漫画だったら絵や話運び等は荒削りでもいいから、情感の描写ややり取りは、できる限り見たいなと思います。kanipan先生の筆致は、人間の感情の細部を拾い上げて描いてくださっている気がして、大好きです。それだけセンサーが敏感なのもすごいし、それを表現できるほどの聡明さに、毎度感動しています。本当に素晴らしい、尊敬している作家様です。
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