COCOON
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COCOON

今日マチ子

マユがいたから読めた

ネタバレ
2025年6月2日
このレビューはネタバレを含みます▼ アニメやコロミを見て心して読んだのですが、案外サクサク淡々と読めてしまいました。というのも、辛い場面は決まって空想に逃げている様が丁寧に表現されていたからだと思います。サンの心がどんどん無くなっていくので、感傷的にならなかったのかなと。うるっとしたのはマユの最後のシーンではなく、お母さんとの再開のシーンでした。そこで漸く悪夢から覚めて心を取り戻し始めた感じがしたんですよね。読み終えてからじわじわと悲しくなって何日も尾を引く読後感でした。

マユを思うとやるせないラストな気もしますが、サンは作中ずっと空想に逃げていたのが現実を見ようと決意している段階でラストになっているので、もしかするとまだマユの死を受け入れられていないかもしれないなと。大好きだったマユがいたからこそ嫌悪していた男の人とも話せるようになれたと思うので、サンにとっては優しいラストだったのかなとも思います。作中で1番の可愛らしい笑顔がマユとの最後の会話だったのは印象的で切なかったです。

最後繭が壊れて生きていくことにしたとありますが、繭を壊してくれたのは死ぬのは負けだと言ってくれたマユで、サンの力ではその答えに辿り着けなかったでしょう。マユもまた、繭が壊れて本当の自分に戻れてサンに想いを告げられたのかなと思います。ずっとおまじないをかけていたのはマユだったけど、最後はサンがかけてくれて、マユにとっても戦地で死ぬより好きな人を守り生かせて、最後の時までそばにいられて良かったと思ってくれているといいなぁ。

マユのヒーロー具合が目立ちますが、サンもマユが惹かれるのが分かるくらいには優しくて魅力的な女の子だったんだなと感じ取れる場面が何度もありました。生き地獄の現実で最後、ずっと一緒にいたいという言葉が出たくらいには、マユにとってサンは生きる希望になっていたんだと思います。

漫画ではサンの心が壊れていくのをマユが助けていますが、アニメ版では後半になるにつれて逆になっていて、手を引いていたのも生きるように促していたのもサンで、なんだか逆に残酷さが増した気もしちゃいましたね。最後の言葉も、漫画の方が優しかった気もします。

実際にあった事なんだと読んでいる間、常に脳裏にありました。食欲が無くなるレベルでしたが、可愛い絵柄の淡いタッチだから読めましたし、サンと一緒に読み手の自分もマユに救われたなと思います。
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