恋をするなら二度目が上等
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恋をするなら二度目が上等

木下けい子

大人のイイ男の匂い

ネタバレ
2025年6月6日
このレビューはネタバレを含みます▼ 全編通して、大人の男のいい匂いが漂う作品でした。
煙草でも、酒でも香水でもない、いい匂い。宮田君なら『加齢臭』と言いそうですが、そんなんじゃなくて、先輩なら「キミ、そういうとこ」と突っ込んでくれそうです。

純粋だった学生の頃、駆け落ちの約束をした先輩と、仕事で再会するところから始まります。あの頃かわいかった宮田君はすっかり現実主義で合理主義に。先輩はいまだ美しくロマンティックなまま。

ふたりの駆け落ちは、実は先輩たちの間で、宮田君が来るか、来ないか賭けられており、それを知った宮田君は待ち合わせ場所に行かなかったのでした。休み明け、宮田君は先輩に知らせずに転校してしまい、ふたりはそれっきりに。
この駆け落ちの話が、全編通してふっと湧いて出て、お互いその時の心情や真実に気付くひとつのポイントになっています。
「ずっと」、「一生」⋯⋯幼かった宮田君はかわいらしくて、ふてぶてしい合理主義者となった今でも、先輩の目からはかわいらしく見える。そんな先輩の表情にキュンとします。

宮田君から見た先輩はあの頃より(年齢の差も)近くなっていて、先輩から見た宮田君はすっかり大人の男になっていて、先輩は宮田君の新しい顔を見る度に惹かれていったんじゃないかなぁ、と。そういう顔をしてる。うんうん。

木下先生の作品は『京極家』シリーズに続き、2作目です。ストーリーは非現実的なのに、現実社会を感じさせられるところ、それから先生の描く線が好きです。
今作も、繊細な線で美しい大人の男性が描かれていて大満足でした。
はーっと、いい溜め息が出ちゃうくらい。尊い。
大人の恋を読みたい方にオススメの作品です。

ちなみに私は素敵な先輩も勿論好きですが、漢気のある、あの頃は純情だった宮田君が好きです。ガチャガチャしているように見えて、少しずつ恋に落ちていく過程もよかったです。

とりあえず、難しく考えずに無料立ち読みからどうぞ。
わたしは一気買いして宝物がひとつ増えた気分です。
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