恋を知ったオタク賢者の『捻くれ騎士様』攻略レシピ【イラスト付き】【単行本書き下ろしSS付き】
珈琲きの子/羽純ハナ
このレビューはネタバレを含みます▼
読了後の満足感がここ百冊くらい読んだ中でトップクラス。ボリュームもあるし、ストーリーもキャラも魅力が詰まっていて本当に面白かったです。
ただ、やっぱり若干尻込みしてしまう価格設定だなとは思うので、手放しに買いですとは言いづらい…!
様子見したい方は同作者さんの『美貌の騎士様~』など読んでみるのもアリかなと。
以下は長くなりますが内容の感想です。
とにかく構成が素晴らしく上手いです。
軽快なテンポでキャッチーなのにしっかりと厚みのあるキャラクターと世界観で、一切のブレや破綻もなく、ミクロの出来事とマクロの起承転結のストーリー運び、設定の活かし方、伏線の張り方から回収まで本当にお見事でした。
特に描写する情報の取捨選択が秀逸で、
前提として"子供っぽく俗世を知らない明るい主人公(受け)"の一人称視点で進んでいくので、受けにとって詳しくない・必要ない情報は地の文では描かれません。
受けの語り+周囲の人々の言動にあるヒントを合わせることで構造が把握出来ていきます。
この情報の掴ませ方が本当に上手で、異世界ファンタジーあるあるな設定の説明羅列のストレスなく世界観を知れると同時に、叙述トリックのような形で"受けに隠された秘密"が立体的に彫り込まれていき、どんどん話に惹き込まれました。
また、上記ストーリー面だけでなく、主人公CPの恋路の描写も丁寧で非常に良かったです。
クズな生き方をしてきた攻めがポジティブでまっすぐな受けに絆され、人生に真剣に向き合うようになっていくという流れですが、全然へこたれずアタックし続ける受けは軽快で明るく可愛く、時折挟まれる攻め視点は少しほろ苦くて泥臭い。
爛漫な受けに対し、攻めは同作者さんの中で過去一人間くさいキャラクター性で魅力が詰まっていました。
※ちなみに攻めはあらすじ通りちゃんとハイスペックなクズで、理由はあれど『実は悪評だけで…』とかではなくやることやってます。
長々記載しましたが、本当に大満足な一作でした。
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