ギニーピッグは檻の外の夢を見ない【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】
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ギニーピッグは檻の外の夢を見ない【ペーパー付】【電子限定ペーパー付】

理原

英語ではモルモットは通じないらしい

ネタバレ
2025年6月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ ほんと怖いな。理原さんの作品。
理原さんの他の作品を数作読み込みすっかり虜になったのですが、相変わらずの構成の上手さといい読み応えといい素晴らしいです。
また、絵が素晴らしく綺麗。この美しい絵がシリアスなストーリー展開によってさらに活きている感じがして大好きです。

少子化という身近な問題点が鍵なので、非人道的な研究ではあれど現代にも実際にあり得そうなのが怖い。研究に翻弄される被験者たちと、衆人環視の中被験者の情事を尻目に談笑できるというどうみても人の心が麻痺して欠落しているようにしか見えない研究員たちが怖い。それなのに研究員(隼仁)のことはちゃんと人間として見ていて心配もするところがまた人の心を持ってるみたいで怖い。ギニーピッグ=モルモットとしか思わない上でその最期に同情するところも。
オメガバースに通ずるものがある世界観だが、死という絶対的な恐怖が存在する以上、ひと息つかないと読み進められないほど作品の全体を重苦しさが支配している。
それでも先が気になってページをめくる手が止まらない。
隼仁にはぐぐみ棟のことを教えたあの目に光のない黒髪の研究員はどうなったのだろう。
最後の最後までゾワゾワが止まらなかった。

ひとつ気になったのは、被験者たちはみなこれからも妊娠に怯えながら行為をしないといけないのだろうか?
殺精子剤にも限りがあるだろうし避妊も100%じゃないからなあ。
そう考えるとやっと誰にも邪魔されない場所に落ち着いたふたりのせっかくの営みもなんだかハラハラしながら見守ってしまった。ホルモン剤投与されなくなったら自然と元の身体に戻るのかな?

それと最後までファインプレーだった悠心と憲雄の今後が気になります。憲雄でリオて!可愛すぎるやろ。
上巻のおまけで少し過去が明かされていましたが、もっと掘り下げないともったいないキャラクターだと思いました。
またひとつ、理原さんの作品が読めて満足です。
ありがとうございました!
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