鳴かぬ蛍は青に焦がれる
」のレビュー

鳴かぬ蛍は青に焦がれる

仁嶋中道

君が君のままでいられるように

ネタバレ
2025年6月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の学生寮で同室になった、宇佐美晃と青凪灯矢。ある日、宇佐美は自分がゲイであることをカミングアウトする。嫌がられることを覚悟していたが、青凪はごく自然にそれを受け止める。それどころか、自身の腕にある異所性蒙古斑(青あざ)を指し、「たまにビクッとされるからお互い様」と笑ってみせる。そんな青凪に、宇佐美は恋をしてしまう。しかし、青凪には既に彼女がいた。青凪のあざを隠そうとする彼女への怒り、怒らない青凪への苛立ち。そんな感情の渦の中で、宇佐美は思わず告白し、キスをしてしまう。自然体のまま一緒にいられる楽な関係、親友同士、二人が辿り着く先は――。

二人とも誠実で、真っ直ぐで、良い。実に良い。特に、傷をなかったことにせず、怒れない青凪の為に声を上げることができる宇佐美の人間性には心を打たれました。

要らぬ気遣いや望まない善意から、本人は最初は気にしていなかったことでも、気にした方がいいのかも…と次第に萎縮していってしまう流れ、本当につらいですよね。優しさの皮をかぶっている分、余計にたちが悪く、時には悪意以上に人を傷つけることもあると思います。

そんな無意識の差別や、後ろめたさに巻き込まれて、青凪と彼女は別れることになりますが、彼女を悪者にしないところが良かったです。指摘されて、何が悪かったかを考え、謝って成長する…それができる人間は本当に貴重です。そして、私自身もそういう風にありたいと思わせてくれました。もちろん、指摘される前に自ら気づけたら、それが一番なのですが。

青凪の告白も、誠実で優しかったです。男である宇佐美と同じ気持ちでいたい。でも今まで異性愛しか知らなかったから、同じような「好き」になるかはわからない。だからこそ「変わっていく自分を見て欲しい」と伝える。相手が不安にならないよう、男同士であることを踏まえて言葉を選ぶ姿勢があまりにも真摯で。そんな告白、泣くに決まってる。

…正直、失恋から即恋に落ちる宇佐美も、彼女と別れて間もないのに同性との恋愛を考えられる青凪も、切り替えが早すぎると思わなくもないのですが(笑)
それでも、恋人になってから、少しずつ、探り探り、同意を得ながら進んでいく姿に、誠実さと未来への希望を感じました。ありのままを大切にし合える関係が、ずっと続きますように。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!