このレビューはネタバレを含みます▼
作者様買いです!!単話1話目の時から単行本化を待っており、満を持して発売初日に購入いたしました。本ッッ当に買ってよかった…。
赤色マッシュ先生の作品は「偽りΩ~」でドハマりし、お互いしか理解し得ない傷や闇からの共依存、そして愛による救済を描かせたらその実力はBL業界トップクラスではないかと勝手に感じております。心理描写が非常に細かくもストーリーに負けない表情豊かな画力、睦み合いという言葉が相応しい情念溢れる甘美な濡れ場、背景や小物にも手を抜かない細やかさ、肌の質感や人体の柔らかさが伝わってくるような生々しさ…。その全てが素晴らしく、一冊の漫画であるというには論じるに足りない満足感があります。本作も刺青のデザインがセンスの塊すぎて美しさに圧倒されてしまいました。
さて、肝心の本作感想ですが、タイトルの通り「唯一無二になりたかった二人の純愛」物語だなと思いました。ナオキさんがカウンセリングでぽろっと言っていた「自分の人生なのにずっと脇役」「どうしていいかわからない」という自己分析が彼の今までの人生の象徴であり、しかし「変わりたい」とようやっと一歩を踏み出した矢先に出会った愛助くん。最後の方で語られていますが、そんなナオキさんの素肌を見て、自分をずっと苦しめていた刺青を初めて美しいと感じたのはやはりお互いが似たような傷を隠し、愛に飢え、誰かの唯一無二になりたいという羨望を抱えていたシンパシーなのでしょうか。お互いが持っていた波長の揺らぎがシンクロし、ひとつになる未来を愛助くんは一目で感じ取っていたのかもしれませんね。
ひび割れた卵を守り威嚇する蛇は、生まれ変わりを拒否し、壊れた過去に必死に縋りついている象徴なのかなと思いました。ナオキさんと出会い彼の持つ真摯さが愛助くんの傷を癒し、その体温が過去に向き合う勇気を与え、完成させることができた師匠の刺青。蛇が巻き付く角折る鬼。咥えたニードルと「美」の文字は師匠の象徴でしょうから「頑なだった過去の自分からの生まれ変わりと再生」そんなメッセージと、愛助くんなりのお別れとリスペクトを感じました。お互いを愛で救済し合えた愛助くんとナオキさん、純愛が実ってよかったです。
余談ですが、小噺にあった師匠の独り言から、離別は彼なりの思いやりだったのでは…など色々思うところがあり、師匠のスピンオフを…是非…!!と願わずにはいられないです。