ヒトの世界の歩きかた
」のレビュー

ヒトの世界の歩きかた

イーライ・イーストン/冬斗亜紀/麻々原絵里依

前作以上に深みと奥行きのあるストーリー

ネタバレ
2025年6月23日
このレビューはネタバレを含みます▼ シリーズ二作め。前作で少し出てきたローマンの話でした。前作は、血統的に純潔のクイック(ランス)が主役だったので、設定と会話ややり取りが斬新かつ新鮮で「とにかく面白い」という感想でした。

それが、今回主役のローマンは自分の代からの、ある意味突然変異なので…重大事件の前後で降りかかる何もかもが不憫で仕方なく、ジェイムズとの別れのシーンではローマンの気持ちに感情移入し過ぎて、悲しさに泣けてしまいました。

DEAのマットが町に来てから暫くの町の秘密絡みのアレコレは、前作同様に面白かったです。インフルエンザがどうのとか、映画館での出来事とか、本人達が大真面目なだけに行動と言動のあまりの落差に吹き出してしまうくらい笑えました。

あと原文を読んでいるわけではないので(物理的にも能力的にも)実際のところは分かりませんけど、とても文章力が高いと思いました。それでいて難解ではなく読みやすいです。

例えば「マッドクリークの秘密」について聞かれたローマンが「答えようにも何か言えば《真実に近すぎるか、支離滅裂かだ》」と考えたのは、これ以上ない上手い表現で、的のど真ん中を突いてると思いました。

他にも「《すべての不可能を排除して残ったものが、たとえどれほどありえなくとも、真実なのだ》」という表現、これは、超有名などこかの探偵が言っていたような気もしますが…この時・このシーンの心情にシンデレラフィットする名言だったと思います。

高評価も全面的に納得の内容でした。この後の三作も楽しみです。
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