全ての子供たち、健やかであれ





2025年7月6日
正しさだけでは救えない命もある――そうわかってはいても、めでたしめでたしとは到底思えない、後味の苦い作品でした。
当人が「好きに生きとるよ」と言うなら、それは確かに救いなのかもしれない。でも、読者という第三者の視点からは、あまりにも多くのものが置き去りにされていて、素直に喜べない、そんな読後感でした。
主人公の黒川慎は、大家族の長男。ある日、血のついたシャツ一枚姿のクラスメイト・白木心に遭遇。白木が飛び出してきた家からは、男の怒鳴り声が聞こえている。咄嗟に白木の手を取り、公衆トイレに逃げ込む黒川。そこで、金持ちであるはずの白木から、生活のために、母が連れてきた男に体を売り、その客から暴力を振るわれたと告げられる。それを聞いた黒川は、白木を連れて逃げることを覚悟。こうして、二人の逃避行が始まる――。
読んでいて、何度も「大人は?学校は?児相は?」と問いかけずにはいられませんでした。誰にも助けを求められない現実が胸に突き刺さります。ただ、黒川と白木の関係性が、クラスメイト(しかも非好感)なので、いくら困ってる人を放っておけない兄貴肌だとしても、弟たちに嘘をつき、家族に一生会えない覚悟で、補導されるリスクを取ってまで選ぶ相手なのか、少し説得力に欠けると思いました。
あの三日間は、きっと白木にとって暗闇を照らす灯火になったはず。でも、それだけで十分だったのかという思いは拭えません。黒川も、正義感や同情の名のもとに、彼の人生を背負いすぎていたように見えて、胸が痛みました。逃避行後、直接的な暴力がグルーミングに変わっただけで、虐.待は続いていたのもつらい。無視すんなよ…。
キスやセッ久描写については唐突感があるように思えました。白木にとっては、トラウマの再演にも見えたし、黒川にはメサイアコンプレックスのような側面もあるような気も…。純粋な恋愛としては、少し判断が難しいと感じました。(もちろん本人たちが幸せならオッケーです!ではありますが)
それでも、あれほどの地獄を生き抜き、笑顔で「おれたち大きくなったねえ」と言える白木の姿には、やはり救いを感じました。どうか、搾取され、傷つけられ、挙句その責任までも押し付けられるような子供が、一人でも少なくなりますように。そして、子供たちを傷つけた大人が、正当に罰せられる社会でありますように。
当人が「好きに生きとるよ」と言うなら、それは確かに救いなのかもしれない。でも、読者という第三者の視点からは、あまりにも多くのものが置き去りにされていて、素直に喜べない、そんな読後感でした。
主人公の黒川慎は、大家族の長男。ある日、血のついたシャツ一枚姿のクラスメイト・白木心に遭遇。白木が飛び出してきた家からは、男の怒鳴り声が聞こえている。咄嗟に白木の手を取り、公衆トイレに逃げ込む黒川。そこで、金持ちであるはずの白木から、生活のために、母が連れてきた男に体を売り、その客から暴力を振るわれたと告げられる。それを聞いた黒川は、白木を連れて逃げることを覚悟。こうして、二人の逃避行が始まる――。
読んでいて、何度も「大人は?学校は?児相は?」と問いかけずにはいられませんでした。誰にも助けを求められない現実が胸に突き刺さります。ただ、黒川と白木の関係性が、クラスメイト(しかも非好感)なので、いくら困ってる人を放っておけない兄貴肌だとしても、弟たちに嘘をつき、家族に一生会えない覚悟で、補導されるリスクを取ってまで選ぶ相手なのか、少し説得力に欠けると思いました。
あの三日間は、きっと白木にとって暗闇を照らす灯火になったはず。でも、それだけで十分だったのかという思いは拭えません。黒川も、正義感や同情の名のもとに、彼の人生を背負いすぎていたように見えて、胸が痛みました。逃避行後、直接的な暴力がグルーミングに変わっただけで、虐.待は続いていたのもつらい。無視すんなよ…。
キスやセッ久描写については唐突感があるように思えました。白木にとっては、トラウマの再演にも見えたし、黒川にはメサイアコンプレックスのような側面もあるような気も…。純粋な恋愛としては、少し判断が難しいと感じました。(もちろん本人たちが幸せならオッケーです!ではありますが)
それでも、あれほどの地獄を生き抜き、笑顔で「おれたち大きくなったねえ」と言える白木の姿には、やはり救いを感じました。どうか、搾取され、傷つけられ、挙句その責任までも押し付けられるような子供が、一人でも少なくなりますように。そして、子供たちを傷つけた大人が、正当に罰せられる社会でありますように。

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ゆきんこ さん
(女性/50代) 総レビュー数:281件