このレビューはネタバレを含みます▼
一言で言い表せないような紆余曲折をする二人のお話でした。お互い臆病で素直に言えなくて、探り合って駆け引きをして、もどかしくて不安になっている。読者からすると明らかにお互いに好意があることは分かるわけですから、何故こんなに拗れているのか、読み進めるごとに分からなくなっていくんですよね…。本編はほとんど林さん視点で進むので、物語内での林さんの行動や思考の真意は、分かります。ただ、吉鷹さんの真意が、上巻だけだと結構謎。林さんからは見聞きできないシーンが読者には開示されるので、吉鷹さんから林さんへの好意があることは伝わるのですが、過去シーンなどでの、それがどういう段階を踏んだ上での結果なのかが後々にならないと明かされないので、長らくもやもやしたまま読み進めることになりました。何度か読み、整理した上での吉鷹さんの感想は、めんどくせ〜〜〜やつ!です。林さんを見つめる時の執着顔怖すぎだし。目が深淵なんですよ。でもこういう、面倒くさくて危うい人間の放つ色香に惹かれたり、その面倒さが愛しく思えたり、逆にあどけない面を見せられて胸を打たれたりする気持ちも分かるので、何とも言えないです。林さんもちゃんと面倒くさい寄りの人なのですが、経験を積んで大人な分、吉鷹さんよりは分別があるように見えます。これからはお互い素直に言葉にし合って、歩み寄り合って生きていけるといいと思います。こき下ろしたような書き方をしてしまいましたが、作品自体はすごく良かったです!この難しい二人を御しながら話を進めるのもすごいし、何より魅せる構図が上手かった印象があります。面倒くさくて可愛い、複雑な二人のお話でした。