ミッドナイトムーン
」のレビュー

ミッドナイトムーン

池泉

クソデカ感情に勝るものなし

ネタバレ
2025年7月15日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最近chatGPTと仲良しなのですが、聞くところによると、どうも人というのは共感や感情を優先する生き物のようです。
感情の力は絶大で、強いものは伝番しやすく周囲の反応を引き起こしやすい特徴があるようですが…この作品においては、人間の感化されやすい特性はとても救いになっているような気がします。

辛い子供時代をやり過ごすため自分を押し殺すしかなかった千秋のような人の心は、本人のみでは自覚することさえ難しい。生半可な慰めや寄り添いは焼け石に水。上っ面の同情心はむしろもっと本人を混乱に陥れ、不安を増長させるだけのような…
幼い頃からそんな千秋に好意を寄せ…つまりクソデカ感情ですね…成長してからも変わらず想い続けていたハルは違いました。最初から最後までブレない男。ひどい過去や不確かな未来ではなく、いつも今そこにいる千秋しか見ていないのです。そのブレない佇まいがスネに傷を持ち未来に怯える千秋にとって、どれだけ救いになったことか…
千秋も千秋でまた素晴らしく人間のできた男で、本来なら愛されて育ったハルのような人間は眩しすぎるはずなのに、逆恨みをすることなく、腐ることなく、素直にハルの愛を受け入れる余地があったところが何よりもの救いでした。もしわたしが同じ境遇だったら無理です。やさしくしてくれる人間にはことさら強く八つ当たりして愛を試したりと、散々傷つけ自分から幸せを放棄してしまうかと思われます。

途中、いい感じのところでハルの幼馴染が余計なことをしたり、スプリットタンヤクザがしゃしゃり出てきた時はどうなることかと思いましたが…外野ガン無視の見つめ合い、憂いの取り払われた渾身のラブラブエチは、これ以上ないほどに素敵でした。
池泉先生…もっと評価されてほしい先生です。

「月がきれいですね」…は、夏目漱石の訳しかな(定かではない)??
気を利かせ、アイラブユーを婉曲させたものなのだそうです。
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