泥濘の食卓
」のレビュー

泥濘の食卓

伊奈子

いい作品に出会えた!

ネタバレ
2025年7月17日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初はよくあるどろどろ系かと思いました。主人公である深愛もある意味普通なら考えられないような行動をしていくし、最近よく見かける、主人公がそもそもおかしい感じの物語なのか?これからどうなってしまうんだ、、?!というハラハラ感とともに読み進めていきました。物語の展開の仕方の上手さなのか、とても読みやすく、いつのまにか1巻また1巻と購入していくうちになんと最終巻にまで辿り着きました。読み終えた今は、時たまある最終話読後の虚しさもなく、むしろ、素晴らしい作品に出会えた、と満たされています。全体を通して、本当に一人一人の境遇、心理描写などの細かさ、リアルさが素晴らしいと感じます。一人一人の人間性が確立されていて、引っかかりどころもなくするすると読めました。特に、ちふゆは、決して悪くはない、むしろ理想的な家庭環境、両親のもとで育ちながら、あれほどまでに性格が歪んでしまったこと、それに対するお父さんの絶望など、そうだよね、現実ってこうだよな、と胸に迫り感じられました。登場人物一人一人や、それぞれが置かれている環境などが、決して深愛がおかしいとか、ありえないとかいうような話ではなく、むしろ探してみればいくらでもありそうな話で、世の中の不条理や、そんな中でももがき生きている人々の存在を感じられました。そして、自分や、自分の身近な人、顔見知りなんかもまたこのような物語と決して遠くない存在なのではないか、むしろいつこうなるかも分からないし、今そうなっているかもしれない、とも思えました。深愛のラストシーンには、胸に感じるものがありました。もちろん途中、かなり不穏な展開ではあるけれど、最後まで誰も死ななかったのが本当に嬉しかったです。読後の満足感もそのことによったのかもしれません。読み進める中で、様々に、考えること、感じることがあると思いますが、最後は満たされる、考えが深まる、そんな作品だと思います。ありがとうございました!
いいねしたユーザ3人
レビューをシェアしよう!