万能女中コニー・ヴィレ
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万能女中コニー・ヴィレ

黒コマリ/百七花亭/krage

意外と重かったね……

ネタバレ
2025年7月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 最初はチート女中が無双するライトなお話かなと思っていたのですが、人間ドラマが根深く重い。コニーと母親の関係は身につまされるものがあります。ある程度人生を重ねると自分が取捨選択し耐え忍んで努力を重ねてきた時間に価値を見出したくなるものです、自分の生き方が正しいと欺瞞しなければ生きること自体に耐えられないことが、長く生きるほど増えていく気がします(運の良しあしもあるのでしょうが)。自分も正しいあなたも正しい、そう冷静に考えられる人はいいのですが(そういう方こそ自分に自信があるのだと思います)、コニーの母親は自分の生き方が正しくてコニーの生き方は不幸な未来を呼び寄せる間違ったものだと思い込んでいるようです。自分とは違う他人の人生が間違いだと断定しながら、心からの良心であげつらって自分の人生を正当化するコニーの母親は哀れなのですが、能力を抜きにしても彼女のような自己欺瞞に染まり切ってそれを自分でもわからなくなっている人間が身内にいたら、非常に厄介。自分の身内にも心当たりがあるので、本当につらかった。哀れとも思わずにいられたらどんなに楽か。憎みたいわけじゃないから距離を置くというコニーの策が刺さり過ぎます、本当にそれしかできないんです、ああいう善意の人には。本人は心から善い行いをしているからこちらも憎みたくはないんです……が、一緒にいたら、斧持って追いかけまわされるほどでなくてもいつか死んでまうのよ。女中同士、同僚や上官、義兄、王子との関係において、コニーを取り巻く人間ドラマが表現されていますが、私にはミッシェルが私の母すぎてめちゃめちゃ心が動きました。毒親問題(親も悪気がなく、自分の正義を一生懸命生きているだけのタイプの健気な親が結果的に毒親になってしまうタイプ)の根幹をここまで視覚化してくれたのは本当に嬉しい。(2巻まで)【追記】3巻は恋愛要素が強くなりあまり好みでなくなった。義兄が戻ってきてまたちょっかい出し始めたし、間者っぽいキャラがコニーに(間者の仕事的にも個人の興味的にも?)ちょっかい出すし、恋愛要素は上官とのわちゃつきくらいでちょうどよかったので、展開が期待と変わってきてしまった。コニーと逆ハーのミスマッチが受け止めきれない……。コニーの生い立ちが重いからバランスを取ろうとしてるのかな……?
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