このレビューはネタバレを含みます▼
読みだしたら止まらない、何度となく、ええっ!と心揺さぶられ思わず読んでる携帯を床に落としたことか。
正直、英国王室についてさして興味も薄く生きてきて、今まさにこの作品と出会い、目から鱗。緻密で華美なハンスホルバインの描く肖像画も観る目が変わりそう。豪華絢爛な無表情の裏には人間味溢れる様々な感情や孤独感、屈折した想いが隠されている。
これほど人は権威や我欲で狂えるのかと怖くなる。神とはなんなのだろう、人間はどうして愚かなんだろうと自然と答えの出ない問いが渦巻く。
宗教が根深く世に及ぼす影響、人が人を裁き簡単に奪われる命。一国の王様の絶対的権力、周りの人々、その時代の崩壊した道徳観に重く苦しくなる。けれど、希望の一筋の光がエリザベスの賢明な姿とずっと側にいると誓ったセシル。セシルの幼少の頃から物語は進み、歴史に疎い自分でもすんなりとストーリーが入ってくる。
誰に感情移入しているのか、自分でも分からないけれど、自然と涙がこみ上げてくる。聡明で自国の未来の為にと志のあるセシルの成長は、残虐なシーンの多い中で読み手にとっても救いの姿。
物語の面白さもさることながら絵もそれぞれの人物が魅力的に描かれ、隅々までこれぞイギリス!な世界を丁寧に描いている。豪華な城内、調度品、衣装、紋様、そして庶民の街並み。心がどっぷりと世界に浸れる。
ヨーロッパの昔を描く作品に、過剰なまでの残酷なシーンに、ヘタレな自分は気持ちがついていけずに読めなくなるのですが、この作品は物語の面白さに引き込まれ、全然大丈夫でした!
それに歴史的な説明部分はコミカルに解説?漫画があって、分かりやすい!
あと、どんな悲惨な時でも、子供のシーンは凄くホッとする。エリザベスの幼少、エドワード、セシルの子トマス、子供の描き方が無垢で滑稽で可愛い。そして可哀想。。。
歴史はまさに「事実は小説より奇なり」イギリスの詩人の言葉通り。そしてこの作品も漫画史に残る面白さなのです。