君の総てを壊すまで
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君の総てを壊すまで

牛男

ありがとうございますありがとうございます

ネタバレ
2025年8月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヤンデレではありつつも、メリバエンドとも言い難い…
要約すると1人の人間を完膚なきまでに服従させる=壊すまでを丁寧に描いたお話ですが、とにかく登場人物全員の様子がおかしいw
しかし攻めのアキラと受けのヒカルがこれほどまでに常識から逸脱するには深〜いわけがあり、疑問のすべては下巻の最後、アキラ視点の過去エピソードにて無事回収されます。

何が恐ろしいかって、アキラが根っからの精神異常者でもなんでもなく、予想外にまともな人間だったからです。はじめは過去の恨みを晴らすための復讐劇なのかと思いましたが、そういうことならそうなるよね…と全部ねじ曲げ納得したくなる、彼らなりの救済劇といえるものかもしれません。
結論から言うと、先に壊れたのはアキラです。彼のような常識人が道を逸れるには、一線を越えられるだけの理由が必要。かわいそうなヒカルを手に入れる…それだけのためにここまで人生費やせるものでしょうか?いや常人にはできません。信者に教祖が必要なように、自分を保てるほど強い人間ではなかったヒカルにとってこの結末はある意味僥倖というもので、そこに善悪も正解不正解も当てはめるべきではないのだろうと思います(わたしは当人がいいならそれでOKという立場)。
公衆便所に放置プレイ、貞操帯にアレコレに…あからさまな変態プレイを通じ、目を背けたくなる人間の欺瞞を暴露するかのようなストーリー展開。セリフから行為からいちいち内容が濃ゆいので、人によっては自衛が必要かも…これは架空の物語であると切り離して読み進めないと、何かしらくらうかもしれません。

総資産3兆を誇る製薬会社の跡取りとして育てられ、早々に自我の死んでしまったヒカルくん。序盤では薄かった双子の妹の存在が、終盤に向けかなり重要になってくる。親に倣い損得を天秤にかけた者の末路だと言ってしまえばそれまでなのですが…理想の息子を演じきろうともがき苦しんでいるヒカルに「認めなよ、これが本当の姿だって…」と攻めながら囁くアキラがメシアかのように思える錯覚を起こすのもおもしろいし、そう思わせる秀逸な言葉選びだったと思います。
とくに、飴と鞭でヒカルを徐々に飼い慣らしていくアキラのお手並みと、最後のどんでん返しにはものすごく意表をつかれました。

修正が…白抜きが…なんていう瑣末な点はどうでも良くなる、トンデモ変態ハッピーエンディング。
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