君に降る言の葉は【単行本版】【シーモア限定特典付き】
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君に降る言の葉は【単行本版】【シーモア限定特典付き】

イズミハルカ

ピュアな男子高校生が紡ぐ文学的な恋

ネタバレ
2025年8月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ まるで良質な小説を読み終えたかのような余韻に浸れる、文学的表現に彩られた作品です。

高校1年生の主人公日向(ひなた)が、大好きな小説『雪の果て』を切っ掛けに知り合った同級生雪人(ゆきと)から、「疑似恋愛」してほしいと頼まれるところから物語は始まります。

高校生のピュアで不器用な恋心にキュンキュンすると同時に、あらゆる場面で「言葉の持つ力」について改めて考えさせられます。

「言葉」は時に鋭い刃となることもあれば、誰かにとって大きな救いになることもあるんですよね。

これまで、人から誤解されやすく自分の想いを言葉で伝えることを諦めてきた雪人が、中学時代のトラウマに悩む日向に寄り添おうと、自身に「今だけは退くな」と言い聞かせながら懸命に日向への言葉を紡ぐシーンには、心を打たれます。

その後、雪が舞う中、二人が心を通わせあう場面はとても幻想的で、ピュアな美しさに溢れています。

まだ未熟で不器用な二人ゆえ恋模様の進展は順調という訳にはいきませんが、二人の関係を決定づける「鍵」となるものが、これまたロマンティックな仕掛けとなっているんですよね。

そしてラストシーン、タイトルである『君に降る言の葉は』の意味が我々読者に提示される際には、大きなカタルシスを得ることができます。

物語の中で紡ぎ出される言葉も心理描写も情景描写もすべてが清らかで美しい、まさに心が洗われるような作品です。

本作品はBL漫画としては非常に控えめなラブシーンしかありませんが、それがまた、清らかで美しい作品世界とマッチしていて、いいんですよね。

しかし、できることならば、二人がラブラブしている後日談も拝読したいなあと…。
続編が出ることを心より願っています!
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