妹は知っている
」のレビュー

妹は知っている

雁木万里

人間が描かれている。

2025年8月19日
人間の醜悪さ、陳腐さ、凡庸さが、痛快なシュールギャグととともに、作品における一つのエッセンスとなって芸術性へと昇華されている。そのため、全てが読んでいて心地よい、独特なリズムを生み出している。生気があまり伝わってこない人物描写は、最初は面を食らったものの、読み進めていくうちに、そうでしかあり得ないような必然性を実感し、最終的には病みつきになっている自分を発見していた。人間はそもそも生気がない。疲れている。だからこそ、日常の細かなニュアンスに、生きる希望を見出す。
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