マリッジブルーの僕たちは【コミックス版】
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マリッジブルーの僕たちは【コミックス版】

夏井数

人間は遺伝子の乗り物らしい。

ネタバレ
2025年8月22日
このレビューはネタバレを含みます▼ 一見そつなく何でもこなす孝の深淵。これが、この作品の根幹です。アルファ同士とかオメガ同士とかオメガバース諸々は、目くらましに近い。孝の中の欠落を読者は覗いていく物語。後書きで夏井先生が「アルファ同士で描く意味あるのかな」とおっしゃっていますが、それはある意味正解で、ある意味不正解でもある。舞台装置としてのオメガバースシステムやアルファ同士は意味があった。「アルファ同士で描く意味ない」のは、孝とツトムの人間としての話だからで、けっして否定的な意味ではないの。孝の深淵にオメガ母の悲哀が深く根付いてはいるものの、孝とツトムとの関係性においては、オメガバースでなくても成立した、というニュアンスで私は受け止めています。それはそれとして、私自身の性癖としてアルファ同士が大好きだから有り難さは無限大。難解とおっしゃる皆様の難解ポイントは、孝自身も孝の本意を理解把握していないところ。アルファというガワスペックの良さゆえ、もはやオートマチックに孝は「自分のやるべきこと」を把握し無意識に「できて」しまう。作中で、人間に意思など存在せず本能の後付け、という話をしています。太郎くんの勇気を奮い起たせるエピソードとして0.2秒と登場しますが、他人事のように聴いている孝のガワスペックの隠喩でもあるので。最後の最後で、ツトムにどうしようもなく追い詰められて、ようやく孝の【意思】が顕になる。本当にタマネギみたいに剥いても剥いても皮ばかりで真意の見えない孝にツトムがイライラするのは致し方なし。作中リバしてはいるものの、あれは孝のアルファや男としての残滓(=本能の後付け)と見ています。だって、孝は意思の薄い男だから…(笑)。一方、ツトムは本能も意思も人並み外れて我が強い男。ツトムに対し「音楽を聴いている時だけ可愛い顔しやがる」というのは、おそらく本能の後付けではないツトム自身の意思。そう思うと、精神的には孝が抱かれてるんだろうな、と私は勝手に感じています。ツトムはいわゆる【尻で抱く男前】とも違うので、孝のセッ久を座薬突っ込まれてるくらいにしか思ってないけど、孝が可愛いから許してやってる。んじゃないかなぁ、という私の希望。とにかくめっちゃ面白いので、わからん人はわかるまで何度でも読み返してください。人間は遺伝子の乗り物であることを否定する話です。そもそも人間が遺伝子の乗り物説を知らんと難しく感じるかも
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