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今月(4月1日~4月30日)

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シーモア島
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投稿レビュー
  • 春眠男の誘惑【描き下ろしおまけ付き特装版】

    鈴代

    抜けないアイの棘
    ネタバレ
    2026年3月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 會田の愛が抜けない棘のよう!

    単話が読みホで読める。まだなら読んでほしい作品。
    最初、會田がずっとヘラヘラして掴みどころがないなと感じていた。
    須川斗真は美人系のサラリーマン。初恋の失恋を引きずる始まりだった。
    斗真視点だと會田の胡散臭い感じが、湿った導火線に火がつかないもどかしさになっていた。

    斗真の初恋の相手が登場すると、彼の辛さが露になる。
    家を出て、祖父に世話になる過程や失恋の描写が丁寧なので胸がズキズキ痛い。
    その痛みを理解者の祖父が、溺愛で癒してくれる。この存在には救われる。

    會田は重い過去や葛藤から、寂しさを飲めないお酒で紛らわせる、幼いガテン系。
    ハードなラブテクニックで斗真を翻弄しながら、真実の愛を欲しがっている。
    3巻はぼたぼたの涙が止まらない。會田のヘラヘラ笑顔が変化するのも作品の魅力。

    始りからは見えない會田の愛。貫かれるんじゃなくて、ハートの深いところで止まってる。
    抜けない棘のような愛が記憶に刺さる。
  • 重なる影にビターキス

    丸賀

    失意の小説家と孤独な青年
    ネタバレ
    2026年3月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 28歳の小説家と居場所が見つからない19歳の恋。208頁

    相沢克彦は8年交際の彼女からプロポーズを断られる。恋人以上になれなかった男女。相沢は失意のどん底に沈むはずが、常盤鷹人と出会った。お酒を飲んで弱音を吐く。元カノにも見せない相沢の醜態が鷹人の前には現れた。

    賑やかな雰囲気の作風。そして時折やってくるシリアスな心の内。コメディーを装いながら核は心の機微が散りばめられている。

    相沢は優しい寂しがり屋。恵まれなかった家庭環境の冷たさを乗り越えた過去がある。その経験から怒りや暴力で解決できることの少なさを知っていた。真摯に人を見て、言葉でつたえる魅力を持つ文筆家。

    ここのイチオシはなんと言っても、鷹人!電車内の痴漢をなぎ倒して登場する場面がえらくカッコイイ。この先、力強く相沢をおし倒すか?とドキドキヒヤヒヤ。ところが鷹人のギャップ萌えにこっちが倒された。困っている人をほっとけない性格は真っ直ぐだし。と思えば、簡単に性のはけ口になろうとする躊躇のなさ。それでいて自分の欲望は押し殺す。まぁ相沢への恋心全開になってからは、明るい表情と赤面で可愛さ倍々増し。相沢の眠っていた性欲や独占欲を目覚めさしている。

    元カノは引き止めなかった相沢だが、鷹人には違った。傍にいてほしくて家事を依頼したり、あの手この手で繋ぎとめようとする。ビターな始まりで最後はスイートな甘さが残る年の差BL
  • 幸薄社畜と運UPチャラ男

    野園

    凶と吉の共演
    ネタバレ
    2026年2月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 【読みホにて】 不運な男が強運とくっつく 星☆3.7

    社畜の芹沢実家(せりざわ)はキモいパワハラ上司(男)にプロポーズされた。運が最凶の男。追い詰められた彼がバーで出会ったのが、最強のアゲtinを持つイケメン小林美季だった。

    作画は個性を通り越しての破壊派。唯一の感じがする。そうしたなか、テンポの良い会話とストーリー展開の構成でふむふむと読んでしまう。芹沢が運の無さをつらつらと語る深刻な場面では笑いがでる(表情が平面的でけっして豊かではないのに、面白さに捕まる)ノンケの芹沢は初めて会った小林に初めてを持っていかれる(絵露はハードに入っている。アゲtinに文字が巻き付いている。斬新なセンスにまた笑う)そのご利益はすぐ現れた。もう、上がったり下がったりの流れが絶妙。芹沢は不運から解放されながら、今度は小林に振り回される。

    楽しい1冊。なんだかんだと、芹沢は不運との付き合い方が身についていた。これが結構頼もしい。だから小林の強運が無くなっても彼を好きでいるんだろうなと思える。そもそも芹沢は小林のテクに流されたんだし。そこは無くならないでしょう?(笑)
  • 邪神の甘噛み

    恋煩シビト

    邪な美形と黒髪美人
    ネタバレ
    2026年2月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 邪な神のビジュアル稲妻にうたれてお買い上げ。221頁 星☆3.8

    鬼嶋組の3兄弟。次男・央(なかば)は兄・寿(ひさし)と弟・福(ふく)の板挟みになり、冷遇されている。ある日、鬼嶋組の社に棲む神の守役という生贄の役目がまわってくる。

    設定を詰め込んだ1冊のために、展開が駆け足になっているのは否めない。けれど、央の黒髪美人が父や兄に期待されたいと揺れ動く表情は胸がキュンとする。強者な一面と愛情に飢えている弱い一面のギャップが央の魅力。しかも神様は鬼嶋の先祖が閉じ込めた存在だった。鬼嶋組は神を結界から出そうとはしなかった。でも央は神の無邪気な願いに真摯に向き合う。神を都合の良い道具にしない神守の誕生だった。神は足繁く通ってくる央の幸せを考えるようになる。

    この美形二人がスーツで街に出る。神様はメイドインジャパンのはずがハリウッドスターがスーツを着こなしているようだ(極めて個人的感想)シリアスな内容にそんな息抜きできる展開が入っている。なんだか造形の話ばかりして申し訳ない

    この作品のダークホースは三男・福。ひょろりと登場して(憎らしいけど央とは別の美形)美味しいところだけ、ヒョイヒョイとつまんで最後は兄を越えていく。実に末っ子の特徴を鷲掴みにしたキャラ。主役を食うとはこのことだ。

    最後は、業火と豪雨のダイナミックな演出でありながらファンタジーでふんわり着地する。
  • 他人と暮らす【コミックス版】

    祀木円

    寂しさが半分になった2人
    2026年2月12日
    【読みホにて】島でおススメに上がってきて、何気に読んだら最後まで読みふけった作品 229頁 女性マンガ

    営業部の青井と情報システムの轟は、会社の手配ミスで社宅のルームシェアをするはめになる。

    青井は営業だけあって、見た目爽やかで話術も巧み。しかし、ホントの彼は少々だらしない。基本、食事は外食かコンビニ弁当。酔うと絡み酒。会社の女性たちとの噂は絶えない。なのに、どこか憎めないのは人に見せたいイメージと内面のギャップに疲れる一面が見えてしまうから。
    轟は無愛想な堅実派。人との距離感に苦しんでいて、孤独を癒す対象が文鳥。自炊派で節約をするためと割り切っていながら、料理のアカウントを更新している。ミルクティー色した髪で武装したシャイな人。

    この二人は独身を謳歌している。社会に出て、恋愛以外の特別な人は作れるのか。

    最初は嚙み合わず上手くいかない。段々、本音や偽らない自分が顔をだす。このとき無関心で流すのではなく、お互いを補うことで生まれる安心感が温かい場所に。肯定される喜びができて「結婚したらこんな感じ?」と考える青井。轟は手料理を美味しいと食べてくれる存在に気づく。それは独りではたどり着けない楽しさ。

    リーマン達の生活にloveはない。社会人になってできた”特別な他人” そんな二人は、玄関で重いコートを脱いでしまっている
  • ぼくらの恋はままならない

    音流ねるね

    激情なきオメガバース
    ネタバレ
    2026年2月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 高校生たちの視線は一方通行、描かれた三角形 171頁 星☆3.8

    河野悠真(ゆうま)は宮原歩(あゆむ)に恋をして、その歩がアルファの都築彼方(つづき)に想いをよせる。
    悠真はオメガらしくない体質の持ち主。大人しくて消極的な17歳。同じオメガの歩は明るくてポジティブな性格。前向きで元気いっぱい。対照的に都築は隙がなく、冷たい印象だ。

    初コミックスの作画は緊張のためか硬さが感じられる。そこから頁をめくると、ここはオメガバースだった?と設定を忘れるくらいの青春もの。
    オメガの恋も真剣だが、アルファが悠真へ熱い視線を送っていた。都築は、歩が魅力あるオメガであっても、級友以上の距離に踏み込ませない。ひとたび相手が悠真になると、近づいてしまいたくなる。この重要な盛り上がりが、なんと淡々と進んでしまう(ええええ!)も、もったいない。こっちは、胸キュンかつハァハァいいながら振り回されたいのだが。やんわりと穏やかな展開に。バースものの激情タイプとは、一味違った

    しかしそれは、可哀そうな誰かを作りたくなかった作者の意図かもしれない。だからこそ、悠真は深い哀しみに落ちなかったし。歩はしなやかな強さが魅力になっていく。

    一方通行の恋はままならないまま、その代わりに友情ではつながった。最後は、ほろ苦い甘さがじんわり残る彼らの恋
  • ツレと恋してどうすんの?

    長与エリ子

    幸せと不安の恋人たち
    ネタバレ
    2026年2月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 恋はゲームみたいに見通せない。表紙のさくらさん、こちらをうかがう仕草がカワイイ。254頁の大ボリューム

    「さくらさん」こと桜井倫太郎はプロゲーマー。配信仲間の「るねさん」菊池穣(きくち ゆたか)とお付き合いが始まっていく。

    ハンドルネームで呼び合うから、年の差に驚いた。あとがきに「くっついたあとのカップルの話」「他愛もないやりとりをゆるく楽しんで」と書かれている。なので片恋中のジレジレはおあずけ。
    るねさんの元カノや好きな嗜好まで把握している、さくらさん。さぁ交際が始まると。耳元で名前を呼ばれたり、甘々の恋人モードでるねさんが迫ってくる。片想いが叶ったら、今度は失くしてしまう恐怖が押し寄せる。ゲームオーバーのように終わる不安。そんな悩みに寄り添う、るねさん。年上の余裕がめちゃカッコイイ。

    さくらさんは配信者るねさんを追いかけてゲームが上手くなっていく。友達ポジションを恋人へ。実は、るねさんは恋人ステージで待っててくれたという展開。すごく王道なんだけど、とても強い。

    ゲームの専門用語は外国語みたいに聞こえるが(巻末のデスクツアーは楽しかった!笑)18歳のプロが世界大会で勝利する姿。それにゲームの話を楽しそうにする表情が国内外で人気になりそうな予感。そうなると大人にみえる、るねさんの方が失う不安を抱えているのかもしれない。独占欲増量の日は近い。

    (蛇足になるが、表紙のさくらさんは誰を見ているかと考えた。照れてるし、るねさんかな?鏡に映ったさくらさんとか。それとも……読者かな。ん~目が合って照れるわぁ)
  • お酒によわい安藤さん【単行本版】

    瀬戸うみこ

    あん仁どう腐の安藤さん?
    ネタバレ
    2026年1月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 冒頭一コマ目で、そっとスマホを伏せた(つかみが予想を超えている)震える口で飲み物を流し込んで、いざ!

    エンジニアの安藤さんは仕事もできるお堅い人。それがお酒を飲んだら無防備でニコニコご機嫌なポンコツに変貌する。そんなギャップに振り回される同期の菊池くん。168頁

    普段の安藤さんは例えるなら高野豆腐のようなカチカチ乾燥状態。それがお酒の力で、おぼろ豆腐みたいにプルプルやわやわになる。どちらも美味しい。

    菊池くん、鉄仮面な安藤さんのためにネタを1年も提供するメンタル強の怪人。どんな安藤さんでも受けとめる、器の大きさはなかなかだよ(褒めてる)猫飼人の奴隷モードに馴染み過ぎているかもしれない。素晴らしい逸材。

    ギャクだけでなく、素面に戻った安藤さんも酩酊した安藤さんも恋心をアピールする愛らしさ。そうしてラブが濃いめに注入される度に立ち上がり、我に返って座ったりを繰り返した。サービス精神が旺盛すぎる。読み終えた時の爽快な(いや、2巻へ続くのだけれど)気分と一緒にうみこ先生のハートが届いてくる。”つぎも待っててね”
    もちろん解は、(起立)おっ腐!
  • さみしんぼっちな黒猫Ωは溺愛コンコン注がれ中【単行本版】【電子限定特典付き】

    あぶく

    最強神主×黒猫の少年
    ネタバレ
    2026年1月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ あぶく先生の描くしっぽは饒舌。パシパシと揺れて喜びと甘えを見事に語ってる。これはずっと”ぼっち”だった黒猫が運命に飛び込む物語 201頁

    黒崎宮に逃げ込んだ黒い猫又Ωは神主・黒崎義隆(くろさき よしたか)に救われる。そこは黒い狐を奉る神社。穏やかな神主は妖狐だった。

    黒猫は「陽(はる)」の名前をもらった。黒い毛並みの心は雪のように真っ白。体は未踏の純潔(ほんとうにぼっちだったんだな)陽は人間世界に溶け込む努力をする。成長していく過程のなか、”ずっと義隆の隣にいたい”と願うように。特別な想いが膨らむのにいつも猫ちゃん扱いされて、思うようにいかない

    義隆は最強クラスの神力を持つ、無敵の妖狐。その力は相手を壊すことを知っている繊細なアルファ。糸目は開眼すると、儚げな色気全開で迫ってくる。和装の寝巻姿で布団を上げて招き入れるしぐさ、思わず陽を押しのけて飛び込みたかった~

    脇をかためる巫女の椿とすみれも仲良し姉妹で愛らしい。陽を末っ子の家族のようにかわいがる。黒崎宮は心をあたためてくれる居心地の良い場所。狐と猫のしっぽが幸せに揺らめいている。
  • 片恋ストラテジー

    秋良ろじ

    恋するパーフェクトハンター
    ネタバレ
    2026年1月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ パーフェクトハンター誕生か? 174頁 島でおススメに挙がってたときから狙ってた。

    古都一縷(こと いちる)は17歳。先生の評価も成績もまぁまぁ。背も体格もそれなりで女子のウケもそこそこ。しかし恋は同級の鹿山勇気(かやま ゆうき)にまっしぐら。恋への一途さで繋がってるふたり。

    運動が得意な勇気。くったくなく喜んだり落ち込んだり、表情も柔軟な素直さ。そして、惚れた人には色々と許してしまう、警戒心のなさ。悪い男に引っかからなくてよかったね。

    一縷は友達ポジで穏やかにすましている。しかし、普通に紛れ込む周到さや人間観察の鋭さは10代のそれじゃぁない。あの糸目が挑発的に開眼したときの、威嚇の凄み。勇気を捕獲するときの本気度(これ、ワンコのふりした狼野郎)の圧が強烈だった。

    そんな一縷も、勇気の恋がうまくいきそうだとグラグラ揺れるのがムフフ。手中へ引き込んだつもりが、実は無邪気な天然勇気にからめとられてる。素直な勇気がこれから成長して、ますます一縷に執着されるかと思うと妄想がピンク色に。

    さらに気になるのが、裏表紙のタイガの表情。簡単に引き下がるタイプに見えない。プライドをかけたハンター同士のつばぜり合いが見れたら嬉しいわぁ。
  • 髪と罅

    7区

    のばす髪と片想い
    ネタバレ
    2026年1月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 片想いの時間を、伸びる髪にこめる。207頁【読み放題にて】

    大学受験に失敗した倉内大志(くらうち たいし)は同級生の松田に想いを募らせている。その気持ちを親友の国良聡洋(くによし)だけが知っていた。

    松田の好みは「髪の長い子」。国良は「髪を伸ばして告白しろ」と背中を押す。顔立ちが綺麗でモテてしまう大志。いつも誰かが交際を申し込んでくる。でも大志の視線は陽気な同級生にしか注がれない。「罅」が少しずつ沁みてくる。

    親友、国良は大志をずっと大事に見守っている。
    (モテるなら国良の方じゃないかと何度も思った)
    一方通行の恋でいこうと決意したのはいつなんだろう。彼の秘めた想いはしだいに成長していく。
    最後の電子限定3pの描きおろしが胸を打つ。感情がモノローグに滲みでていて、ジンとくる。

    (小さなつぶやき:タイトルの響きが耳に残る。「髪と日々」にも読めるなぁと思っていたら書き下ろしのタイトルだった)
  • 【電子単行本】アフターファイブ&ファイブ

    西田ヒガシ

    5日目(Friday)のアフター5
    ネタバレ
    2026年1月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 「ヤッホーーーー」のかけ声でお立ち台に登場するジョナサン(古いけど「JーMen's Tokyo」を想起した)
    注目の視線で興奮に酔う陽気なダンサー。仮面の下は出世街道を歩いている課長・清水(しみず)けれどその表情には憂いの影がみえる。そんなとき、店に現れた次長・沖野(おきの)
    暗い目つきでぞんざいな話し方、じつに面白味のなさそうな男。それに既婚のノンケ。

    パブの壁際でたたずむ沖野は、暗闇の中にいた。ああ結婚を決意したときも下り坂だったな。どうしようもない時に現れた女は魅力的だから必死に掴んだ。待てばいつかは報われると思ってた?恋は独りで頑張れるけど、愛はどうなんだろうね。
    ステージからやってきたジョナサンが足元に来た時、うろたえなかったのは男が反応しないから?でもジョナサンからのキスに慰められた。ふいにやってきた扇情。そして雪のような光がまたたいた。

    清水は地方で苦しみ、真剣な恋は裏切りと別れ。傷ついたハートからジョナサンは生まれたのかな。そうなら幸せを与えている彼は切ないね。あのかけ声が愛への渇望のように聞こえる。

    (沼からのつぶやき:今か今かと待っていた。新刊ゲット。165頁。うまい、あの沖野の笑顔。しかも清水が沖野の細部を羅列するシーンが素直じゃなくて、憎たらしい~(笑)
  • Don't talk to me【極】

    ぞう工場

    極めてよし!
    ネタバレ
    2026年1月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 去年ぎりぎりまで温存していたクーポンでゲットした【極】 いやいや~良かった!

    山田(やまだ)がクリスマスの夜に寂しさから選んだ相手は、嫌いな同期・瀧宮(たきみや)だった。スポーツができて人当たりもよく人気者のモテ男。そんな奴に色々身バレして逃げ出したいのに負けん気と意地でベットイン。そしたらメチャクチャ気持ちいい。身体は正直にいいと鳴くのに、心が素直になれない。

    瀧宮の距離のつめ方はグイグイという表現がぴったり。鍛えた体で覆いかぶさるように迫ってくる。言葉遣いは柔らかなトーンで始まり、中盤の流れるようなタッチで気持ちをほぐした後は激しいリズムで快楽のフィニッシュと見事なテク(極細の海苔がノリノリ)うまい、上手すぎる。山田が色々警戒したくなる気持ちに共感だ。

    うわぁ、いいなぁと感じたのは、山田が「俺」と使っていた言葉が「僕」に変化する場面。心の扉が開け放たれる。特別なひとにだけ見せる一面がそこにある。
  • 後宮の獣は愛を孕む【電子限定描き下ろし漫画付き】【コミックス版】

    じんにくれーちぇ

    傾国のキツネと虎
    ネタバレ
    2026年1月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 前作に続き、鋭い視点とアイデアが光っている。177頁 本作は亜人が支配される中華ファンタジー

    妖狐の涙星(レイシン)は娼館からの成り上がり。「肉毬草(にくきゅうそう)」【強制的に子宮がつくれる】の首環を嵌めて後宮入りした。ところが子宮は壊れ、そのせいで足は獣のまま。皇帝は後宮の退きを命じていた。なんとか止まりたいレイシン。そこで種馬亜人に閨房の指南役という作戦にでた。その候補として目をつけたのが体躯のよい虎の天哥儿(テンゲル)だった。

    テンゲルは田舎育ちで天真爛漫。そうかと思えば悪意ある人間を退ける強さをもっていた。屈強さと、しなやかな優しさが王者の風格だ。皇帝は亜人が嫌いであり、気まぐれで傲慢。強気な発言の裏でレイシンの動向が気になる様は器が小さい。

    今回は獣の描写がうまかった(BLじゃないファンタジーになったかも)あのレイシンの足の繊細さ。中盤で狐に戻った軽やかな動きやかわいらしさの躍動感はウキウキする。

    狐は生きるために後宮を選んだ。しかしそこでは虎が守れない。テンゲルはレイシンに迫る。安全な場所は自分たちで作り上げていこうと。広い草原と森のなかを、雄々しい虎と賢い狐がかけていく。

    (小さなつぶやき:レイシンの履いている纏足(てんそく)が目にとまる。中華王朝では小さな靴=足が美しいとされた時代。高貴な姫たちは纏足で足を拘束する。拘束具。そして逃亡しないようにする拘束の意味もかねている。色んな意味で痛い)
  • 愛を積む楽園

    rasu

    きえた記憶と奪えないもの
    ネタバレ
    2026年1月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 記憶が霧のように消えていく。前編 52頁 後編 56頁 45歳の25年分が吹っ飛ぶ。2人の結末が気になって仕方なかった

    一流企業に勤めていた雪仁(ゆきひと)は高熱から回復すると20歳までの記憶しか残っていなかった。パートナーの瑛太(えいた)とは付き合い始めの断片だけ。それは想像もしていない事態だった。

    瑛太はロン毛でくたびれた表情が妙にリアルで、雪仁も頬や目じりが重力に負け始めている。瑛太の中にある2人の思い出が次から次へと溢れてくる。でも今の雪仁は別人のよう。大好きな恋人を失ったかのような感覚が辛い。若い時の別れ話でさえ幸せの思い出になっていく。

    思い出は誰からも奪えないものだと思っていた。雪仁の記憶は戻らない。時を経ても瑛太の変わらない一途さがよかった。
  • 「となりのメタラーさん」番外編集【電子限定版】

    マミタ

    雪国メタル
    ネタバレ
    2026年1月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 冬と炬燵ならこの2人 貧乏大学生・坂木遣斗(さかき けんと)とメタラー池松壮志(いけまつ そうし) 34頁

    日本海に面した雪深い田舎町。激安家賃のアパート。こたつに丸ストーブから始まったふたり。そこへ差し込まれるメタル音楽(聴きながら書いているけど(笑)ズダダダダがどこまでも続く)血管の血がドラムにあわせて跳ねる。音のリズムは速いのに、ふたりの関係はカタツムリも驚くゆっくり速度だった。

    こちらは書店特典をあつめた番外編。本編を読んでからの方がより心温まる(本編を再々々々読した)どの掌編も壮志のジェスチャーをキャッチする遣斗がいる。それに壮志を見守る人が少しずつ登場してくるのもステキ(星洋菓子店の同僚さんがカワイイ。そろそろ名前でないかな)

    お弁当作りにハマった壮志さんの3週目の豪華さが面白い。弁当の大きさと愛の大きさが比例していく。雪の白銀とメタルがキラキラする1冊
  • 【電子限定】翼なき彼ら

    西田ヒガシ

    白い翼といのちの願い
    ネタバレ
    2025年12月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 西田沼へ沈没して早数年。時間をかけて柔らかくなった革のような男たちを描いたらピカイチの西田先生。今作は現代ファンタジー 195頁

    山間の田舎町。数十年ぶりに母校で再会する壮年期の男二人。両親に愛されなかった木田秀彦(きだ ひでひこ)そしてゲイを隠して家庭を持った藤井睦(ふじい むつみ)

    ふたりは少年時代に白い生き物を助けた。それが月日を経て藤井の前に現れる。翼を授けて命の選択を迫る。病院で意識の戻らない娘か、忘れられない男の命か。それとも…。ギリギリまでに追い詰められた先で待つものは。

    木田は初めてあった藤井の、涙ぐんだ顔に一目ぼれした。しかし、モテの才能が開花してからは女を渡り歩く日々。それなのに翼の生えたおっさんを可愛いと口走り、その人が哀しみをこらえる姿にキスせずにはいられない(セリフ少なく、場の空気で会話してるのが、たまらなくいい)

    藤井は死を目前にして「愛する人に…抱きしめられたかった」とつぶやいている。帰宅しても家族はいない。雨の降る夜、娘の好きなヒゲを剃り、同級生と向き合う。幼すぎて分からなかった苦しい感情に名前がつく。

    最後は、白い生き物が木田に問う。彼は命の再生を願った。それは親になった藤井が子供をみせたから。本当は大切にしたかった気持ちを口にする。木田が愛にふれた瞬間に胸が痛くなった。

    雨はあがり、空は晴れる。翼をなくして、ただひとりの人にたどり着く不思議な話
  • 迷エル黒羊【単行本版】【シーモア限定特典付き】

    椛嶋リラコ

    黒い血と天界の残滓
    ネタバレ
    2025年12月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 椛嶋ワールドすごい!BLなのにその枠を超えてる作品。290頁 ページをめくると産業革命で賑わう大英帝国の時代が開く

    BB〇制作の重厚な映像を彷彿とさせるガス灯と石畳の街並み。スリーピースにボーラーハットの紳士たち。巡査アラン・クランシーはイン靡な夢にうなされている。彼を抱きしめるのは同僚のジャレット・ルシアン(通称:ジェリー)ギリシャ彫刻のような面立ちの、胸に秘めた相手だった。

    偽りの仮面で夢をみせているのは天界から堕ちた天使。糧と選んだ男を夢に連れ込みセイを貪る悪魔。黒い羽を広げてアランの日常に現れる。

    正義感つよく善良なアラン。体は贋のジェリーに翻弄されても心はジャレットだけのもの。彼をとらえた瞳が恋慕う喜びにきらめいている。

    悪魔は冷酷かつ残忍。その悪魔が巡査を守り、自らを危険にさらす。哀しみに暮れるアランを受けとめるシーンは声にならない歓喜の遠吠に。偽りの仮面はしだいに重くなり、剥がれていく過程は息を忘れてしまうほど巧い(ああ、語彙が溶けていく)悪魔は元天使。その残った資質が無垢な魂を求めようとしている。後半はアランに不条理な試練が待っていた。

    妖しい悪魔に引き込まれたのはアランだけじゃない。黒い翼が遠ざかるような締めくくり。空気が震えている。

    (小さな呟き:悪魔の黒い爪。オシャレで良く目にするけど生気が感じられなくて好きじゃなかった。今回は違う。黒真珠のような艶でくぎづけになった。美しさに、隙がない)
  • 傷心男に春のあらし

    ココミ

    桜の季節のふたり
    ネタバレ
    2025年12月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 夢をあきらめていた男とDKの恋物語 185頁 星☆3.8 (読みホで読めると喜んで、じつは本棚にいた(笑)

    アラサー・古賀栄輔(こが えいすけ)はボロアパートと自分を重ねながら過ごしている。窓からの桜の景色は新築戸建てに奪われてしまう。その家に越してきたのは理想的な家族。そのひとりがクールで清潔そうな高校生・永島櫂(ながしま かい)だった。

    築古のアパートへ立ち寄っては時間をつぶす高校生。古賀はヒゲがはえて髪の手入れもせずにいる年上の大人。大人ぶっていながら子供のよう。でも、どこか自然体。そして写真がうまい。櫂は写真を眺めたり部屋で寝っ転がったりと恋人のようだ。そして距離をつめすぎて出禁になる。あきらめきれずにアパート前へいく姿に恋の苦しさが伝わってくる。

    どうにもモテそうな櫂。しかし、好きな人以外は眼中にない。ふたりでいる時間があれば他はどうでもいい感じ。そんな熱い櫂のエネルギーが栄輔のあきらめていた夢に降り注がれて、目をさます。

    この物語に派手さはない。年の差より、好きな人と一緒にいる楽しさが描きこまれた春風のような作品。
  • ふたりのけもの

    合鴨ミケランジェロ

    のけもの(の)ふたり
    ネタバレ
    2025年12月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 鮮やかな黄色の表紙が目にとまる(表紙のしのさきは可愛いすぎないか) 捕食者と被食者のふたり 169頁 オールフルカラーで流血が鮮明。

    最初は「あら~のよるに」を想像していた。どうやらこちらは友情を大きく越えていこうとしている。(BLジャンルでもエチはない。狼のみなせはバカでかいので、しのさきが壊れる。あ、そっちじゃない?(笑)

    30話で構成。「みなせ」は白い狼。スラリとした体に飛びぬけた狩猟能力の持ち主。幼少期に両親が死んで、群れから外れる。対して「しのさき」は大きくなれない牡鹿。その異端な姿ゆえ群れから追い出される。そんな ”のけもの”のふたりが森で暮らす物語。

    みなせがしのさきを咥えて森をかける姿はどこか青春してる。それに残忍なはずのみなせがしのさきを護りに現れる(うっ、血が心臓に集まってくる)最後らへんのしのさきはみなせならと思っている。命を捧げるって崇高に感じてしまう。メルヘンでない、食物連鎖の隙間にみえるファンタジー。
  • おカネが恋をダメにする【コミックス版】【電子限定特典付き】

    汐見モリ

    お金と恋がスキになる
    ネタバレ
    2025年12月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 夜の街の青年に因果がめぐってくる。174頁

    キャバクラのボーイをしている藤田理生(ふじた りお)に”パトロン”志願の広瀬雪典(ひろせ ゆきのり)が現れた。

    リオはお金をもらいながら、広瀬を「つまらない奴」と切り捨てる。歓楽街は欲望が赤裸々に本性を現す場所。

    広瀬はリオを好きだと言いつつ、恋人の距離に踏み込まない。なぜかいつもスーツでやってくる。それは大事な思い出と決意を思い出すためのアイテムだったのかもしれない。そこに広瀬の思慮深さが見えてきた。彼のいつも俯いている顔が嬉しさで手まで真っ赤になるとき。隠しきれない恋心を必死に抑えている姿が可愛いのにどこか切ない。

    そうして旅行や食事にとおカネは飛んでいく。リオはしだいに広瀬が気になる。夜の街に女性はよりどりみどりだ。お金が切れたらサヨナラするだけと、割り切りの始まりだった。でも広瀬の打算のない献身に気持ちが割り切れなくなる。リオの奥底に隠れていた感情があふれていく展開が上手くて、んん~~いい!と叫んだ。

    最後まで読むとリオも広瀬も好きになる。実は同僚・城田のツッコミ&アシストも何気に良かった。あとがきも楽しくて、じわっと効いてくる作品。
    (追記:また、リオをレビューしたくなった。リオが広瀬を失いたくないと必死になるところ。ここからすごく鼓動があがる。「傷つけたら」「嫌われたら」どうしようと悩み。病院でも、真っ先に広瀬を思い出している。すごい変化。エンドの決めセリフで、とんでもない爽やかなイケメンに見える)
  • 当園は閉園致しました【分冊版】

    むだ

    おかわりください!
    ネタバレ
    2025年12月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家さま。満面笑みの「園長の青葉です!」で(おおおっと、これは)スマホがぐぐっと近くなる。最初のきっかけはフォロー様のレビューから(本当にありがとうございます)ポチリ。

    閉園する動物園の片づけバイトに入った大学生・北川涼(きたがわ りょう)と園長・青葉陽人(あおば はると)の物語

    あご髭でけだるい感じの北川。上腕、前腕の筋肉や服の上からでも分かる体のラインでイケメンを漂わせてる。強そうにみえて心はナイーブな性格(陽人がタイプでずっとカワイイしか呟いてないのも、いいわぁ)

    青葉陽人は父親の代理で閉園の業務についている。名前のとおり明るくて朗らか。北川とは違う筋肉がむっちりとついている。お酒が入ってソファに体をあずけている時のふくよかな丸みが、たまらない(ああ、服の小さな凸をきっちり描きこんでいる。北川じゃなくても、目のやり場に困る)

    町はずれの誰も来なくなった動物園。陽人は従業員を見送り、動物を見送る毎日を寄宿舎で過ごしている。苦しくはなかっただろうか。

    そこにやってきた動物好きの大学生。背が高くて、さりげない優しさで手伝ってくれる。最後の晩餐で酔った戯れを、どんな気持ちで受け取ったのか。そうして後編は二人の距離が縮まっていく。
    前編 34頁 後編 30頁。満腹にはならなかった。なので、おかわりください!
  • ジャルディニエの愛した毒花【単行本版】【シーモア限定特典付】

    椛嶋リラコ

    椛嶋ワールド奇譚として【期間限定読みホ】
    2025年12月10日
    これは椛嶋ワールドとして鑑賞を推奨。322頁 BLでもあるけれど、その世界観は一線を画している。好みはあるだろうが、刺さる人は深い印象を持たされる。

    読み放題にて読了。期間限定とはいえこのボリュームの作品をポンと置いてくれるのは嬉しい。試し読みでもその美しさは伝わるはず。隅々まで書き込まれた手抜きのない画面。服飾や小物まで解像度の高い描画がほどこされて(こっちは語彙力なくして)すごい。

    ビスクドールのようなキャラ造形に圧倒されるが、オープニングの語りも言葉の装飾が美しい。タイトルもフランス語の響きを取り込んで、世界観の扉はひらいている。1話が読み終わる頃にはBL読者を脱ぎ捨ててマンガ好きになっていた。

    主人公のオルビットは旅人。盗難にあって城郭都市に足止めされて、物語は動き出す。箱庭に閉じ込められた獣人の館が舞台になっているので倒錯的、官能的な表現や暴力もチラチラでる。連載開始から長期にわたった作品のようでアコニの巻き毛も変化する。それでも作者の美意識は貫かれている。

    どこか懐かしさを感じる部分に洗練された感性が融合している。作者さまの”ブランド”を感じる一冊。他の作品も読んでみたい。
  • ホーム・スウィートホーム・ベイビー

    くけこ

    失恋をかたづけに来た、陽だまりワンコ
    ネタバレ
    2025年12月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 重苦しい思い出が残る部屋が、お日さまの光をまとった大学生で洗われていく物語。187頁

    舟谷咲耶(ふなたに さくや)は中堅の司法書士で多忙な日々。だが、元カレは女を選んでしまった。思い出が部屋のあちこちに残っている。傷ついて落ち込んだ分だけ部屋が汚れていく。とうとう家事代行サービスを頼むことに。そこでやってきたのが、バイトの田崎陽日輝(たざき ひびき)だった。

    くけこ先生は無邪気な笑顔の健気なワンコを描くのが上手い。最初の暗い出だしが明るくなる予感に満ちていく

    大学生の田崎は声が大きく体も大きい。体から陽のパワーがあふれ出ていて、家事代行でも人気者。手際よく部屋が片付くと、下向きの気持ちも前向きに(これは大いに共感)そして部屋で明るいワンコが笑顔で甘えてきたら。そりゃあ、ときめきますよ。
    好きにならない方が無理だ。

    ただ、いい雰囲気だった時に年上が酔って押し倒すのはどうかな(なし崩しに始まった元カレの記憶が甦ったとしても)ここは体よりハートを掴もう。

    このふたりはどちらもモテ属。明るい田崎があちこちで狙われるのは想像できる。その彼が舟谷を好きになる。元カレに渡せなかった指輪を眺める横顔は恋が小さく溶けていく様を見ているようだ。心がひきつけられる。だから慰めより助けになりたいと思ったのかもしれない。これは優しい人が気持ちをぶつけてくるストーリー。明るい笑顔にキュンとくる方へおススメ。
  • ボーイズラブ・コンプレックス【電子限定特典付き】

    横澤しっか/Canelé編集部

    セ○レからログアウトして
    ネタバレ
    2025年12月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家さま(単話が面白くて新刊をお待ちしていました) 200頁(セ○レがNGワードだった)

    制作会社のAD・本田真太(ほんだ しんた)は上司からしごかれる日々。疲れた彼の癒しは仮想空間風俗〈でぃあ・ば~す〉(現実から逃げて別人でやり直す?)
    舞台は高校。そこで爽やかな長身イケメン「マコト」となり、「アキ」と体の関係を楽しむ。「アキ」は軽い感じだが、どこかほっとけない儚げな面立ちだった。

    さて、本田(=マコト)は冴えない見た目がコンプレックス。上司の桐島(きりしま)はイケメンで長身。若くして昇進するデキる人。本田は肌が触れたことで「アキ」に気づく(現実で気づくって、いいよね。繊細な感性がある)
    本田は内側のめがある。周囲に気を配り、困った人を見捨てられない優しさ。それだけではなく、助けられるだけの能力を積み重ねている人でもある。だから桐島は本田に仕事をふる(意識してか、無意識なのか。本田と仕事をしたいように見える)

    桐島は嘘を重ねて生きている。毎日がいき苦しい。仮想空間は逃げだった。けれどその先で素直な自分に出会ってしまった。マコトが現実で会おうと口にする。そこはほんとカッコいい。(好きな子の涙に男がたつって、ラブだわぁ)しかも、とびっきりのおしゃれをして待つ桐島のめちゃめちゃカワイイこと(思いっきり口角があがりまくり)

    ところで、ふたりは好きの告白なんてしないのかな(え~、いくつになっても告白ほしいぞ)これはコンプレックスを抱えた大人たちが仮想空間で恋に出逢う物語。

    本田のフォルムは変えられないが、好きな人(桐島は本田の見た目を悪いと思っていないし)を大事にして仕事の自信がつけばスタイルが変化する。内面のよさは芽がでるまで時間がかかる。その時間を楽しむのも恋人の特権だと思っている。
  • 隠れ鈍感腐男子、登坂くんの日常

    わたぬき

    乙女ゲーム腐男子Ver?
    2025年12月6日
    フォロー様、レビューありがとうございます。読みホにて(まさかシーモアで読めるとは、ありがたい)

    三白眼の男子高校生・登坂秀(とうさか しゅう)は日々、妄想に励んでいる(君に腐を伝授したのは誰だ?)
    彼の周囲にはカースト上位のイケてる王子がよりどりみどり。

    いや~面白かった。
    特にですね。文化祭編は超絶良かった。あの、パァァァァンのくだりはニヤニヤがとまらんかった。

    キャラ達は高校1年生ですよ!楽しかった~。個人的に今作の優勝は成瀬くん。三ケ日みかん、Lサイズ10㎏を贈答します!

    ※そのうち4~の続編出ますよね(ピク支部は進みが早い?)ワクワクする!(以下は追記の余白)
  • 【電子限定】インモラルなやさしい彼

    野良おばけ

    名もなき役者とさまよう男好き
    ネタバレ
    2025年12月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 名がない男と寂しさから抜け出せないゲイの物語 197頁(羽瀬がガチで不品行なの、ご注意を)

    ブレイク寸前のあいつは芸名も本名もでないまま。役に入りきったときの顔つきは別人ですごい。そんなあいつにも悩みはある。素の自分だとつまらないことを正直に言ってしまう。だから人間関係がうまくいかない。そうして現れた色気のある羽瀬。役になりきるあいつを「迫真の演技」とほめる。そして”素の自分”の話を面白そうに聞いてくれる。笑顔がやわらかくて優しい隣人。

    羽瀬は男しか好きになれない。好みの男を誘うために身なりを整え、時には割り切った関係のやりとりもする。身体の欲求が先走り、心はいつの間にか置いてけぼり。いつも力強く抱きしめてくれる人を求めては傷ついている。器用でさびしい男。

    物語の中盤にあいつは羽瀬を演じる。それは自分が羽瀬を理解するためだ。ここが上手い!(うますぎる野良先生)力強いあいつが夜の街へ羽瀬を探しにいく(走る姿がなんともきれい)

    野良先生はタッチが個性的。そこにある表情もセリフもどこか詩的で心に残る。今作の「あいつ」は存在しているのに名前がない。それだけで存在に揺らぎを感じる不思議な作品。
  • 花に知られぬ恋もするかな

    やん

    四十路男のキョウの花
    ネタバレ
    2025年12月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ タイトルの響きで表紙が目にとまる。作者はやん先生!はい、購入リスト入り。

    公務員の鴇田紘一(ときた こういち)は40代。課長まで昇進したものの結婚生活が破局。離婚の痛みはまだ指輪に残っている。職場で呻きのような痛みが体を這った時、あでやかな花と緑の造形美が目にはいる。京都を拠点にしている梶木圭(かじき けい)の作品だった

    鴇田に話しかける短髪、眼鏡で体躯のよい梶木。爽やかでやわらかな物腰。しかも華道家として活躍する切れ者。東京で息苦しさを抱えている鴇田を京都へ誘う。大人な雰囲気の梶木だが、バーで酔いつぶれる鴇田を口説き始めるあたりから表情が変化してきた?で試し読み終了(あわわ、またいいところで)

    やん先生の肉体美と京都。これが予想を超えてあっている。花卉に飾られる花はみずみずしい存在感があって紙面が美しい。終盤に向かって、平凡な鴇田の未来がどう変化するのか楽しみな作品。
  • 紺りりinカァネイション

    三皿サチコ

    これは、うまい!まずは丸腰で
    ネタバレ
    2025年11月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 読みホでよめるBLファンタジー。75頁 (放題民じゃないなら、ピク支部を尋ねられたし)

    読了の感想は「はぁ、これは上手いわぁ」のひと言。画力だけでなく、キャラの良さも十分にたって引き込まれる。
    序盤はこれ、なんだろう?ではじまり、中盤はナゾな?に入っていく。夜のスナックで仕事をしている、優しいリリと童心な学生・紺(こん)の物語。生活サイクルがちがうふたり。いつから一緒にいるのかはわからない。ノートに綴られる絵日記も面白い(いつ書くのだろうか)そして紺の20歳の誕生日、夜の川原でふたりだけのかけっこ。着地はうなだれる切なさ。

    ここからはボクの妄想(はじめは reincarnation とよんだが)『カァネイション』を花だと仮定して、何色だろうと考えた。結論は純粋な白。その花言葉は”私の愛情は生きている”
    まずは、まっさらで読んでほしい作品。
  • その恋、自販機で買えますか?【単行本版】【コミックシーモア限定特典付き】

    吉井ハルアキ

    ほっとユズで癒される
    ネタバレ
    2025年11月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 恋愛初心者と年下ワンコのリーマンBL

    久しぶりに3巻読み返して癒されてしまった。お付き合い編からはじまり、恋人編をへて同棲編とつながる。その間、当て馬もなく二人の世界観だけで読ませてくれる内容。
    小岩井歩はゲイの32歳、山下諒真は自販機の補充をしている28歳。小岩井の臆病な内向き思考でよくお付き合い編がまとまったよ。恋へのモダモダが凄い。あれは山下の”歩さん”呼びと好きな人に真っ直ぐな性格じゃなかったらラブにならなかった。おそろしいわぁ。
    しかも、予想を超えて小岩井への好きが爆上がりしていく。告白は2回もしているし、同棲へも積極的。どんだけ好きなんだ!めちゃくちゃいい奴だ(最初はチャラ男かと思ってた、スマン)愛の伸びしろがすごい。

    でもちょっと、気になることがある。山下の好きを伝えている量にくらべて、小岩井は”オレのこと好き?”と問われて応えただけ。もちろん「ありがとう」も「顔がみたくなった」も「今から会いたい」も好きの表現のひとつ。それでも、目をみて伝えられた言葉は何より嬉しい(山下は男泣きするかな?見たい!)これからの展開で小岩井の愛がたくさん溢れてくれることを願っている。

    3巻の終盤は都会のクリスマスマーケットでプレゼントをするシーンがある。幸せそうなふたりが続いていく予感。やっぱり、いい作品だよと実感している。
  • 三文小説集 瀬川環作品集

    瀬川環

    言葉をもたない犬と言葉をささえた兄
    ネタバレ
    2025年11月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ たらふく抱えたポイントで、いい気になって買った1冊。183頁 女性ジャンル

    「野犬夜曲シリーズ」と「僕は兄になりたかった」が収録。
    「野犬夜曲」→「野犬狂想曲」→「野犬追想曲」は孤独な青年・橘(たちばな)と書くことを生きがいにしている綾川(あやかわ)の物語。幼少期に父を亡くし、親戚中で厄介者扱いを受けた橘。やがて怒りや寂しさを暴力で表現するようになる。ある夏の酒場で美しい女性と出会う。甘いひとときで終わるはずが、彼女が小説家だったことで橘の人生が変化していく。野犬シリーズは綾川が2枚も3枚も上手だ。暴力に微動だにしない強さがある。暴走する感情に丁寧な言葉で向き合うシーンは秀逸。そして男は次第に恋に目覚める。だが恋はやっかいなカタチへ育ち始めた。橘のギラギラした眼差しと寂しげな色気が魅力的だった。

    「僕は兄になりたかった」は野犬シリーズがヒリヒリする恋ならこちらは情愛。優しい兄と人と話すことが苦手で引きこもりの弟。ただ文章を書くことが上手かった弟を兄が一緒に暮らしながら応援する話。40頁ほど。兄弟がお互いをリスペクトしているのが、伝わってくる良作。

    ※ pix〇ⅴやNO-トにも作品が掲載されている。お時間あるときにでも。
  • 同居人は今日も風呂から出てこない

    小指

    小柄な泣き虫とユニットバス
    ネタバレ
    2025年11月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 作者さま買い、欲目フィルターはあつめ。 愛想のない大男と小柄な泣き虫が再会する同級生BL 204頁 星☆3.9

    レストランの厨房で働く東千紘(あずまちひろ)は狭いボロアパートに住んでいる。ある日、空き部屋の隣から音が。覗くと暗い部屋に小柄な大内朝陽(おおうちあさひ)が泣きながら立っていた。
    大内は元カレに捨てられ、泣きついて東のユニットバスに居ついてしまう。東は中学時代、大内の泣き顔に性の衝動を覚えたことが忘れられなかった。

    広い空間に馴染めない体質を引きずっている大内。引きこもりの世話を誰がしたのか、家事能力はゼロ。到底自立していると言えない。核心をつかれると泣いて、逃げ出す不思議くん(ちょい面倒くさい)
    東は見た目不愛想だけど穏やかで優しい男。しかも恋の感情を押し付けもせず、相手を大事にする繊細さ。その誠実さはたのもしい。

    東は泣き顔が性の引き金になった。果たしてそこは性欲だけだったのだろうか。身体が出す信号は強い。恋を自覚するに、13歳はあまりに幼い。大内は不登校になり、会えないまま時間が流れた。転がり込んできた大内は変化を始める。元カレでは起きなかったふたりの化学反応。公園でほどいた手を今度はつなぎにいく東が好きだ。手のひらの温度がゆっくり伝わっていく

    小指先生は、なにかしら人の弱い部分をすくい取ってくる。それは表紙の色合いのように温かくてホッとする。
  • 線上の犬

    墨田モト

    美形に獣に妖と日本男児
    ネタバレ
    2025年11月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 人知をこえた能力をもつ「特類種」が存在する世界。特類種は自治組織areas(エリアス)を構成して人間と共存している。
    1巻169頁 2巻171頁 3巻177頁 星☆3.9 女性ジャンル

    鬼科吸血属、狼属、鬼科天狗属とよりどりのイイ男がバンバン登場。法務省の松葉梅太郎(まつばうめたろう)と英国から来日した吸血属のネイトのバディもの。特類種と人間は治安維持のため協定を結んで活動している。ネイトは人間になりたい変わり者。松葉はある特類種を捜していた。

    3巻完結。面白い設定とキャラ達だった。ネイトは金髪碧眼の美形。松葉も少年の幼さを残す爽やかな青年。丁寧な描写で力がある作者さま、スイスイと読み進められる。締めくくりの着地がきれいなのに切なさも残った。

    登場人物が多くて良さが広がった分、松葉やネイトのバディとしての良さが薄まった感が。好みの話をすれば、松葉もネイトも最初の粗削りな部分がそぎ落とされて優等生な2人に。松葉は秩序に従順な公僕だし、ネイトは能力に無頓着。二人にもっと胸を鷲掴みにされてグッと引き寄せられたかった。ネイトの闇堕ちとか見たかったなぁ。

    魅力の余地がたっぷりあるからアニメになっても良さそう。それかゲームでもいいなぁ。プレーヤーになったらエリアス日本支部に凸して、頭領にあついファンレターを渡したい!ん~、結界で入れてもらえないか(笑
  • ぱちらぶマイパピー

    ぬめりけ

    恋で発電する宇宙人
    ネタバレ
    2025年11月18日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 宇宙人留学生が「こい」を体感するラブコメディー 183頁 星☆3.9
    初読み作家さま。美形留学生・有栖 海(ありすうみ)が宇宙からやってくる設定が面白い。しかも隣の席の雨宮 麻也(あまみやまや)に恋をする。最初のアプローチが平安時代の和歌(しぶーい!笑)即ぽちり。

    エレクニア星からきたハーフのような顔立ちの海は変身可能で電気がつくれる宇宙人。大量生産のために目をつけたのが、地球人の”レンアイ”だった。超合理主義の宇宙人には感情や表情筋がなく、恋の概念がない。「恋」を習得すればドキドキで発電できると調査にきたのだ。合理主義の対極にある非合理な恋。海は調査をしながら麻也のくるくる変化する表情や笑顔に発電がとまらない。

    舞台は高校。同級生は留学生と楽しそうだ。素直な海を友達として大切にしている。それも作品の良さのひとつ。そんな中、麻也は海の視線にときめいたり、優しさに惹かれていく。あの、笑顔を教えた時の海が指で引き上げた口角と嬉しそうな目元が、めちゃ可愛い!交際はハードルが高そうなふたり。性別以前に年齢とか格差とか異星人のセッXとか。その諸々を突き抜けてしまうのが恋。

    形のない感情を電気で表現するストーリー。パチパチパチ。ちょっと痺れた。

    ※これからハジけるぞ‼︎驚!カートが既にはじけてた笑
  • 愛しの獣人α様

    由元千子

    ご主人様はどっちだ
    ネタバレ
    2025年11月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 愛を知らない獣人αと孤独なリーマンΩの恋模様 192頁 星☆3.8

    妙齢の棚尾誠一郎(たなおせいいちろう)に10億円の宝くじが当たる。飲み会の帰り、酔った誠一郎は公園のベンチで寝ている獣人に話しかける。「一緒にメシでも食わないか」獣人はオオカミのαだった。

    肉を頬張る獣人に誠一郎は1億円を提示する。白い体毛の大きな体躯を持つ露明(ろあ)は粗暴な見た目。波乱な出だしのわりに裏腹な(ハードな濡れ場はご褒美さ)まっとうな獣人だった。露明の生い立ちは寂しい。その環境で穏やかな精神性と健全な態度に驚く。
    ひきかえ紳士そうにみえる誠一郎は”支配されたい”欲望を心奥底に潜ませていた。獣人をナンパして家に連れ込むアクティブさには、おやや?である。

    ほんわかした雰囲気でありながら妙に色気が入ってる天然キャラが登場する由元先生の作品。確かに誠一郎は優し気なおじさまキャラ。しかし「露明ともっとくっつきたい」とかいっちゃう?無自覚なの?それ上級者テクニックだよ。次第に露明が癒されいく。あれ?どっちがご主人様だった?

    結局のところ1億円はなんだったか。それは公園のお持ち帰りの金額?(思わずすごいプレイが繰り広げられるかと期待してしまった。すまん、爛れてた)年若の獣人αを囲いたかった?なら公園でなくてもよくないか?そうか、誠一郎が露明に話しかける勇気の額かも。美しくたくましい獣人とは一生縁がないと思っていたなら。

    そうして露明は誠一郎を見下ろしながら、眼差しで甘えていいぞといっている。甘やかしたいって愛だよね。これは勝ち組みおじさまの恋物語
  • 最低なのに好きな人

    伊藤にゅうし

    あいそが尽きるまで好きな人
    ネタバレ
    2025年11月13日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 無自覚なノンケとゲイを自覚し始めた高校生の恋のはじまり 171頁 星☆3.9

    同級生が気になる和谷(わや)は恋愛対象を確かめるため男と待ち合わせたところを、畠(はたけ)に助けられる。明るくて友達も多い、彼女もちの畠。和谷が教室で意識してしまうクラスメイトだった。

    その日をきっかけに遠い同級生が近い級友なる。彼女にメロメロな畠と恋を自覚する和谷。彼女にフラれて傷心の夜に和谷は畠を慰める。流される畠、振り向いてほしい和谷。曖昧な始まりが二人を友達でも恋人でもない関係に。

    ところが、畠は彼女とヨリを戻すので友達として以前のような関係にと(おおーい、それは)葛藤もなく報告する(あかんやつ)多分これが普通な男子高校生の心情。和谷は傷つく。落胆する心。畠の屈託のない言動をみれば、告白からはじまりにしなかった勇気のない自分に気づく。弱っている相手に付け入って期待したのは誰か。今さら間違いだったと後悔しても遅い。冷静で賢い和谷。

    ここにきて、畠が実は替えのきかない恋は未経験なのではと気づいた。和谷と離れて現れた感情にあせる畠がヘタレだがカッコイイ。身勝手で自己中な10代が本当にほしいものを見つける。なりふり構わず和谷に突き進む畠。わき目もふらないのが恋の本性。最低だけど可愛い人。これからは、きっとケンカしたり別れたりくっついたりしながら、でもずっと好きで続いていく二人に見えた。

    ※最後まで読んでもらえて嬉しいです。ありがとう。マンガライフを楽しみましょう。
  • ブルーマンデイ スペクター【合冊版(シーモア限定描き下ろし付)】

    瀧本羊子

    導きの夜鳴鶯は、誰か
    ネタバレ
    2025年11月9日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 廃墟の図書館に残された恋慕が暮れようとしている。173頁 星☆4.2 寄宿生活と青年たち。出会い、友情、秘密の楽園。オカルトとホラーとファンタジーが織り込まれた見事なストーリー

    格式ある寄宿学校は良家の子息が集まる場所。ルカは移民の混血児で虐めの標的になっていた。負けず嫌いな性格から学校では目立つ存在。同室のイアンは家柄、成績、素行の揃った、いつもルカを気遣ってくれる紳士な友人。ある月曜日にルカは立ち入り禁止の建物の鍵を手に入れる。取壊しが決まっている丘の上図書館でナイチンゲールが導いた先に、不思議な魅力をもつ卒業生オリバーが立っていた。彼はこの世にはなく、魂が図書館にとどまっていた。

    この物語は深くて濃い友情が底辺にある。イアンはルカに恋をしているが、それと同じくらい大事な友人。だから見えないオリバーの行く末まで案じてしまう。ルカはイアンの風評を心配する。相手をおもって行動する姿が胸に沁みてくる

    さて、終盤ルカを謎解きの世界へ案内するナイチンゲール。ルカに語り掛ける夜鳴鶯は誰なのかが気になった。最初は大人になったオリバーと思った(事の顛末を知っているので)しかし鳥の別名は墓場鳥、人の死を知らせるいわれもある。オリバーの死を誰に伝えにいったのか。それから鳥はオリバーの友として傍で慰めている。
    ここは深読みだが。想い人テオが前髪の奥から見せた瞳がすべてを理解しているような。なんだかとても温かいのに切なかった。

    夕暮れの建物に小夜啼鳥が甘くさえずっている。余韻がひろがる作品。

    ※余談だが、ナイチンゲールは墓場鳥・夜鳴鶯・小夜啼鳥(さよなきどり)の別名が多い。日本には生息していない。
    ラブはキスシーンのみ、枠外でちょっといたしているかも。
  • あなたを殺す旅

    浅井西

    スジ彫り龍のロードムービー
    ネタバレ
    2025年11月7日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 始末されるヤクザと復讐の右龍をもつ組合員のドラマ 上巻218頁 下巻216頁 星☆4.3

    桐井組の組長・清三が亡くなろうとしている。その息子・圭人は次期組長として、若頭の片岡錦司が気に入らない。目障りな人物は退場してもらおうと、旅先での始末を小田島漣に命令する。小田島は片岡に恨みがあった。

    ビンデージの車で車中泊をしながら、ひなびた港町で過ごす二人。それは映画のような舞台設定。片岡はチャラく見えて生粋のヤクザ。桐井圭人はサラブレッドやぐざ。小田島は親殺しを背負って社会からはみ出た組合員。上巻はストーリー重視。小田島の右腕には色のない龍がまきついている。7年前に左龍は息絶えていた。オープニングの海鳥の声が終盤でも聞こえてきそうな内容でまとまっている。

    そして下巻はエンタメ系の展開になっていて、キャラの深掘りが楽しめる。表情筋が固まっている小田島、人目をひく魅惑の片岡、整った顔立ちと格式をもった桐井が気に入ったら続きもウキウキしながら読める。反社版学園モノの雰囲気が続編への兆しである。

    読了して、ずっと気になっている頬の傷。7年前にはなかった。そして上巻で片岡が小田島に「こっちだって有名だろ」のセリフ。有名ってどんな噂なんだ!(確かに服従している相手はいたが)知りたい!その人たちを経由して片岡へたどり着いて、あの表情は一体なんだ!しかもペンダントにしのばせているが左龍とは堪らない。その小田島を理解している片岡が、はぁ憎い。

    上下巻ではエピソードがまだ語りきれてない作品。
  • 恋なんかするはずもない

    浅井西

    恋と数字と型破る男
    ネタバレ
    2025年11月5日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 経理×営業のリーマンBL 191頁 星☆3.9 男性の平均寿命は81歳、残りの人生約19000日。

    経理部の谷矢(たにや)は日々を穏やかに過ごすのが最重要事項。恋はアウティングされた経験からあきらめている。そんなある日、いつもは断る飲み会に参加する。隣の席に居たのは営業課主任の色部(いろべ)明るいパワーで話しかけてくる。なぜか谷矢の心の水面がざわめきたつ。

    色部は営業で話上手に聞き上手、気配りと邪気のない笑顔で男女問わず人気者。それが経理への精算金額をたびたび間違える。再提出の男。こいつは確信犯である(最初はうっかりだったか?)それは谷矢に話しかけるきっかけ欲しさと読んだ。だから飲み会でさりげなく話しかけ、いいなぁと思ったから追いかけた(チャンスを逃さないのは、さすが営業)最初のキスは、谷矢と目があったから。流れを作って掴む、見事である。正攻法では谷矢の壁は崩せない、「型破り」はできる男の条件かもしれない。

    恋の経験値も高い色部。ひきかえ谷矢は恋愛ウブ。キスをされて、”あれは事故だ”と結論づける。だが頭で冷静を装っても、心は別の方向へ行ってしまう。このチグハクな感じ!通勤電車からの景色がくっきり鮮明で眩しくなるシーンは、恋である。うっひゃぁぁぁ!とにやけてしまった。冒頭、人生19000日を静かに過ごそうとした人とは思えない。中盤、ちょっと当て馬が登場してヒヤッとするが(続編が出ると再登場するかなぁ。谷矢は華のある男が好みらしい)

    日々を型にはめて生きる谷矢、その型をうまくほぐした色部、笑顔でずっとくっついてくれそうである。
  • 闇金紳士のキケンな悪癖【単行本版/電子限定おまけ付き】

    さとう蜂子

    紳士と野良とムラムラ
    ネタバレ
    2025年11月3日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 歌舞伎町が舞台の金色ストーリー。193頁 星☆3.9 夜の繁華街、電話がくると二十歳の青年の商売が始まる。

    可愛い面立ちとテクでウリナンバーワンの桐生純也(きりゅうじゅんや)クズな元カレの連帯保証人になって借金を背負うことに。請求書をつきつけてきた恩田忍(おんだしのぶ)は回収の手段を選ばない。目をつけたのは桐生の顧客だった。

    反社役員か!と思うほどの恩田。スラリと高い身長にフルオーダーのスーツ。華のある美形を眼鏡で隠しているようにもみえる。それから無駄な会話をしない賢さ。歌舞伎町で会社を経営するだけあって情報通でぬかりがない。そのうえ体力お化けの絶倫野郎。どうやって這い上がってきたかのエピソードは知りたいところ。あれは相当数の女を泣かしたに違いない。借金の返済に応じてきた純也の金銭感覚にひかる才をみつける。

    今回はくせっ気の髪からのぞく若くてぷりぷりした肌を見せる純也の肢体にムラっとしてしまった(骨格に程よくついた筋肉がうまそう)また生意気な視線がきたら、そりゃぁムラがムラムラする。恩田がベットで激しく抱くのを、握りこぶしで白熱応援。中盤の恩田が「なんでこんなに具合がいいんだよ」といったら、”そこは!もっと詳細に詳しく!”とムラムラが叫ぶ。ストーリーそっちのけである(何をしているのだか)

    純也は2年でウリNo.1の地頭の良さである。相手を骨抜きにしていた売れっ子が、今度は恩田に骨抜きにされる。身体や若さだけでなく得意分野を見出し、自信を与えてくれる恩田。お金では贖えない人。歌舞伎町をさまよっていたボーイは、もう売りはしない。
  • アオハルリベンジ【電子限定おまけ付き】

    宝井さき

    夢見る作家と尽くす男
    ネタバレ
    2025年10月31日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 小説家の沢木蒼良(さわきそら)は中学時代、女子へ告白の度に「真嶋くんと付き合ってる」と惨敗の恨みがあった。真嶋竜輝(まじまたつき)は193㎝の男前。しかもガテン系で大工をしている。それが最近、女に貢いで金に困っているという噂がたっていた。仕返しのチャンスとばかりに沢木は真嶋に金をちらつかせる。186頁 星☆3.7

    ファンタジー作家はフラれた痛手で23歳の童貞処女。こじらせた性癖が”虐められる男子”のもだえる姿とは(悪くないセンスだけど)ドS気取りで真嶋と、いざホテルへ。ところが実地訓練が足りなかった。前立腺をいじるつもりが逆に虐められて真嶋に初めてをささげることに。鍛練された胸筋に抱かれた気持ちよさが恋へと変化する。沢木は惚れっぽかった。

    ちょっとワルな雰囲気に女は弱い。真嶋は俺様。だが本気の恋には純情くんだった。授業中、隣で沢木がブツブツとつぶやきながら空想ノートに書き込むのを聞くのが楽しみ。それで真剣な横顔が「可愛いな」とか思ってる。それなのに告白はあきらめて卒業。でも気になるから沢木の作品をこっそりチェック。いやぁ、数々の女子に迫れるのに、沢木には尽くす男かぁ。

    最後の展開でやってくる「貢がれる女」。謎な感じが良かっただけに、結末はキレて終わったのが惜しかった。真嶋を好きなはずなのにもったいない。そこはもう一押し、ひねりがほしかった。まぁ、女運がない真嶋と、女を取り逃がす沢木。なかなかなカップルかもしれない。
  • 【分冊版】Re:

    軟式こんにゃく

    せつなBL到来
    ネタバレ
    2025年10月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙の青と緑の色合いが目にとまる。新作で1話無料公開中とはお得♡ ん?うわぁ、軟式こんにゃく先生じゃないか!雰囲気が違う。作画がシャープでほのかに暗くて、始まりも哀愁がある。嫌な予感。(SNS検索中…)あ~切なBLだあぁ~。同級生もの。それに年の差がプラス。どうやら幼馴染は転校後に亡くなっている(それは涙腺を鷲掴みされるやつなんですけど…)うぅっ(すでに泣きが入る)
    同時進行の別作品はラブコメだから振れ幅大きいな。いっぱい読めて嬉しい。泣いて笑って感情が忙しいや、でもどっちも涙腺崩壊決定!
  • あの日のキスをもう一度【電子単行本版/限定特典まんが付き】

    ナナトなな

    なぐさめのキスと恋の扉
    ネタバレ
    2025年10月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の卒業から時を経て、再会した青春BL 167頁 星☆3.9

    三保凛太郎(みほ)と弘也海斗(ひろや)は高校の同級生。卒業式の日に告白のないキスをしたことで気持ちがすれ違ってしまう。それが同窓会で再会。弘也は引っ越し先を探す事情から三保へ同居の提案をする。
    人づきあいが苦手な三保は人生設計を立てて結婚をしたが計画通りにいかず離婚。弘也は人気者で交際相手に困ることなく結婚。しかし人生の岐路はやってくる。独身に戻った二人が10代の恋を見つめなおしていく。

    作画も綺麗で読みやすい。二人は過去に立ち戻ろうとしている。高校生の三保は恋をしていた。だが弘也にとってのキスは恋の扉にノック程度だったかなと。扉の向こうの三保がそこをあければ恋は始まったかもしれない。けど扉はひらかなかった。失恋までいかない、おさまりの悪い経験。弘也は行き場のない気持ちを抱えてたたずんでいたはず。
    三保は傷つけられる対象から遠ざかるか、逃げるかで生きてきた。そうすることがベストな解決策と思い込もうとしている。果たしてそうなのか。

    弘也は三保に同居を申し込んだとき、恋の扉をたたいていると感じた。再会後の弘也のアプローチは強い。仮住まいなら、座り心地のよいソファは必要ない。食事作りも一緒の時間を過ごすため。それでも告白をしないのは傷つきたくないから。誰だって傷つけられることに慣れたりはしない。

    激しい雨の夜、強く扉をたたく人物。ようやく恋の扉が動き出す。
  • ユキちゃん愛してる!

    千年藍乃

    長蛇の列にならんでみた。
    ネタバレ
    2025年10月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 表紙のインパクトもさることながら、レヴューの列があつい。初デビューなのに超長蛇の列。レヴュワー様の嬉々とした内容がキラキラしていて、気になり購入。
    そして賞味。もうもうもう、後ろに倒れる衝撃。脳天にじんわり、身体にさざ波のごとく広がる糖度。出だしのお出迎えは濃厚なはじまり。そしてうっとりと見つめる眼差しに恋のとろけ具合を感じた。

    ユキとハルの幼い思い出は素材となり、時間をかけて精製されていく。押し殺していた気持ちの過程があり、恋をゆっくりと研いでいく。それ繰り返すと滑らかで口溶けのいい糖ができあがる。純度の高さを保ちながら、コクがあるふたり。堪能しました。
    みがかれた甘さが売りの新規オープン。千年愛される賑わいをよろしくおたの申します。
  • 獣王陛下と砂かぶりの花嫁

    小石川あお

    赤毛のキツネと雪豹の瞳
    ネタバレ
    2025年10月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 秋が深まると外気温が冷えて、温かいものが恋しくなる。モフモフにくるまって、ハートを温めたい!癒されたい!そんなとき読み返すのがこちら。何度読んでも溜息と読後の幸福感でいっぱいになる。

    ストーリーは、不幸な生い立ちの”砂かぶり”こと紅藍(こうらん)が西の外れにある色とりどりの花咲く国で雪豹の王様とおとぎ話を繰り広げる。

    とてもよくできた構成。シルクロードの交易路に染料が絡んでいる。王様は神獣の血筋を持ち、綺麗な紋々をしょっている。全編とおして雪豹姿がメインだが、そちらの方が全然好み。立派な尻尾やネコ科独特のしなやかなラインが素晴らしくて、ツヤツヤしている毛並みも見事。紅藍との体格差も完璧。
    王様が人の姿になるときの変化も見どころのひとつ。それで出てきた姿がギリシャ神話から抜け出したかのような美青年。これが雪豹とマッチしてて黄色い奇声をあげる。
    設定はオメガバース。だけど、紅藍の生きざまや王様が国を建てていく内容が細かく根を張った木のように物語に根ざしている。番が前面でなくても抜群の面白さ。

    見どころ満載の作品、魅力のひとつに各話の扉絵がある。モチーフの紅花やクチナシの装飾も美しい。しかも各話の重要なイメージを一枚の絵に落とし込んでいて、ドラマチックさに心を揺さぶられてしまう。もう、スタンディングオベーション!拍手!
  • おれはブサメン-猫つづり-

    ゆくえ萌葱

    ボーダーレスな猫
    2025年10月22日
    ブサメン、それが彼の名前(ひどいネーミングセンスだ、失礼💦)131頁(結構なプレミア価格、購入したけどね)
    初登場は『睨めば恋』の1コマ目。高校を根城にしている野良の猫。BLに登場するが、ふぐりはメス限定で振り回したい彼。全力で雌を求めるが、世の現実は厳しい。なんなら人間の女子も大好きなのだがここでも面構えが重要らしい。とはいえ需要はちゃんとあった。その証拠がスピンオフの一冊に。

    ここまで出世する猫は初めて。『睨めば恋』ではニャーニャーゴロゴロ鳴いても主役になれば、吹き出しのセリフがもらえる。これがなかなか辛辣な奴だった。言い寄られても男はお断り。なんだけど美味しいご飯には抗えない。どこかユーモラスで憎めない愛嬌が持ち味。彼は餌をもとめて『睨めば恋』から『白刃と黒牡丹』を渡り歩いていく。作品をまたぐ猫も珍しい。自由気ままに読者を招いている。男どもにこよなく愛されるが、ラブは無い。ゆくえ作品の味変をになった稀有な猫。

    彼が野良から飼い猫になりたいかは分からない。それでも『猫と若頭』をご覧あれ、とびっきりの高待遇でお迎えする用意が整っている。ゆくえワールドがお気に召したらトッピングで是非。
  • 見栄張りあってすれ違い

    ゆくえ萌葱

    はじまりは一途な王子と危険な男
    ネタバレ
    2025年10月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 画業15周年のゆくえ先生♡時の流れの中、作品を購入できて幸せです。
    今回は、本棚にインしている先生のBLデビュー作。とても懐かしく(当時何度も読み返した)再読しました。恋に不器用な男たち、永遠のテーマのようでした。表題作×スピンオフが収録 168頁 アナログがデジタルへ移行し始めている。

    「冗談めかして一直線」は製菓会社の営業マン・田町実(たまちみのる)と広告代理店勤務の深川真司(ふかがわしんじ)のリーマンラブ。会社の担当としてコンビを組むことになった二人。深川は見た目もスマートで仕事もできる王子様キャラを売りにしている。好感度抜群の深川だが一途な片想いをして、なかなか諦めない。田町はどこにでもいる普通で真面目な26歳。そんな二人が距離を縮めていくコメディタッチのストーリー。

    「見え張りあってすれ違い」は深川の会社の後輩・桜坂健斗(さくらざかけんと)と人事で同期の山本(やまもと)の物語。表紙を飾っているのはこの二人。50頁程。深川×田町の当て馬で登場した桜坂の恋がはじまる内容になっている。王子様キャラの深川とは違うタイプ。遊び人でも気配りできる危険な男。山本は仕事人間。しかし桜坂が話しかけると、睨んだり無表情になったりと平常心が保てないウブな奴。

    令和デジタルのようなシャープな作風ではないが、ゆくえ先生の源流のタッチがあって口元がほころびる。どのCPもキスどまりでラブまでいかない(だけれども桜坂が恋とラブに必死な続編が出たら狂喜する)

    アナログだろうが、デジタルだろうが先生の描く男たちはカッコいい!そしてゆくえ先生に心から感謝を送りたい。大好きです!
  • ごめんねジェラシー

    さとう蜂子

    後輩からの言葉のないラブレター
    ネタバレ
    2025年10月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の先輩後輩、再会BL 176頁 星☆3.8 楽しくて夢中になった思い出。忘れたくても忘れられない時間。再会したら眠っていた気持ちが目を覚ます。

    アート系雑誌の仕事をしている岩崎裕貴は知り合いの合コンでかつての後輩・二階堂隼人と10年ぶりの再会をする。高校の美術部で一緒だった二人。将来の夢がアーティストだった岩崎。それが二階堂の才能を前に打ちのめされる。結局、卒業前にアーティストの夢をあきらめてしまう。

    岩崎は先輩としてカッコ良くいたいのに、心に羨望や嫉妬を抱えてしまう。みっともなくて情けない自分から逃げ出した。だけど社会人になれば才能の塊はそこかしこに居る。それなのに二階堂との軋轢がいつまでも抜けない棘のように刺さっている。忘れているようで忘れられない後輩。

    二階堂は岩崎の絵に惹かれて美術部に入部した。絵に夢中な先輩の視線を自分に向けてほしかったけど、叶わず。再会後は二階堂の焼け木杭に火がついた(付き合っていたわけではないが、片想いは強かった)高校時代の想いとその後の経験が燃料となり、ボウボウと燃える。忙しい合い間に、自宅に来る岩崎をモデルにデッサンを描く。そして一枚が終わるたびにそれを渡す(作中はサラ~ッと流れている)これが言葉のないラブレターのようでたまらない。

    荒削りのタッチだが、横顔や時折みせる視線に情熱があって感情が伝わってくる。攻めのカッコよさはマスト。そのうえで受けの表情もやわらかくて(攻めフィルターが入っているのか?)色気がチラチラするのが良かった。

    先輩の刺さった棘は二階堂の恋の業火が燃やしてしまった。二人で思う存分夢中になってほしい。
  • もっと甘えて、触って、いいですか?【電子限定特典付き】

    ぽっち

    イケメンをつかまえた地味オタク
    ネタバレ
    2025年10月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ガタイのよいイケメンとストーカーオタクとの遭難BL 142頁 読み放題で読了(1話は無料公開中)星☆3.8
    フォロー様のレビューで知った作者さま。 紹介をありがとうございます♪母川回帰の鮭に飛びつく熊のごとく漁っております!

    クールな見た目のモテ男・日宇聖馬(ひうしょうま)は恋愛がうまく続かない。またもフラれて、休日のハイキングデートが失恋を癒すソロ登山になってしまう。しかも道に迷ったあげく、出会った地味眼鏡男・大塔彬(だいとうあきら)とビバーク(野宿)することに。

    日宇の世話好きは言うに及ばず、髪を上げた面立ちの緊張しているビジネススタイルも素晴らしく。瞳にかかる前髪のカジュアルスタイルもこれまた良し。抜かりのない胸筋も完璧だ。その攻め要素満載が実は受けを夢見ていたなんて胸がワクワクする。極めつけは好きな相手に尽くしたい性分なのか楽しくもない腰をふりつづけてはフラれる、残念さが可愛い。

    大塔はオタク陰キャでコミュ障持ち(日宇相手だとメチャ饒舌なんで信憑性が…)眼鏡をはずしたらモサモサヘアがクルクル天パでキラキラワンコに変身するのはズルい。頁数が少なく、エピソードを盛りすぎて没入感が浅くなってしまうのはちょっともったいないな。個人的好みからすれば大塔が日宇に惹かれたエピソード(たった4コマで流さんで~)の方がほしかった。

    男前受けならぬ、イケメンが地味男(とはいえ、ジム通いに印税生活者で何気に優良物件)に贅沢三点責めでネコちゃんにされる作品。
  • 愛から一番遠い場所

    せきとう

    あつく、おもい愛の花
    ネタバレ
    2025年10月16日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 底なし愛のアルファと囚われたΩの物語 251頁 ひまわりはキク科の一年草。花言葉は「あなただけを見つめる」しかし、愛の花を育てるのは難しい。

    夏の東京、清掃会社で働く周参見人紀(すさみ とき)は猛暑でもハイネックを着ている。うなじに刻まれた番の痕を隠すために。その頃、反社の跡目を継いだ伊豆嶋世継(いずしま せつ)は番の人紀を迎えにやってくる。

    ときどき無性に息もできない苦しい愛に捕らわれた人を見たくなる。せきとう先生の作品は印象的な音から始まる。今回はせみ時雨。それに夏のむせ返るような暑さがプラスされていく。イントロは重く、決して明るい話にならないのを予感させる。
    早くに両親を亡くした人紀は田舎の祖母に引き取られた。対して世継は反社の庶子。埋められない孤独を互いに共有していたのかもしれない。

    無理やり番にされた高校時代を経て、人紀は田舎から逃げ出す。逃避生活は3年間。自由なはずの人紀に幸せの表情が見当たらない。縛りのない世界で働けば恋人を作ることもできるはず。それが今もって、人紀は疲れた顔をしている。それはΩのヒートがくるからか?それとも世継との関係が復活してしまう不安からか?そんな行き場のない感情に支配されているようにも見えた。

    世継が人紀のいない時間をどう過ごしていたのかは描かれていない。離れることで人紀を解放したかったのかもしれない。それは一度として人紀の心をゆだねてもらえなかったからか。ずっと世継は片想いのままだ。彼の愛は芽がでない。とうとう最後は命まで与えて底なしの愛が尽きていく。

    人紀は世継の黄色がかった薄茶の瞳をひまわりのようだと言った。東京から田舎へ戻り、思い出のひまわり畑を育てている。今度はどんな愛を誰と育てたいのだろう。
  • 究極×××のつくりかた 【電子限定特典付き】

    鰐淵

    お洒落なおしりのこいびと
    ネタバレ
    2025年10月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ひっさびさに笑いの涙がとまらなかった作品 254頁 星☆4.8(マイナスはウイットにとみすぎ)

    一人遊びが上手になった真山律(りつ)とオモチャ制作会社の伊吹秀のエッチなラブコメディー。ブログ(おしりのこいびと)が人気の”RE:2(リツ)”は泣き黒子も魅力の華奢な美人。そのリツに制作会社から商品開発協力の依頼が舞い込む。依頼主の伊吹は元気で上背も逞しいイケメン。彼は会社のヒット商品(究極のち〇ぽ)を目指していた。

    一番底にロマンティックなラブストーリーを敷き詰め、次に甘さのある麗しいキャラデザインをのせる。その上に香りと歯ごたえのギャクと下ネタが層をなして、最後は濃厚なエ〇がたっぷりかけられた、非常にけしからん物語。この笑いと恥ずかしネタの層があつくて、パンチと弾け具合がクセになるか、苦手になるかのギリギリを作者さまは挑戦していると読んだ。だいたいレヴューの星と星座を掛け合わすロマンに”弾つき”や”ご連珍”を混ぜ込むとはふとどきすぎる!(美味いけど)

    全年齢には推薦できないが、作者さまの味がクセになった方々はそのレヴューを嬉々として連ねている。ネタバレを覚悟して挑まれれば、隠し味も教えてもらえるかもしれない。

    さてこれは隠し味でもなんでもないが、これからのG-1レース、馬が疾走する度に作中の迷言が駆けていく💦例えが馬だけに上手い!あー、腹がイタイ。
  • 落とし子と従者の物語

    水花-suika-

    復讐と権力、そして後日談
    ネタバレ
    2025年10月8日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 鉄仮面従者と美人貴族の格差愛 1巻193頁 2巻185頁 耽美な感じが気になり購入 星☆3.8

    ユリウス・カイヴァントは領主の庶子。細い体の金髪碧眼がお人形のように整っている。奴隷として処刑寸前だった大男は「クスター」と名付けられ買い取られる
    さて、1巻はユリウスと叔父、父親と継母、そして兄・ルーカスのドロドロとした権力争いが舞台となっている。叔父はユリウスの母に恋をしていた。生き写しのユリウスを身代わりにしたうえで、金持ちの相手もさせている。幼年期のトラウマはユリウスの心を硬く鋭い刃物のようにしていく。醜い大男クスターは両親に奴隷として売られ、商品のように雇い主を転々としながら生きてきた

    ユリウスは兄・ルーカスに恋慕している。ルーカスも愛らしい弟を大切に。大人の事情が挟まなければ別の恋愛物語が誕生していたかもしれない。クスターは雇い主に人生を搾取されながら健気にしかも無垢な愛をもっていた。恋というよりは愛に限りなく近い安らぎ。この愛はこんこんと湧き出る泉のように溢れ出て、ユリウスの心を穏やかにしていく

    権力争いは1巻で終焉。きれいにまとまっている。コース料理に例えるとメインディッシュで満腹な状態。2巻はデザートで飲み物の苦みと酸味のある果物が甘いモノと一緒になっている。こちらの方が恋のきらめきがある

    終いは、お気に入りのシーン。ユリウスは客の相手をした夜、クスターを部屋に呼びキスをする。仮面をはずし口づける様が真っ白な恋の芽吹きのようで印象深かった。

    体格差と美醜の美しさが織りなす古典的な作品
  • 召喚獣士の学校

    秦和生

    水のキリアンとコーラ・スペランスキー
    ネタバレ
    2025年10月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 異空間の生き物を召喚できる能力をもつ少女の物語 ストーリーは未だ始まったばかり(なので星☆4)

    コーラ・スペランスキーは19歳のある日、故郷を出て遠い町の召喚獣士の学校へ入学する。新しい門出。しかしその旅たちを誰も見送ってくれることはなかった。閉鎖的な村は生き物を召喚できる人間を地下牢へ閉じ込めてしまう。理由はよく分からない。生まれた時から受け継がれている習慣。現に地下牢にはキリアンという男の子がいた。コーラもある時、召喚の紋章が体に現れた。

    現在4巻まで単行本が発行されている。2巻まできて、長編を覚悟した。物語はゆっくりと別世界をいま、生きているかのように進んでいく。コーラ・スペランスキーは世間をしらない少女。地下牢のキリアンはスラリとした身長で、憂いを帯びた美青年で現れる。コーラの担当ライナス・サクル先生は、つかみどころのないミステリアスなイケメンだ。獣士は体を媒体にしてシンクロした生き物を召喚できる。コーラは目のついた真水を呼び出して「キリアン」と名付けた。この変幻自在で命の象徴が召喚とは発想が面白い。作画は作りこみすぎず、バランスが整っていて召喚獣士ワールドへ誘ってくれる。

    作者さまは青年誌の経験もありで、そちらは中国歴史もの。同時に興味をひかれた。好きな作家さまが増えて、すてきな作品も増えて今日が一日楽しく終われそうだ。そして、コーラとキリアン、それにライナスの駆け引きも始まって、次の萌えも待っている。
  • マイ・リグレット

    砂糖野しおん

    心がはらぺこな少年たち
    ネタバレ
    2025年10月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ この作品を読み終わった時、夜の海を思い出した。風が波を作っている。1巻187頁 2巻205頁 星☆4.4

    高校生の水津竜丸(すいづたつまる)と勇仁(ゆうじん)大和(やまと)は落ちこぼれの悪そう3人組。スリにタバコにギャンブルと遊び放題。そんな3人が「ツケ」がきく食堂を見つけたことから始まる物語。『千田食堂』は高齢の男性が一人で切り盛りしている小さな定食屋。週5日、3人でたらふく食べて店をでる。もちろんお金は払わない。店主は「老いぼれたじじいが人に感謝されることなんて数少ないから」損得は抜きだと笑ってもてなしてくれる人。優しい店主には引きこもりの孫、千田涼介(せんだりょうすけ)がいた。勉強はできたが、社会性の成長が止まって大学卒業と同時に引きこもりになっていた。

    物語は竜丸と涼介の環境や心の変化を丁寧に描写している。竜丸は素直な気持ちを言えないひねくれもの。涼介は賢さから自分と向き合えない臆病者。その二人が言葉の暴力で殴りあう。手加減無しの応酬を何度も繰り返し、距離が縮まっていく。その方法じゃないと腹の中の重い感情は出られない仕掛けなのかもしれない。友情では歪だし、恋とも違う不思議な関係がふたりにできていく。

    2巻の終盤に涼介の母が竜丸に問いかける言葉が好きだ。物語が一気に吹き上がって高い空でふわりと散るようなクライマックス。とても哀しいのに、愛おしさと胸のしめつけが絡み合って視界がゆれてしまった。本を閉じたら、潮の少し重い空気と波の風がぬけて音だけが残った。

    KADOKAWAは年に何度か激安セールをする、どんな時でもいいので頁をめくりに来てほしいと願う作品。
  • スキルをなくした騎士様と俺

    もちた/朝陽天満

    一途な最強騎士と貧弱スキルの魔術師
    ネタバレ
    2025年10月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 最強騎士とショボイ魔術師のラブストーリー 208頁 星☆3.8

    ここは生を受けた人間が齢9歳で「スキル」を授かる世界。孤児出身のミルが得たのは『復活』というレアスキル。しかし微弱な魔力のため安い依頼料しか稼げないギリギリの生活。貧しさから体は細く小さい。魔術系が所属する魔術師協会に、アントレイト侯爵家の三男・シオンがやってくる。彼は『魔剣』のスキルを持ち、国内屈指の最強騎士で魔物討伐をする有名人。その重要スキルが突然使えなくなってしまった。土下座までして復活させたいと懇願してくる爽やかなイケメンに戸惑うミル

    まず、シオンの凱旋パレードの凛々しいこと。貴族で『魔剣』のレアスキルを持ち、超がつく真面目な優等生。なんと恋愛初心者。ミルの前では嬉しそうな笑顔を向け、悩みを打ち明け、落ち込んだりする末っ子の可愛さが全開だ。しかも根底は束縛系溺愛人種。好きになったら一直線。ミルを誰にも取られたくないと即日、父親に挨拶にいく行動力、いやはや展開が早い。
    対してミルは可哀そうなくらいの底辺ぶり。スキルはレアだったけど、しなびた野菜をちょっと復活させる程度の現実に本人が一番失望している。シオン邸でお風呂を初めて見るシーンは、小説もコミックもさらりと流されている。けれども、ミルの生きてきた背景が見えて少し淋しくなった。貧困からくる無教養、不衛生、栄養不足、そして周囲の無関心。その中で身の丈にあった生き方を選ぼうとする姿が可愛かった。

    シオンはミルの良さを見つけていく。ミルのスキルは大事にされなかったことで伸びなかったのかな。これからはたくさん愛されて、魔力は爆上がりになると思うのは考えすぎか?小説はミルの背景を丁寧に描写しているし。コミックはアントレイト家の面々が登場して盛り上がっている。
  • アバの福音【コミックス版】

    河尻

    堅固な警部を手玉にとった神父
    ネタバレ
    2025年9月29日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 訳ありげな聖職者と有能な警部の事件BL 244頁 星☆4.0 「真夜中ドライバーズハイ」の平は都心を離れ乱平と暮らしている。眼光鋭い澤尾浩司(さわおこうじ)警部が再び登場。以外な展開が待っていた。

    秋が深まる東京。汚職事件が行き詰まりをみせる中、捜査線上にうかんできた参考人の神父・アバ。銀髪碧眼、日本在住26年。52歳。取調室の聴取にも終始落ち着いて、かなりあやしい雰囲気。そんなアバは澤尾に犯人の情報提供の代わりに”ひと時の愛”を過ごす条件を出した。契約のキスで交渉は成立。だが澤尾は不感症持ちだった。

    ドライバーズハイの澤尾は優秀な警察官。その彼をアバは翻弄していく。精悍な顔立ち、柔和な物腰に服の脱がし方まで大人の余裕が見える。この男、来日するまでの経歴が不明だ。身体の紋もんや意味あり気な視線に釘付けになる。なんなんだ、これも伏線か?物語の鍵を握る危険な微笑みの聖職者。

    しかも澤尾の機能停止の体と抑圧した心を解放させる。緊張を解き、「人の温もりはいいものだね」と胸にほほをよせ、ゆっくり体温をあわせていくテクニックの上手さ。仕事出来堅物が気持ちよさに感じていく様が丁寧に描かれている。澤尾がトロけて赤面する堕ち具合に思わず拍手がでた。

    汚職事件は政界まで広がり、アバを巻き込んだまま調書の量がふくらんでいく。事件に関与が認められたら起訴は免れない。教会の上でどんよりとした雲から小さな雪が降り始めた。クリスマスが目前に迫っている。

    アバ・J・グレイはダークな雰囲気をまとったまま終了。魅惑的な眼差しで「楽しみは取っておいた方がいいだろう?」と言っている。作者さまの脳内で次の出待ちをしているかもしれない。
  • 真夜中ドライバーズハイ【電子限定漫画付き】

    河尻

    深夜ドライブで人生が変わった男
    ネタバレ
    2025年9月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 厄介な客とタクシードライバーの逃避行BL 209頁 星☆4.0 しょっぱなからアクセルを踏み込んだ始まり。

    東京渋谷、平日の夜、2月なのに外は強い雨が降っている。タクシー運転手・綱吉平(たいら)は乗り込んできた客に思わず振り返る。金髪、ピアス、薄いTシャツとパンツにスニーカーのそいつは「美瑛のカシワの木(北海道の観光名所)まで」と目的地を告げる。濡れたパンツについた危険な匂いが普通の客ではないことを知らせていた。

    波乱のオープニング。青年誌風のタッチでスッキリとした男たち。それに丁寧な情景描写で視界良好。乱平(らんぺい)と名乗る若者は条件つきで目的地へ乗車することになる。乱平は若くて綺麗な顔立ち。普段は大人びてみえるが、エ○中の表情が素の幼さや、熱のこもった視線でなんともズルい。平凡なサラリーマンが手練れの誘惑に抗えるはずもなく、あっという間に陥落。気持ちいいのが激しい動きで伝わってくる。

    ほどなく乱平を追いかけてくる怪しい男2人。逃避行に命の危険もプラスされ、事態はどんどん暗くなっていく。ひきかえ平と乱平の繋がりは深くなる。それはストックホルム症候群のような心理にも見える。しかし平の人目から離れる旅館を選び、根回しをするあたりは極限状況に似つかわしくない冷静さ。非凡な真のカッコよさが見える。とうとう犯罪の正体を携えて刑事・澤尾(さわお)が登場。役者が揃うと物語がチェンジアップしていく。

    深夜ドラマで観たいシナリオ。数日間の逃避行で人生が変わった平。そのきっかけになった乱平。口先だけの男も多いが、平の言葉選びは秀逸。男の誠が愛になる。

    余談だが、今年の初夏にフェリーで北海道へ。苫小牧港から広大な農地を抜けて真っ直ぐな道を走る。ハイになれる時間、また行きたくなった。
  • 大好き 山田さん

    ハラキ

    壁の手がたくした愛
    ネタバレ
    2025年9月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 「壁の手 山田さん」の続編。83頁 星☆4.0 壁の手が「山田さとし」を連れてきた。運命と恋が繋がっていく。

    研修先の寮で出会った壁の手と中土涼。彼は左手を壁から解放した。修理の終わった壁は無言だ。喪失感と失恋の傷みで切ない涼。そこへ義手をつけた「山田さとし」本体がやってくる。初めて会う二人。涼は山田がこの世にはいないと思っていた。

    20年ぶりに再会できた左手のお礼に訪問した山田さとし。やんちゃな左手より大人の雰囲気で、現場仕事で鍛えた体は大きかった。ノンケの山田だが、涼を見ると”何か”に支配されて「自分じゃない感覚」を持つ。壁の手が残した恋のかけらを拾ったのか、それとも涼の笑顔や熱量に心がざわめいているのか。とても憎い演出。

    山田に抱きつく涼もたまらなく可愛い。失った壁の手が戻ってきた感覚だろう。笑顔が伝える気持ち、声で表現できる幸せ。なにより全身で存在を確かめられる喜び。いなくなった左手が、山田さとし本体へ想いを託すようにして始まる恋とはロマンティック。幸せになれる読後感。

    最後は二人が繰り広げる高純度のラブ!白抜きなし、修正無しの世界は集中力マックスでどっぷり浸れる。素晴らしい。ありがとうハラキ先生!

    ※読み放題でも、(内容だけなら)p〇xivでも読める。
  • 壁の手 山田さん

    ハラキ

    おかしな壁の手と不思議な恋
    ネタバレ
    2025年9月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 壁に突き出た左手と新社会人のラブコメBL 95頁 星☆4.0 前から「壁の手」の奇妙さに引っかかっていた作品。果たして手にラブができるのか。

    中土涼(りょう)は研修のため寮暮らしを始めた新入社員。ところがその部屋の壁には左手が生えていた。不思議なことに涼以外には見えず、写真にも写らない。最初こそ気味悪がっていたが、「山田さとし、26歳、おとめ座」と指談で会話ができると、人間味が増して共同生活は日常に変化していく。

    この物語の面白さは、左手と”明るいおしゃべり”で同居が始まること。20年前に建物に取り残された事情を語るが悲壮感はない。それどころか朝は起こすし、毎日の会話で楽しくなっていく。涼はお酒を飲むと、変なテンションになってしまうが憎めない若者。なれない社会人生活、目まぐるしい日々、しかし疲れて帰っても部屋では大きな左手が待ってくれている。

    なんとも不思議な展開をみせる物語。ふと、顔も声もない相手に惹かれるのかと疑問がよぎる。けれども見た目だけが好きになる要素だろうか。握手やハグで手が言葉にならない感情を伝える、そのぬくもりは誰もが知っている。じゃぁトキメキがどこから来るのか。

    ホラーではない、妖しい壁の手と日常をすごしたハートフルコメディ。20年の時を経て左手はようやく壁から出る。恋をするために。

    ※読み放題なら自由に読める。ちなみに内容だけならpix〇vでも---そして「大好き 山田さん」へと続いていく。
  • 君と溺れるエデンの夜明け【単行本版】

    Jbn

    囚われのセンチネルを導くガイド
    ネタバレ
    2025年9月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ センチネルバースの入門書 198頁 星☆3.9 はぐれたセンチネルとガイドの逃避行。

    物語は幼馴染の二人が再会し、覚醒した能力と向き合いながら生きる道を模索していく展開になっている。
    人口の数%の『センチネル』は五感もしくは一部が通常より発達した能力者。その情報量が膨大なため、制御したり回復のケアが必要になる。それを担えるのが『ガイド』で、やはり数が少ない。共感能力と読心でセンチネルの生命線だ。

    新しいと思っていたセンチネルの世界。発展途上なのかそれとも既に成長が進んでいるのか。作者さまによる設定があって面白い。
    槇賜郎(しろう)ことシロはセンチネルでありながら能力に苦しんでいる。家出からヤバめの金稼ぎで生きる日々。心の安寧がない未来に疲れていたのかもしれない。そんなときに幼馴染の康代(こうだい)が現れた。普通の高校生をしている真っ直ぐな康代。しかも目の前でガイドに覚醒したことで、肉体の苦しみをケアしてくれるという。シロの虚無の心に灯がともり始める。

    康代がめちゃいい奴で、大事な人を真剣に守りにくる。シロのケアをする度に流れ込んでくる「一緒にいたい」気持ち。センチネルが依存するのは肉体の苦痛だけじゃないのも伝わる。ガイドの力量は強靭な精神力がないと始まらない。そういえば、康代は覚醒した不安もシロの仲間にもひるんでいなかった。ガイドというよりナイトみたいだ。特別な能力を搾取するのは裏か表か。どちらにしても強い絆がふたりの希望となるのは間違いない。

    逃避行で追い込まれた二人。康代がシロを守るための誓いがラストでなんとも憎い。センチネルバースを分かりやすい表現で見せてくれる入門の1冊。
  • 囚愛の明け烏 -センチネルバース-【単行本版】

    ポケラふじ子

    金のセンチネルと導きのつがい
    ネタバレ
    2025年9月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ センチネルバースの進化 272頁 星☆4.5 大本命。1話の表紙が印象的で即買い。驚くほどの要素が濃縮されてガツガツと読む。最後の裏表紙で、ムンクになった。盛りこぼれたネタや掘り下げ不足のエピソードに、頁がまったく全然足りなさすぎる(涙泣)

    人口の数%の『センチネル』と『ガイド』が主軸のストーリー。元刑事でセンチネルの吉桐(よしきり)は探偵事務所を経営している。『センチネル』は超人的な五感を持つ。しかし膨大な情報に疲弊しやすく、能力を使う時は無防備。通常はシールドで精神を防御しているが、能力の使い過ぎでゾーンと呼ばれる精神錯乱や生命危機に陥る。この使いすぎた能力を回復・癒す特異体質の『ガイド』はセンチネルの命綱だ。吉桐と同居をしている渡里(わたり)は幼い時にガイドに覚醒した。ガイドのケアは軽いタッチから粘膜接触まであり、近くなるほど効果が強くなる。センチネルの活躍の影になるガイドに渡里は屈辱的な感情がぬぐえなかった。

    吉桐は金髪の美形。覚醒後のスピリットアニマルは獅子と鮫のキメラ。そのために相性の良いガイドは希少価値になる。吉桐は渡里に好意をよせる。だが渡里は施設での生活、不特定多数と接触するケアの息苦しさから吉桐の気持ちを無視し続ける。この展開の上に犯罪がらみの調査や連続殺人が起きていく。特に連続殺人犯を追い詰めていくネット攻防はハリウッド映画なみの展開だ。専門用語が並んでもスピード感と緊張感が伝わってくる。ここだけで単行本を作れる勢いがある。ハッカー集団「八咫烏(ヤタガラス)」の活躍が数ページの内容ってのがなんとも口惜しい。

    一番の見どころは6/7話で、キメラの想いが暴走して大爆発する。都会の見事なシーンはタイトルや広告に使ってもいい出来映え。作画だけでなくストーリーも盛り上がって最高潮に達している。固唾をのんでハラハラしてほしい。

    毎回レヴューは苦しむけれど、ポケラ先生の技量が高次元すぎて唸りながら書く結果に。センチネルは犯罪に巻き込まれる内容が多め。ストーリー重視の方に特におススメ。展開重視はラブが減っちゃうとの、お嘆きは今作にはご無用。腐人のハートに刺さるおもてなしが用意されている。文句なしの良作。
  • シンクロニシティ・オブセッション

    楢崎ねねこ

    脱皮したヘビの鷹への愛
    ネタバレ
    2025年9月21日
    このレビューはネタバレを含みます▼ センチネルバースの内面 213頁 星☆3.9 舞台は日本の政府特務機関。超感覚を持つ者と導く者の絆と活躍を描く物語

    全人口の数%の『センチネル』は五感が超人的に発達した能力者。覚醒するとスピリットアニマルが魂の姿で現れる。天川憲史(けんし)は五感全てが覚醒した希少な最高ランク。鷹の眼差しで獲物を逃さない。その能力制御やメンタルケアをできるのが『ガイド』だ。センチネルもガイドも高い能力の代償は精神錯乱やゾーンアウトの命の危険と隣り合わせ。天川はどんなに疲弊しても回復のガイディングを拒んでいた。そこへ同級生の黒井がアメリカから戻ってくる。黒井は蛇のアニマルをもつガイドだった。

    この作品はセンチネルバースの精神も丁寧に展開してくれている。10代で覚醒した天川が未熟さから黒井の魂のシールドを壊してしまう。精神の最後の砦を破壊されると再構築に時間がかかる。黒井は半年を要した。目覚めた黒井に待っていたのはガイドを拒否する天川。一度の失敗で能力差の烙印が黒井には残る。その辛さや口惜しさで深く傷ついたはずだ。それでも天川をガイドしたい黒井の本気度が枯れることはなかった。アメリカ行きは対等の力を得て、隣に立つ覚悟がみえる。そこに長い未来を見据えた、男の愛を感じる。諦めるのも愛なら死が目前でも離さない愛もある。蛇は知恵の象徴をもつ。賢く静かに天川へ巻き付いていく。脱皮して大きく成長した蛇は鷹とも対等になれるだろう。

    最後に印をみて「カドゥケウス」を連想した。ギリシャ神話の医神がもつ杖なのだが翼と蛇が描かれている。魂の融合率の高さは歴史からも読み取れそうだ。ここはセンチネルバースの美しさ。共依存よりは互いの運命を背負う誓いのシンボルが刻まれていく。
  • Sentinel Loverse 【電子限定特典付き】

    やん

    孤独な超人と呪われた梟
    ネタバレ
    2025年9月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ センチネルバースの世界 上巻189頁 下巻189頁 星☆4.0興味深い世界観。海外ドラマのようなドラマティックな始まり

    シカゴのスラム街で野良犬のように暮らしていたイツキ。全人類の0.05%の『センチネル』のイツキは第六感で「風」を操る能力が眠っていた。五感の能力を使いすぎると制御不能で暴走する身体。イツキは激しい頭痛と強い匂い、うるさく響く音、刺さるような光に悩まされ続けていた。

    センチネルの能力を回復させるバランサー『ガイド』もその人口は少ない。ガイドの癒しは直接接触で行われる。もちろんセ/クスが回復度が高い。アルバは触れるだけでガイディングができる特殊なタイプ。触れた指先からの視覚効果で癒し度がわかりやすい。この物語は犯罪、戦争、兵器、国家機密にアクションと特殊能力が備わった運命の苦悩も盛り込まれている。

    やん先生の筋肉イケオジの完成度は高い。アルバは眼鏡をかけたインテリ風だが、火傷を負う前は精悍な顔つきで二度おいしい。しかも火傷痕は呪いのようで、独特の色気になっている。スピリットアニマルのフクロウ?もアルバの雰囲気にぴたったり。静かで獰猛。賢くて冷徹。
    対してイツキは日系、やせ細った孤独な野犬。最初こそ手をかけるが、体の苦痛から解放された後のアルバへの懐き方が切ない。「あんたじゃなきゃ駄目なんだよ」と伝えても他のガイドを試せと言われたり、距離を置かれたり。それでも、イツキはアルバ以外は欲しがらない。ただひたすら訓練にまい進しながら、専属ガイドは1人だけと決めている。一途な忠誠と献身。

    2巻はアルバと炎のセンチネルの過去が展開される。狂犬のような奴で孤独なセンチネルだった。超人的な能力も戦場以外では脅威になる。アルバに心を寄せたが負傷して炎と共になくなってしまう。センチネルはガイドに依存しやすい。とかくセンチネルの特異体質が際立つが社会的にはガイドの方が優位だ。それに権力者はそのどちらも自由にはしない。

    アルバは読書と植物を愛する男。ガイドになったことで静かな時間は少ない。だからこそ穏やかな時間を過ごしてほしい。イツキがその傍らで撫でてもらうのを待っている。もう寂しい野良はいない。
  • 九尾狐の花嫁

    占地

    生贄までの5日間
    ネタバレ
    2025年9月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 九尾狐と名士の青年絶倫BL 206頁 星☆4.0

    名家の嫡子だった羅仙(らせん)は、伝説の嫁として捨てられる。羅仙の先祖は生贄を捧げて街を繁栄させていた。九尾狐は50年目のご馳走をお腹を空かして待っていた。

    長髪の美丈夫、九尾狐の登場の美しいこと。作者さまの画力は確か。空飛ぶ馬車も優雅に中華の世界観が丁寧に描きこまれている。
    羅仙は死を前にして逞しかった。なんと生贄の猶予を5日間もらえることになる。本来の賢さから九尾狐を丸め込み、一緒に都見物に出かけたり、名所めぐりをしたり。そうして心から可笑しくて笑った時、捨てられた孤独と思い出が涙に変わる。

    九尾狐は四千歳の長寿。仲間は登場しない。長い時間を過ごす慰みはなんだろう。50年おきに訪れる人間は九尾狐に興味をもって会話をしただろうか。名前を尋ねた者はいなかったのか。彼が羅仙から呼び名をつけられた時の「嫌いではない」は眩しかった。名はありふれていて見過しがち。存在が個になる瞬間。九尾狐の表情も美しさ以上の魅力が増していく。

    表紙帯の絶倫は、九尾狐が空腹から閨事(ねやごと)をしつこく始めてしまう。そこは、紛れもない絶倫ぶり。なのだが初対面時に羅仙は妖術で性に目覚める。そもそも生贄なら妖術は不要だ。九尾狐が求めていたのは空腹の渇きだけではなかったのかもしれない。

    実力のある作者さま、他の作品もレヴューしてみたい。
  • 逃避行じゃあるまいし【単行本版】

    タクアン

    磨きのかかった男たち
    ネタバレ
    2025年9月15日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 壮年期の男性を見た目そのままに、恋の揺れを描いたオムニバス3篇 195頁 星☆4.2

    表題作はリーマンと元警察官の追いかけっこラブ。斧原学(まなぶ)は恋愛のピーク時に逃避してしまう習性がやめられない。毎回手軽に始めて別れ話もせず連絡を絶ってしまう。実際今までの相手は深追いしてこなかった。ところが知野半治(はんじ)は「逃げられたら、なんか燃える」と意外な反応を示す。そんな大人の恋の駆け引き。学の入念な逃避を軽々こえて鋭い嗅覚で居場所を突き止める半治の狩猟と執着がすごく刺さった。しかも学を叱責しない冷静さ(お仕置きはするけど)には驚いた。ちょうどピッタリのピースなカップル。

    2作目は、大阪と東京の遠距離恋愛物語。ずっと仲良しのふたりは、青年期を少し抜けた年ごろ。上京した巽准市(じゅんいち)と大阪にいる南乃雄太郎(ゆうたろう)。離れ離れになって1年。物理的距離の寂しさを我慢していた二人。お酒が入って、会えない時間と大阪の思い出が混ざっての告白タイム。どちらも勝気で本音が言い出せなかった初々しさ。大阪カップルは会話もテンポよくてマジでいい。

    3作目は、野獣に乙女。上司と部下のリーマンラブ。本能丸出しの付き合いかと思えば、結構純愛系。18頁。おじさんが恥ずかしさで身悶えしている場面がリアルすぎて叫んだ。

    キラキラ、ツルツルの美男子系も大好き。しかしオジサンには時間をかけた磨きがにじむもの。お米を磨く日本酒に例えてみる。表題作は本醸造の純米酒、お米に酵母がほどよくなじんでいる。スッキリにもできるし芳醇にも傾けられるので温冷どちらもOK。2作目は、生原酒、フレッシュで酵母の酸味があり、米とお水の良さが舌に伝わる。お酒の温度管理が一番難しい、冷酒がおすすめ。3作目は、古酒か大吟醸。古酒はまろやかさが段違い、色も楽しめる。大吟醸は雑味を排除した極み。どちらも玄人が好む分野。全部1冊にはいっている。おじさん達の恋をほどよく嗜んでほしい。
  • 満員電車と君

    小指

    置き去りの恋と優しい男
    ネタバレ
    2025年9月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 痴かんプレイを強要する大学生とお人好しリーマンBL 186頁星☆4.0

    満員電車で通勤する真山善明は車内で女子高生から胸をさわる行為を強制される。次の日、話しかけてきたのは大学生のつかさだった。
    表紙の暗い色使いで明るい展開は予想しにくい。真山をつかさは「おじさん」と呼ぶ(真山は29歳なんだけどね)証拠写真をタテにつかさはプレイを強要する。真山には思わぬ災難。本来のお人好しの性格や自己肯定感の低さも相まってズルズルと電車に乗り続けてしまう。ここには真山の優しさもあるが、実は”強く求められることで満たされる喜び”も垣間見えてくる。

    物語は、つかさの”プレイの元凶”に及ぶ、中学時代の好きな先生からのリクエスト。背徳感と快楽のセットは彼の心にトラウマを残した。周囲の大人は時間が解決すると無関心。成長とともに抑えられない欲求はつかさを制服姿へ変えてしまう。後ろから忍び寄ってくる大人たち。匿名性が高いプレイで快楽を発散する大人は多い。その対象はいつだって弱者だ。つかさは自分の性癖を抱えたまま寂しさで電車に乗る。寂しいと言えばよかったのだろうか。つかさは10代の不安定な少年なのに。満員電車の閉塞感が重なってしまう。

    ふと、つかさが後ろからのプレイを強要していないことに気付いた。真山と向き合い、見上げる表情に求めているものがにじみ出ている。微笑む瞳に可愛さあり。しかも書下ろしのつかさはメンタル強の発言だ。とても心強い。

    欲望がもつ不快感を痴かんプレイで再現しながら、置き去りにされた恋を優しい男が拾う話で胸がなでおろせた作品。

    ※小指先生の作品レビューが楽しくて連投してしまった※
  • そんなに俺が悪いのか

    小指

    ナルシズムリーマンの息子事情
    ネタバレ
    2025年9月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ イケないリーマンと奔放な美容師の再生BL 196頁 星☆4.0

    三十路半ばの雪平冬司(とうじ)は結婚してもセ/クスが上手くできない。そのうちAVでないと発散できなくなり、夫婦関係が冷えていく。ある日、実姉が経営している美容室に立ち寄ると、そこには見習いの南月練(れん)がいた。

    序盤から冬司の重症具合にクラクラした。駐車場でAV鑑賞するわ、初対面の練に奉仕されて、誘惑と快楽の耐性がないのも驚きだった。冬司に限ったことではないが、周囲の意向を重視して自己決断を放棄したツケはかなり大きい。こいつは一度大きくすると手がつけられない。冬司のツケは妻の不倫まで拡大していく。

    妻は不倫公認の結婚生活を提示してくる。なかなかの修羅場だが、現状把握ができている賢い女だ。社会は女性の不倫に非常に厳しい。冬司視点だとエリートサラリーマンが妻に裏切られる構造にみえるが、苦悩にひたるナルシズムが見え隠れしていて、どうにも気持ちがよくない。妻が家を出て行って、直ぐ連絡もしないし、探したりもしない。その上、妻のいない家に練を入れている。言葉と行動が裏腹で、なんともスッキリしない。作者がこのヌラヌラべたべたする読後感を狙っていたなら、見事にはまってしまった。

    南月練は貞操観念以外にいろいろゆるくてトラブルが付いて回る問題児。それでも冬司がタイプなので一生懸命に愛情を向けている。愛を欲しがる子供のようにも見えて、哀しみと可愛さがある。

    人生のツケは借金のように一括返済ができない。ツケの払い先は冬司自身だ。ちょっとずつ、自分を満たすだけで晴れやかな笑顔になれる。

    作者さまは、泥へ足を取られたり、汚れたりする人物が上手い。そこがいいと思っている。
  • 箱庭のむこう

    望月名緒子

    あこがれと恋の源流
    ネタバレ
    2025年9月9日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 義兄弟の恋物語 コミックス 158頁 星☆4.0
    初読み作家さま、表紙の好みでこちらへレヴュー。

    親の再婚で義兄弟になった二人、母親の連れ子・恭弥と父親の連れ子・俊。11歳と7歳の出会い。とても仲の良い兄弟で家族は普通に過ごしていくはずだった。兄・恭弥は家族の自慢。容姿も勉強も音楽も欠点がないのが欠点と思われるぐらいの出来の良さ。比べて俊はすべてが凡庸。どこへいっても兄と比較されてしまう。

    物語は弟・俊の視点で進んでいく。優秀な兄と普通な弟の兄弟喧嘩と見える出来事も”兄からの告白”が隠されている。10代の俊は困惑と葛藤で揺れている。しかも完璧だと信じていた兄からの好意に逃げ出したくもなる。まして誰にも相談できない。結局17歳の夏に兄が家を出る形で兄弟はこじれたまま。

    作風は独特のタッチでほどよく抜けていて、余白に想像力が入りやすい。情景やズームアウトする引きの視点と映りこむ生活感が秀逸。兄・恭弥の表情は恋の切なさよりは苦悩に近い。だから短期留学の前の告白は唐突ではなく、心の隙間にこぼれ出た本音。これは「オルペウスの愛」と重ねた。オルペウスは妻を黄泉の国から連れ出し、あと一歩のところで一瞬の隙ができ、最愛の妻を永遠に失う結末になっている。

    読了後に恋の源流は俊ではないかと感じた。冒頭、少年の俊は恭弥の声や瞳に魅せられている。憧れとも恋ともつかない感情を日々伝えられる恭弥。時と共に完璧な兄ではなく恭弥自身を受け入れて欲しくなったのが恋の始まりかもしれない。
    最後にこじれた関係は3年の月日が必要となり決着へ向かう。詩の名手オルペウスは妻以外の女性を愛せなかったといわれている、一途というのがまたいい。
  • クソ野郎、恋を知る【電子限定描き下ろし付き】

    新藤伊菜

    漫画ヲタクと恋のデッサン
    ネタバレ
    2025年9月7日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 芽が出ない漫画家と美術教室講師のラブコメディー 182頁 星☆4.0

    29歳と半年の吉田光(ヒカル)は少年漫画の連載を夢見ているが次作が出せない。描く努力が認めてもらえないと、吐いた弱音を美術教室の足立先生は一蹴する。どうしようもなくあふれ出る涙にうずくまった時、先生の手は背中をさすってくれる。人生の底で拾った本音は「描かない方がもっと苦しい」だった

    デッサン教室の先生は若くて誰にでも優しい美大出身のイケメン。ヒカルは先生がまぶしくて苦手だ。しかし女性誌からのオファーで恋愛漫画を描くことに。恋愛初心者のヒカルは先生に助けを求める。始まりは漫画を描く取材だった。
    それなのに先生のスケッチや片想いの相手の話から好きがドンドン止められなくなっていく。

    ヒカルは天然で図太くて、素直でちょっと卑屈。そんなヒカルが恋をする。糸目の地味顔で不様な自分は「先生に好きになってもらえない」と気づいた時の切なさ。それはザラリとした苦さとはじけるトキメキが一度にきて嬉しいような悲しい気持ち。恋の素描が形になって漫画は輝いていく。終盤に向かう連載と共に成長していくヒカルは今度は先生の力になりたいと思うようになる。

    人生が下向きになった時どんな生き方をしたいだろう。そんなことを考えた。ラブだけでなくコメディーだけでもなくヒカルの本音で力がもらえる作品。
  • エビス映造所で会いましょう。

    にしゅ~

    あふれる好きが面白い
    ネタバレ
    2025年9月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ アニメ制作現場のお仕事BL。1巻76頁 2巻66頁(同人作品にてお高め、まだ完結していない。読みホの方へはおススメする)

    「エビス映造所」で原画マンとして働く猪島晃は、制作進行の鹿野圭吾に真顔で告白をされている。挨拶のように”好きです”を混ぜ込む告白に猪島は冗談と本気の距離感で戸惑う。

    作画はシンプルな線で読みやすい。制作会社の専門用語や業務の流れも詳しく、現場のリアル感が伝わる。会社のサブキャラ達は個性もたっていて掛け合いが軽妙。仕事も恋もハードな部分を重くせずいい感じなのだ。
    猪島は相手の悩みや弱さに寄り添う優しさがある。描く仕事の苦しさを乗り越えた強さもある。見た目地味そうだがTシャツからのぞく筋肉は見逃せない。鹿野は丁寧な仕事で社内でも人気がある。細身だが現場を駆け回るから体力もありそうだ。猪島への好きを会話に差し込むセンスは抜群にいい。物語の着地点は不明だが、完結したら再レビューしたい!星☆は期待値4.0
    (巻頭の告白シーンで間違い探しをしている。鹿野の髪型とか服とか。猪島の微妙な角度も)
  • 黒き獣と夜の花【シーモア限定描き下ろし付き】【コミックス版】

    丸田ザール

    獣の影に白い花
    ネタバレ
    2025年9月3日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 反社会組織と花屋の色模様。219頁 星☆4.0
    組織の幹部へ台頭している志賀東は墓参りの花を買いに店に入る。古い花屋の若い店員・庵寺春樹(あんじはるき)は盲目だった。

    今回は志賀東を深堀りしたい。彼の素性は先代の組長が連れてきた以外分からない。どんな子供時代を過ごし、成長したのかは伺い知れないが、鍛えた体と眼光が普通の生活ではなかったことを物語る。そんな志賀が春樹に惹かれいく。序盤、車のウィンドウに映った表情をつぶやくシーン。もう、なにか芽生えている。花屋の奥で、大事に整えられた仏壇。小さな日常と向き合う生活。彼が取りこぼしたモノを春樹は持っていた。素性のしれない客を明るく迎える春樹のやわらかさが毎週花屋へと向かわせる。また時折みせる獲物を狙い定めるような目つきは今までの彼の生き方。獲物を虜にする手腕はいくらでも持っている。なのに、春樹には手が出ない。その葛藤をセリフは少なく、タバコの煙、視線、しぐさで魅せていく作者の手腕は上手い。

    春樹は両親や祖母を亡くし祖父も病床にある。やがてくる孤独。そこへ現れた傷のある男。表情は見えなくても、笑い声や匂い、皮膚から伝わる優しさに春樹の心が変化する。盲目の中をいつもひっそりと暮らしてきた春樹にとって、志賀と笑顔でいられるのは諦めたくない生き方なのだろう。

    最後にタイトルを思い出す。夜の花は白や黄色が多い。夜に目立つためだが灯のようにも見える。志賀の灯りに春樹がなればいいなと思った作品。

    蛇足で、未来予想図の花屋は舎弟(顔出しOK)の方々に囲まれて結構繁盛しそうな気がするのは楽観しすぎだろうか。
  • ボーイズラブ・コンプレックス

    横澤しっか/Canelé編集部

    買います
    ネタバレ
    2025年8月31日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 冴えない会社員・本田真太は風俗のキャッチに会い、VRのアバター「マコト」を手に入れる。外見にコンプレックスのある本田の思考から生み出されたマコトは秀才風でスポーツもできそうなイケメンだった。VR風俗は接触ゼロ、素性バレ無い、秘密の体験ができる学園コミニティ。

    設定も面白そうと1話を試し読み。マコトは学園内でアキと出会って初体験をする。その「アキ」は職場の上司という展開。

    本田の童貞陰キャの感じがリアルすぎてワクワクする。初見だとマコトに惹かれているのはアキと読んでいる。現実もそうなるのか、めっちゃ気になる。職場の上司は仕事ができるディレクターだけど、女性関係で困っているタイプにみえない。なぜ、VRの世界に入ってきたのかも訳アリな感じでいい。

    この先、本田がイケメンに変身とは想像しにくいが、作者さまがどんな着地点を見せてくれるのか楽しみ。単行本になったら購入してレヴューしたい。
    星⭐︎は期待で4.0
  • ハートビートエラー

    文川じみ

    恋の虫、ふたたび
    ネタバレ
    2025年8月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 同級生リーマン再会BL。最高!言うこと無し!コミックス化を垂涎状態で待っている。
    1話が無料期間。48頁(なかなかのボリューム♡)

    主人公・天ケ瀬律は転職先の会社でかつての同級生・結城圭介と再会する。高校時代、パソコン部の窓際から眺めていた背番号6の野球部エース。会話さえできなかった憧れの存在が今や営業部エースとして活躍している。そんな同級生が天ケ瀬を食事に誘ってきた。

    もう、天ケ瀬のモノローグが挙動不審でカワイイ!校舎から背番号を眺めて心浮き立つ様子は恋のど真ん中。ふたりっきりの食事で緊張して会話もチグハグ。結城に「俺、そこそこ魅力ある?」と探るような視線で聞かれて、バグって生ビール4杯飲んじゃうのもたまらなくいい。勢い余って、本人前に結城語りの熱いこと!(ああ、首筋がムズムズする~)

    文川じみ先生の恋する男児は恥じらいと恋のパワーが満ちている。今回も腐の心が奇声をあげる予感。
    ストーリーは天ケ瀬をタクシーにのせる場面で2話へ続いている。酔った天ケ瀬の腕を軽々と担ぎ、大きな手で支える結城。そして営業部エースの手腕か百戦錬磨の達人かの流れで次の約束まで取り付ける。

    腐の心がつぶやく、「まずいぞ天ケ瀬、結城はタラシだ」
  • 牢獄の王子と騎士の密約

    案丸

    隻眼と伸びた髪の革命
    ネタバレ
    2025年8月30日
    このレビューはネタバレを含みます▼ シンバ王国再建物語。第二王子・ユリウスと美形騎士・フェルノの革命BL。牢獄から晴れ舞台に立つ王子の活躍と犠牲の上に立つ革命家の人生 246頁

    物語は国王の庶子・ユリウスと見習い兵士のフェルノが地下牢で会い、国の制度と国民をも変えていく展開になっている。
    ユリウス齢7歳から足掛け16年の再建までの道のり。最初のチャンスは15歳。暗い牢より光の下に立ったユリウスは権力だけに頼らず、じっくり時間をかけて制度を築き上げる冷静な策略家だった。ユリウスは地下で忍耐を学び、強さを蓄えていた。彼を支えていく美貌の騎士フェルノは家族を亡くし、生きる気力をない田舎者。地下牢で人生をかける人に気づいて、武力での強さを求めていく。

    ユリウスの少年期から青年に成長する過程も良かった。特に戴冠式の場面は皇太子という言葉がピッタリの姿だ。しかもここでのフェルノとのやりとりが痺れる。相手の本音が鮮明に際立つ構成が素晴らしい。そしてフェルノは願掛けをしているのか、髪がドンドン伸びていく。長髪の美人が長剣で格闘する姿はベルばらのオスカルを彷彿とさせる。ラストは革命家の悲哀が潜んでいる。タイトルの「牢獄」がエンドロールに映し出されるような締めくくり。

    蛇足で、二人のラブに白抜きが無いことに気が付いた。あれが無いと集中力が途切れない!ものすごい清々しい気分で読了。作者の画力と憎い演出に感服する作品。
  • 蒼究の十字架

    大竹直子

    知覧特攻平和会館レビュー
    2025年8月27日
    フォロー様のレビューから拝読しました。ご紹介ありがとうございます。
    とても素敵な作家様と作品です!全45頁。

    今回は3月に行った知覧特攻平和会館レビュー。鹿児島市内から車で約1時間の西の山間にあります。錦江湾から離れて山を抜けるように走りました。いまでこそ観光地になっていますが、80年前は村や集落が点在する静かな田舎だったでしょう。

    25頁の隊員が酒を飲み交わしている場面は三角兵舎として平和会館の側に再現してあります。本来の兵舎は空爆を受けないように山林にありました。平和会館には「隼」や「疾風」のレプリカもありますが、海に沈んだ戦闘機を引き上げた展示もあります。無残といいつつ現役の迫力がありました。特攻隊の遺影コーナーは圧巻です。書簡はすべて直筆です。涙をこらえるのが大変でした。きっと大竹先生も訪問されたことでしょう。フィクションとはいいつつリアルな部分を強く感じました

    最後は鹿児島のお菓子を紹介します。「あくまき(灰汁巻き)」です。もち米を灰汁につけて竹の皮でくるんで蒸すもしくは煮て作ります。わらび餅ほど繊細ではなく、おはぎほど原型をとどめていない茶色の郷土料理。きな粉か黒蜜などをかけて食べます。戦の保存食が始まりで歴史は古く、特攻隊員たちも一度は口にしたことでしょう。有名な知覧茶と合います。柴崎少尉と英伍長はどんな話でお菓子を食べたでしょう。平和という宝物を大事にしたいですね。
  • 鬼夜曲 ~闇に響く亡霊の唄~

    ANANAS/C.R Jade

    音なきアニメの子犬王子
    ネタバレ
    2025年8月26日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 韓国歴史ファンタジーBL。本棚の初入り韓国作品。1巻330頁・2巻290頁【1部完】全フルカラー。連載中で続巻あり。 頁数とカラーゆえにお高め 星☆4.0
    壮麗な描写が漫画というよりはアニメを再生している感覚になる。

    物語は、閻魔大王の三男・ジェシンの驕慢な態度に制裁が下される。罰として昼間は白い子犬となり、元にもどるためには”人間の真心を得る”課題がつけられた。魔界の王子が何故人間の心を得なければならないのか。非力な子犬のジェシンを拾ったのが、国の世子(王位継承者の王子)、イ・ノク。彼には妖の呪いがかけられ、夜毎悪夢にうなされていた。

    最愛の母を失い世子は孤独を深めている。その上、呪いの根は深く呪詛の犯人を追う宮廷ドラマへ。日が沈めば、ジェシンは色気のある美男子。韓服姿や髻(モトドリ)もいいけれど、濡れ場で見せる上腕二頭筋三頭筋や腹直筋の威力がすごかった。世子は華奢な躰に涼やかな美しさを纏っている。ひ弱ではなく、父親に疎まれてもジェシンの揺さぶりにもブレない誇りがある。それでいて子犬と二人っきりになったときの呟きや笑顔には清らかさが溢れている。

    朝日が昇ると無力な子犬になるジェシンは見上げる視線で何を感じるのだろうか。宮廷ドラマに気をとられてしまうが、そもそも課題を与えたのはジェシンの父だ。世子の父も誇り高く威厳を持って存在している。韓国の父親像が垣間見えた。
    世子は子犬に”クムドン”と名を付けた。微笑みと慈しみの声で呼ばれるときに感じる気持ちにも名前はある。物語はまだまだこれからがヤマ場。波乱にみちたストーリーを楽しみたい
  • トーチ【コミックス版】

    ニャオスキー

    次の乗車は
    ネタバレ
    2025年8月24日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ニャオスキー先生!ありがとうございます。そしてコミックス発売おめでとうございます!
    お会いできるのを心待ちにしてました。もう、逸る気持ちを抑えるのが大変。早く読みたいのに読み終えるのが惜しかった。裏表紙まで見逃すまいと頁は丁寧にめくり、そして全152頁を読了。
    一言でいうなら、感情と言葉を一致させるのが難しい一冊。伝えたい気持ちはどんどん膨らんで言葉がつまって渋滞してる。
    ただ旅好きな自分には至高の一冊になった。作中で過去と未来に行けたのも楽しかった。
    収録は4話と短編1話に書下ろし1話。今回も赤裸々な肉体表現は極小だった。

    1話はマジ泣きした。いい作品(無料期間に当たったら是非おススメ)
    2話は洋画テイスト。知恵の輪作品(色々ひねっていたら輪が外れた感覚)
    3話は初老の男性2人が田舎へ最後の旅にやってくる作品
    4話は桜が満開の夜にイケメン2人と電波にのって歌う友人の作品
    どれも短くてすぐ読める。ただし、1話が2時間くらいの映画は観た気分。密度のある情報が詰め込まれているので何度も読み返している。幸せな時間だ。願わくば、是非「あとがき」までたどり着いてほしい。「torch」の始まりと由来が言葉のプレゼントとして待っている。

    追伸:今から映画鑑賞の予定。リストは「恋はデジャ・〇」「ナイト・オン・△・プラネット」この出会いに心から感謝を!
  • きみに願えば

    カラスマトリ

    雲の夜空にとどいた願い
    ネタバレ
    2025年8月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 失恋大学生と訳あり社会人大学生の恋愛BL。206頁。星☆3.8

    流星群が輝く日に、大学生の天野 蒼(あおい)は好きな先輩から「君とは付き合えない」と告げられる。傷心と失恋で酔っぱらった蒼が夜空へスマホを掲げ、3つもの願いを高速再生させた行動が、加賀美 恒(わたる)との出会いとなる。長身、長髪、髭をたくわえ、腹をよじって笑い飛ばしているその人は蒼に語りかける。「これもご縁だし、願いをかなえる手伝いをしようか」はたして蒼は失恋から立ち直れるのか。

    この二人の掛け合いは動と静。若く元気な蒼は関西人。友人のシンジとつるんでいる。方言と関西のノリは悪目立ちするため封印中。明るくておしゃべりが好きでそれでいて相手の心に寄り添える良さは曇り気味。しかも恋愛初心者で甘いムードにビビッてしまう。加賀美は美術学科の大学生。学内には従弟や女友達もいて謎めいている。恋愛ヘタレの素顔をムードとタッチで包んでしまう上級者。次第に蒼は関西弁を解放をしていく。

    今回なんといっても加賀美の色気に驚いた。微笑んでも、戸惑っても、少し不機嫌でも独特の雰囲気が漂っている。例えるなら雲が流れる静かな月夜。その彼が蒼を前にすると、ちょっかいを出したり先輩の電話で嫉妬したりと変化するのは見どころ。それに加賀美は社会人の気まぐれで大学へ来た訳ではなかった。その理由が美術学科の課題と同時並行で明らかになっていく。

    作画はこれから磨きがかかっていく原石状態。蒼の願いを加賀美恒の恒星がかなえてくれる素敵な作品。
  • 魂の番に出逢ったら

    コメダヨシヒサ

    カードがしめす運命の人
    ネタバレ
    2025年8月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家さま、カードが導くオメガバースの世界。167頁 星☆3.8

    新人漫画家の火坂 玲央は次作の執筆に苦戦していた。たまたま入ったファミレスで占いをしている秋風 律と出会う。都市伝説だと思っていた「魂の番」は突然現れた。今まで感じたことのない、腹の奥から全身に走る電気のような閃光を感じて秋風が運命の人と感じとってしまう。

    やわらかそうなタッチの線に魅了されて購入。律はカードを切る手つきとか指先のフォルムが綺麗で繊細な容姿と相まってモテ度が見える。あと、服のセンスも独特だった。それが律を大人っぽくオシャレにみせる。
    玲央はオメガで独立精神が旺盛。漫画を描いているときの充足感で生きている。ふと閃く漫画の構想を描きこむ眼差しの真剣さは凛々しくて魅力的。それでいて恋心からあふれる笑顔や赤面表情は幼さやウブさが混ざってギャップがすごくいい!

    一方で律の背景に登場する祖母はオメガで、浮気性の祖父への愛を貫いた女。魂の番だから愛を貫いたのか、それとも未来をつくるために直感を信じ続けたのか。律が祖母を大切にしている優しさが心に沁みる。だからファミレスで占いを続けているのだろう。

    テンポは軽やか、作風も丁寧で読みやすい。魂の番というドラマチックな設定よりは恋のロマンティックさが全体を包んでいる。オメガバース初心者におススメの作品。
  • 竜帝 皇を喰らうもの

    戦鳥

    禁足地の吟遊詩
    2025年8月20日
    竜が流れ着く場所「竜帝国 アマト」の物語。全ページフルカラー36頁。
    赤い眼を持つ一匹の竜が生まれた。白い苗床からうまれた禍々しい黒い異形。そして竜帝国の皇子を喰らい始める。

    この作品を鉱物の比重で例えるなら金。ずっしりと重くキラキラと輝いている。異形のデッサンも素晴らしく、キャラ設定も丁寧に作られている。作品紹介のサイト元へ行けば、本編とそれ以外の小ネタも出ていて楽しい。
    なんといっても表紙から目をひく。作者の紋章が朱色だったら掛け軸にして飾りたい。
  • ふれてキスして恋着させて【電子限定おまけ付き】

    魚田南

    外はイチャイチャ、内は激甘なふたり
    ネタバレ
    2025年8月19日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 美容大学が舞台の一目ぼれ イチャエ〇ストーリー。219頁 星☆3.8

    野良美容大学の加賀雄大は読モもできるイケメン。恋愛も軽いノリでこなせる器用なタイプ。そこへ姉妹校との芸祭のショーモデルの打診がやってくる。加賀はモデルより裏方がやりたい為に代役を捜すことに。加賀の美意識に響いたのは、人文科の遠児遠(とおじ とおる)彼は伸び放題の髪に荒れた肌、大きな体を猫背にしてうつ向いて暗い生徒だった。

    ノンケの加賀は遠児の造形を一瞬で見抜く審美眼と自由な視点を持てる男前だった。遠児が告白してきたことで、芸祭までの期間限定で交際をする展開になる。ストーリーは加賀のヘアメイクへのこだわりや遠児の過去がありつつ、ゴリゴリのセッが差し込まれる
    いや~、加賀の器用さはここでも発揮されるとは素晴らしい。遠児はパブリックではおとなしくみえるが、プライベートの豹変ぶりは必見。読み進めると加賀の彼氏力が外でも内でも破壊的でカッコイイ!!と胸がときめいてしまった。

    ツーブロックのイケメンとクオーター美人のビジュアル◎ラブ絵露イチャ絵露が書下ろしまでぎっちり詰まった作品。
  • 俺は狩野とヤりてんだけど、

    ブロイラーG

    頭突きで始まる恋の火花
    ネタバレ
    2025年8月17日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ヤンキー×おっとりホワホワ君の学園コメディ。9話で序盤、引きつけられていく。

    早川上水高等学校、略して「ハジコー」は落ちこぼれが集まる不良学校。山本淳平はデカい体格を活かして喧嘩も度胸も規格外のヤンキー。1年F組は女子3人男子18人のクラス。淳平はガラの悪い同級生をねじ伏せてクラスを仕切ったが、そこに儚げで掴みどころのない狩野京介がいた。突如、淳平の下半身がときめいたことで始まるストーリー。

    BLカテだが、現段階では青春群像劇にとどまっている。登場人物は多いがキャラ造形がしっかりしていてサクサク読める。ドタバタ要素多めだが淳平はただケンカが強い乱暴者ではない。リーダー資質もあり、女や弱い輩に拳は使わない。さりげない優しさと気配りもできるカッコいい奴。対する狩野は自分では何も決められない強い依存体質の気弱そうな少年。作中では幼馴染の安部奈々が極めて高い鉄壁セキュリティーを発動中。淳平とのタイマンに腹の座り具合が高校生じゃないと感嘆した

    1話目から面白いと読み進めてキャラたちの背景や感情の機微に沼っている。淳平が狩野の天然アピールでヤりたいモードへ暴走するのが笑いのツボ。もともと淳平はノンケで元カノに捨てられても戸惑わなかった。しかし狩野には日々、もどかしさやためらいを抱えていて可愛い。狩野は一見、草食系の優しい少年に見える。でも十代らしい生気が感じられない、ここも闇深そうで怖い。これから淳平が友達として支えるのか、彼氏として助けるのかはまだ先の話になりそう。

    ふと、タイトルロゴの違和感に視線が止まった。爽やかな青春BLに似つかわしくない雰囲気だ。どうやらソフトヤンキー漫画や学園コメディでは終わらない予感がする。
  • マリッジブルーの僕たちは【コミックス版】

    夏井数

    保守と革新の初恋物語
    ネタバレ
    2025年8月14日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 義兄弟のストーリー。始まりの海中シーンが印象的で購入。 280頁。 初恋、オメガバース、リバ、魂の番の配合でできた作品。星☆4.0

    主人公は少年期に同い年で義兄弟になった瀬名孝(兄)と勉(弟)だ。二人とも α(アルファ)で体格も才能も秀でているが、趣は違う。孝はソバカスの幼顔、対して勉は整った顔立ちのイケメンだ。孝は堅実なサラリーマン、勉はミュージシャンで自由人と対照的。孝はオメガを幸せにすることがアルファの価値だと信じている。勉は既存の価値観にはこだわらず、自分を信じている。そんな勉に「魂の番」が現れた。そのΩ(オメガ)にはΩの恋人が居ることから展開が進んでいく。

    保守的な考えの孝は次々と恋をして、失恋を繰り返していた。そんな彼が癒しを求めるのは海の中とドライブ中の音楽。勉はワガママで自由な性格なのに愛一筋だった。バース性であっさり捨てられても、「魂の番」が現れても、愛を手放すことはなかった。いくらでもできる恋が愛の渇きのまえでは意味をなさないとは、なんとも切ない。

    オメガバーズの設定に既存の価値観が混ざり合って孝の人格はある。最後まで読むと伏線は回収されて視界が開ける部分と、見えない部分の景色が広がる。例えば、孝を慰める音楽はいつも勉が作った音だ。しかし、何故その音が好きなのかは語られない。
    また、勉は孝の恋路を邪魔せずにはいられない。自分以外の恋人ができて離れてしまう事への恐れは自分なのか孝なのかは語られない。語られないのは答えがひとつではないからだと思うのだが、どうだろう。
  • 君は夏一番【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

    狼森圓

    夏の畑に、恋実る
    ネタバレ
    2025年8月12日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 社畜リーマン・東堂聖永(せな)と農家の森田群士(ぐんじ)の農業BL。193頁 星☆3.9
    読み終わった後の癒され度は満点。ハードモードの読み物の合い間に読みたい作品。

    東京で擦り切れるまで働いた聖永は退職して、あてもなく電車に乗り込む。降り立った駅で郡士と出会う。農家を営んでいる森田家に迎えられて夏野菜の収穫体験を経て、本格的な移住へと気持ちが強くなっていく。

    冒頭、聖永が降り立った駅では360度の空と緑が広がる。セナは涙を堪えてたたずんでいた。それは苦しい社畜時代のトンネルを抜けた安堵だけだろうか。どこか喜びにも見える表情が胸にせまる。そこへまるで友達を迎えに来たかのように声をかける群士。群士は弱っている者をほっておけない優しい心根の青年。連れて帰った聖永が誠実でまっすぐに慕ってくれる心地よさに離れがたい感情が芽生える。

    ここでは、よそ者だとか、同性の葛藤とか、当て馬だとかの煩わしい要素はなくていい。聖永の真面目で優しい性格と群士の大事な人たちの力になろうとする生き方があればいい。さしずめご飯と味噌汁にお漬物でお腹は満たされて、ちょっと甘い果物があれば最高の1日。そんな素敵なストーリー。
  • どこにもない国

    草間さかえ

    いとしさを守る男たち
    ネタバレ
    2025年8月11日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 草間さかえ先生の短編集。202頁
    表題作「どこにもない国」と「パラダイムロスト」は上官と部下の物語。終戦間近の南方戦線で上官・竹内慎介は部隊の問題児・早川正美に厳しい指導をしていた。極限状態の部内を治めるには理屈より権力と暴力が役に立つ。二人は暗黙のルールを共有していた。そして終戦後、内地に戻った二人は竹内宅で共に暮らし始める。50頁ほどの作品。

    草間先生の作品は良品宝庫で、そこはかとない品格が特徴。表題作の竹内はひ弱な上官かと思えば、内地では抜刀の姿麗しく、迫力の空気感を漂わせる。それだけで前半の印象は消し飛んでしまった。早川は若く、美丈夫で情熱的。戦地では早川が盾になり、内地では竹内が守る。戦中戦後の移り変わりをタイトルのパラダイムロストで飾るのも秀逸。

    「1と2の間」は幼馴染との恋を描いた高校生・哲男の話。「0と1の間(前後)」と「0か1の世界」は哲男の同級生・三ツ矢と鶴田の長い恋路。恋のどうしようもなさを味わうことができるおススメ作品。最後は茶道の先生と高校生の恋「もののことわり」。全7編が収録されている。

    男性的な骨格で軍服よし、着物よし、学ランよし、スーツは尚よし!で形式美と人物の色気がたっぷり詰め込まれている。10年以上前の作品でありながら、色あせを感じない1冊。
  • 指先の染み 【電子限定特典付き】

    たうみまゆ

    父親のはなった毒
    ネタバレ
    2025年8月10日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 若手議員・櫻田門明と私設秘書・九重と門明の弟・明菜が織りなす政治BL。252頁 星☆4.3

    名家・櫻田家の嫡男は政治家以外の選択がない。資質と努力で門明は議員のエリートコースに乗っている。九重は門明の大学の先輩で在学中にスカウトされた。議員の三男で表舞台に興味がなかった九重は秘書の道を選ぶ。妾の子・明菜は兄の影になることを誓っていた。

    これは議員の息子たちが、政治という毒を飲まされた物語。彼らは武器として情報と言葉を駆使し、日々の心理戦を戦う。政治は派閥の他に外交や歴史まで加味していくと情報過多で思考が翻弄する。点在する伏線が終盤で一気に結ばれる手腕もすばらしく、読み手に筋書きを読ませない構成に唸ってしまう。
    複雑な環境の中、門明と明菜は父・史門の死をきっかけにお互いをかけがいのない存在と認めながらすれ違いは深まっていく。九重は大事な者を見守り続けていた。

    硬派な内容でBLファンタジーの甘さは少ない。ここはストーリー重視でクライマックスの布石を理解される方へおススメしたい。
  • FIRST LOVE

    玉袋ゆめの

    強面坊主とオタク眼鏡
    ネタバレ
    2025年8月9日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 強面坊主×真性オタクの幼馴染BL 全72頁(R-18でお高め)星☆3.7
    威圧感が強い原和樹と、黒縁眼鏡の宏はご近所の幼馴染。成長過程で和樹はヤンキー仲間とつるむようになり、宏はオタク街道をまっしぐらに進んでいる。交友がなさそうな二人がどう近づいていくのか。

    身体の大きさや強面で、一目おかれる存在の和樹。細身で陰キャ丸出しの宏。この二人は、犬で例えるならドーベルマンと狆。このギャップが魅力的。和樹は宏が話しかけても平然として威嚇も突き放しもしない。宏のテンション高めで早口なしゃべりはオタクの特徴をよく捉えている。

    さて、推しポイントが幾つかある。和樹は苛立ちや葛藤を女遊びやタバコでごまかし、本質から目をそらそうとする。それでいて宏が同級生から絡まれると躊躇なく助けに入る。これは視界の隅に宏を入れているってことだろう!そんな宏もヘラヘラとしている表情が和樹の言動で赤くなったり、動揺するのが可愛い。
    作画は粗削りでアンバランスな箇所もあるが、キャラはカースト上位と陰キャのバランスが絶妙。宏が和樹に助けられて、嬉しかった心情を話す場面は萌える。

    宏の黒縁メガネは外れなかったが隙間から見える瞳がちょっとキラキラしてる!タイトルのファーストラブってどっちの初恋だろう?
    凸凹ギャップに絵露もガッツリある作品。
  • 僕らを隔てる青と白

    きゆひこ

    灯台と空白の7年
    ネタバレ
    2025年8月6日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 高校時代交際した同級生の再会ストーリー。星☆3.7
    高校3年の春に三島と石崎帆澄は人知れず交際を始めた。三島は灯台守をする祖父の後を継ぐため自由を制限されていた。そんな姿に石崎は興味をもつ。石崎は漁師をする父と、自営を営む母、そして都会へ出た兄をもつ家庭で育った。ごく普通の高校生だ。二人の交際は制限つきの中でも楽しかったのだろう。しかし進学を期に石崎は三島を振って島を出る。そして7年後、島に戻ってくる

    作中に空白の7年間の描写はない。石崎は三島に会って再び恋しくなる。別れ話が自分を守るためのものか。それとも相手を大事にしたいが故の別れなのかを理解できる十代はどのくらいいるのだろうか。島に残った三島、外の世界を体験した石崎。数か月の楽しい思い出と失恋。傷ついた心を持て余す時間。壊れた関係を修復することはできるのか。

    この物語の軸は石崎が想いを伝え、三島が再び受け入れるかが鍵になっている。なかでも心ひかれているのが潮騒と灯台が織りなす風景だ。灯台の向こうには別の島が浮かび、朝日と夕日が二人の背景にはいる。ストーリーは登場人物の生きざまがメインだが、灯台が見える高校や海沿いの道はなにげに郷愁がある。自分にも同じ人生の思い出がある。よく水平線に沈む夕日を見にいった。日の入りは数分間のドラマだ。泣くときもあるし、心湧きたつこともある。そのときの感情を思い出と共に記憶する。1度は別れてしまった石崎と三島。長い人生に必要な7年であり、大事な潮目になったと信じたい。

    評価がそれほど高くないのだが、島と灯台、海と空の舞台に自分を投影するのも悪くないと見直した作品。
  • アフターゴッド

    江野朱美

    アニメ化してーーー!
    2025年8月5日
    この作品はどのくらい認知されているかな。

    中毒性有り。毒か薬か判断つかない。
    連載中だから何処へ連れていかれるのか分からない。
    限られた紙面なのに読み始めると無限空間に放り出されてストーリーに引き込まれてしまう。
    名作?面白い?美しい?整理された言葉では多分追い付かないスピードで展開する。
    情報の整理が追い付かない。あとレヴュー900件くらい書いたらこの作品をうまく伝えられるかな。

    試し読みから一気に9巻大人買い💦紙でも買いたい。
    そしてアニメ化してーーーー!

    人外もの、グロ耐性がある方へおススメする。
    無料お試し期間中に一度目を向けてほしい。
  • 推しに推されてたありきたりな話

    クロエ

    推しが押しにやってきた!
    ネタバレ
    2025年8月4日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 脇役俳優の里美透と元アイドルの伊坂明の業界ストーリー。1巻39頁 2巻46頁 3巻36頁
    星☆3.7

    俳優歴の長い里美透の癒しは元アイドルで人気俳優の伊坂明=AKIRAの推し活。仕事は脇役ばかりの里美に突然舞い込む短編主演のチャンス。登場人物は2人だけ。相手も知らず挑む撮影現場に現れたのは伊坂だった。
    伊坂明は爽やかなイケメン。グループが解散後は俳優に転身、売れっ子で大活躍をしている。撮影現場でみせる筋肉質の体も眼福。しかも元アイドルとは思えない気配りのできる常識人だった。

    「推しと共演で急接近」の展開は新しさはなくひねりもない。ただ伊坂がオーディションで役を勝ち取った以外は。推しとの共演に喜びはあるが里美の役者魂は主役とはいいつつ伊坂を引き立てていく。小さな仕事でも自分を必要としてくれるなら、期待には応えたいという里美の謙虚さは業界の中にいながら曇った感じがない。その里美との距離を詰めようとするのが伊坂。王道と分かっていても胸がワクワクと高鳴る。地味平凡モブの3種盛りにイケメン体格差年下のトッピングは文句のつけようがない美味しさ。

    伊坂の華やかさも魅力だし、里美の地味さと穏やかさがいい感じに混ざり合っている作品。惜しむらくは短い!
    初読み作家さま、ポテンシャルの片鱗を感じる。(次回は長編で!)
  • あいつ今でも俺のこと好きかな

    明智ヒカリ

    ワガママな先輩と不合理な後輩
    ネタバレ
    2025年8月2日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 高校バスケ部で先輩後輩の再会BL。前編82頁 後編166頁
    オトナのカテでお高め。星☆4.0
    バスケ部でエースだった木崎健児と後輩の幸島一美は15年ぶりに仕事で再会をする。高校時代に一途に慕ってくる幸島を木崎は記憶の片隅でいい思い出として残していた。幸島は可愛い容姿が15年で爽やかなイケメンへ変貌しているだけでなく、木崎の親会社のエリートに成長していた。

    今作品においては幸島の辛さが心に響いた。高校時代は木崎の性欲の手伝いまでしていたが、彼女ができると距離を置かれる。手痛く拒絶されて終わった初恋。なのに幸島は再会の機会を作る。賢く成長できたのに、なんと不合理な行動。
    対して木崎はプライド高く負けず嫌い、相手の事を想像する隙間が狭い。よって人とトラブルが起きる。幸島を振った後15年も経って相手が好意をもっている姿に喜ぶ幼さ。行き詰まった時に都合よく自己肯定感を満たしてくれる幸島がほしいのだ。

    物語中盤まで幸島は木崎に傷つけられてばかりいる。やらない後悔よりやって後悔を選んで何度も敗れる。幸島がそこまで行動するのは、「死ぬほど好き」を知っているから。これは恋心が死ぬまで好きなのだ。それは恐ろしく崇高だがその分苦しみも伴う。大人になっても幸島の初恋は健気で美しい。
    再開後の成長した幸島に惹かれていく木崎。もう高校時代の延長ではないことを理解しつつもプライドが捨てられない。また同じことを繰り返してしまうのか。

    15年の月日をどう過ごしたのかが丁寧に展開する。その内容は現実的。経験を積まなければたどり着かない境地もある。すれ違いや素直になれない過去も思い出としてお互いを絶対的な味方で大事に過ごしてほしい。
  • 劣情インフュージョン【電子単行本版おまけ付き】

    すた

    快楽と大人の劣情
    ネタバレ
    2025年8月1日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 硬派なリーマン×恋愛に自由なバーテンダー 175頁。星☆3.6

    仕事は完璧の五島航太はバーテンダーの櫂と出会う。五島は自分のセクシュアリティが男性ではないかと感じていた。櫂は綺麗な顔立ちで、カウンター越しから五島の悩みに寄り添いそのままホテルへ。お試しの櫂に五島は魅かれていく。

    この作品は、1に絵の綺麗さ。2にキャラの綺麗さ。3・4が無くて5にエ〇の綺麗さ。ストーリーより大人の絡みを堪能するBL。推しは五島のビジュアルと真面目さ。しかし五島が快楽と謎めいた櫂に引き摺られていく姿にハラハラしてしまう。一方の櫂は目を引く容姿の顔面強者。恋愛に真剣になれないと口にしながらセ/フレとは縁が切れない。真剣な五島に相応しくないと悩んでいたり、矛盾が多い。大人の曖昧さにモヤモヤする。恋に真面目に向き合いたいなら身辺整理でけじめをつける強さがほしいところ。恋の不安定さとエチをじっくり愉しみたい方へおススメしたい一冊。
  • 友人の式日 るぅ1mm作品集

    るぅ1mm

    淡い恋の断片
    ネタバレ
    2025年7月31日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 優しいタッチの作風なのに書き込みが丁寧で安定感を感じる作家さま。短編集で4つ収録されて、どの作品も粒がそろっていて良作。ボーイズストーリー。
    1巻176頁。星☆4.2

    1話目は「ななしの恋人」真面目な戸田樹の下駄箱にラブレターが届いたことで始まるストーリー。この話が一番好きだ。戸田樹は名無しと手紙のやりとりを続けて、やがて交際を申し込む。名無しの正体は幼馴染の将悟だった。一通だけのつもりで書いた。それがまさかの展開に将悟は次第に罪悪感や自責の念に陥る。

    2話目は「幽霊屋敷ラブロマンス」地縛霊の少年に恋する霊媒師の話。ガチの幽霊なので人玉が浮遊しているし少年の足は無い!果たして恋は実るのか。
    3話目は「フランケンシュタインの友人」死体をつなぎ合わせて”友達”を作ったハカセの話。”友達”ヴィクターを作ったハカセだが友情以上の感情が二人には生まれてしまう。後半のハカセの眼差しがちょっと怖かった。

    表題作「友人の式日」は亡くなった瞬が友達一也の前に現れる話。瞬には足がある。しかし一也以外には見えない。何故一也の前に現れたのか。終盤に瞬が生命の感覚をつぶやくのが胸に沁みる。

    初読み作家さまだが、これはと見入ってしまった場面がある。2話以外のキャラ達の泣き顔。お腹の底や胸の奥から溢れる感情が涙となって出てきた顔つきが強く脳裏に残った。全作品エ〇はなく、軽いキスがMAX。ストーリー重視の方におススメ。
  • 魔王と一般兵

    samesuke

    寡黙魔王の初恋
    ネタバレ
    2025年7月31日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 最高権力者・魔王×人間界のビビリ兵士・ルノフスの異色BL。
    冒頭から魔王とルノフスの二人だけで始まり、設定は色々ぶっ飛んでいるのにぐいっと引き込まれた。
    196頁。星☆3.6

    失神体質(?笑)のルノフスを助けた魔王。恐怖で怯えたルノフスの潤る目が魔王の恋心を刺激してしまう。
    ほぼモブに近いルノフスが圧倒的な存在である魔王のハートを掴む展開でサクサク読めてしまう。

    中でも強く惹かれたのがイケメン魔王ヴァフェル。性格も非常に穏やかな寡黙紳士で好みだ。キャラデザインの造形もいい!
    寂しげな表情も目を引くし、それでいてルノフスへ向ける表情は心躍るのか楽しそうなのも可愛い。
    ルノフスは人間界で聞いていた噂と違う魔物たちの生活に驚き、彼らが異種の垣根をこえて接してくる日常に次第にここへ帰りたいと思うようになる。

    最高王者が庶民ルノフスへの溺愛執着する様子は最強にツボってしまうと実感した作品。
  • トライ&アイラブユー【電子限定描き下ろし付き】

    echo

    親友たちの変わっていく気持ち
    ネタバレ
    2025年7月28日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 定食屋で働く今村たくみと理学療法士の簾は幼馴染で同居生活中。ポジティブ思考のたくみは何故か恋愛がうまくいかない。失恋の度に頼るのは同居人で親友の簾。やけ酒をするたくみに簾は自分と交際を試してみないかと提案する。果たして明日から恋人になれるのか。そもそも友達と恋人の違いってなんだろう?

    読み終えたら良い映画を観た後の高揚感や多幸感。簾は前髪を上げても下しても髪型変えても男前だったなとか、たくみは運動音痴で面白かったなを思い出す。一番良かったのは、「たくみが楽しいなら嬉しい」と簾が微笑みを見せる場面。いつも目の前で知っているのに初めて体感するような新鮮さ。たくみは簾の表情に新しさを感じる。簾はたくみと一緒のときの表情がいい!しかもたくみをよく見ている。その上、妙に落ち着いていてカッコいいのも良かった。
    そして忘れてはならないのが、もうひとりの名脇役・フィレットのジャクソンだ。セリフこそないが二人の癒しであり大事なパイプ役。細身の体で紙面に登場してこちらも和ませてくれる

    たくみと簾はたくさんの思い出を抱えて友達から親友へ。経験を積んで行き着いた先にあったのは今日も明日も一緒にいてほしい人の優しい顔。派手なイベントはないけれどシンプルでいい話。
  • アウトサイダー・コミュニケーション【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

    ツノナツメ

    分かりにくくても伝わるもの
    ネタバレ
    2025年7月27日
    このレビューはネタバレを含みます▼ ヤンキーと優等生の青春ストーリー。星☆3.8
    金髪ピアスの関陵司と特進で優等生の岩代弓弦は対極のタイプ。無断アルバイトを目撃された関は岩代が機転を利かせて出した申請を「おせっかいだ」と突っぱねてしまう。言い合いの中で岩代がケガをしてしまい、関はやむなく手助けをすることに

    無表情で理詰めの優等生を級友は「火星人」と呼び。遠巻きにしている。しかしそんな彼をぶっきらぼうながら世話を焼いてくれる関。岩代はその態度を嬉しく思うようになる。関は丁寧な感謝の言葉をかける岩代に新鮮さを感じる。作中の関は近寄りがたい雰囲気さえなければ女子ウケする魅力もチラリとのぞく。一方で岩代は関への興味が増大。次第に伝える言葉も「用事はないけど、明日も会えたら嬉しい」(裏を返せば毎日会いたいの高度なテクニック)になっていく。岩代の三白眼は睨んでいるのか?それともみつめているのか。淡々とした表情でも眼差しは真っ直ぐだ。ケガが治っても、ふたりは一緒の時間を作っていく。

    クールにみえて岩代の言葉に振り回される関。勉強ができて多くの言葉を知ってもムードという空気が読めない岩代。わかりにくい表情でも関の照れてる顔で伝わるものはある。
  • あいの話

    清水ともみ

    あいの本質に涙
    ネタバレ
    2025年7月25日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 反社の構成員をクビになった男がクリスマスの寒い夜に小さな命を拾う。全78頁。
    テーマは命、社会、親と子、葛藤、運命そして愛。

    幼少期に足を怪我して後遺症のハンデを負いながら社会の片隅で生活をする星野藍。拾った赤子は生後6か月の女の子。彼は赤子にゆう(優)と名をつけて育て始める。彼女は盲目のハンデを持っていた。
    藍はけっしていい人でも強い人でもなかった。父親の暴力に母親との別離が彼の人格を形成している。ゆうの夜泣きで自分は寝不足の日々、解雇や倒産の憂き目と苦しい生活を経験しながら日々を積み重ねる。それでも目が見えないゆうは藍の好物がプリンだと知っているし、得意な歌で楽しませることだってできる。短いけれど幸せな時間を共有するふたり。

    この作品をよむと親子の愛とは何か、命が生まれてくる意味が胸にせまる。物語の冒頭、孤独で自由な藍の生活に果たして幸せはあっただろうか。そして中盤から終盤にかけては愛の本質を問いかけられる展開がある。どんなに時間がすぎてもここには優しい愛が描かれている。
  • さよなら、あの日の服従【単行本版(シーモア限定描き下ろし付)】

    せきとう

    ネオン街の家路
    ネタバレ
    2025年7月23日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 弱者と強者の逆転劇。
    初読み作家さま、夜の街を舞台にして、その筆致がネオン街の風情にマッチしている。伸び代を感じる。

    夕焼けの校舎にドボルザークの曲が流れている。傷つけられる鯉川皐、暴力で蔑む柏木圭哉。高校時代にどのくらいイジメは続いたのだろうか。暴力の理由は鯉川がゲイという噂だけだった。

    柏木は高校では強者になれたが、社会に出れば広い世界が彼を反社の末端で小遣い稼ぎの日々にする。卒業後、鯉川は夜の街でメイクと衣装で着飾ってバー「QUEEN」のNO.1。しかも反社幹部のお気に入りに成長していた。

    この作品が面白いのは逆転劇と夜の街に潜む人たちの生きざまが見え隠れするところ。弱者側になった柏木。QUEENのママや見た目は悪いが頼りになるアヤメ。反社幹部タツミの過去。そして強者側へ変化した鯉川。柏木は家が貧乏で兄弟が沢山いて教育を受ける時間がなかったのかもしれない。だからといって暴力で傷つけていいわけじゃない。再会できたとき、鯉川は柏木に強い復讐心を持ったはず。ズタボロにできるチャンスを掴めたとき、どんな選択をとったのか。ここからの展開は鯉川の人間性の凄さを感じた。本当に弱い者は恐れてばかりだ。強くなるには変化を恐れないこと。柏木は自分の変化と今までの清算に目を向けていく。変化のきっかけはいつも鯉川だ。綺麗な顔立ちに色気のあるホクロ。彼の好きな夕飯は親子丼。家路を急ぐ鯉川のアパートには灯がついている。
  • りんご、木から落ちる

    犬時/笑平

    りんごと語り手
    ネタバレ
    2025年7月22日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 配信されて間もなく購入し、このストーリーを思いつく人は凄いと胸がざわめいた。
    全4作品の短編集で1巻198頁。さらに2巻は2作品が収録されており75頁。どの作品も粒そろいで全部語りたいがレヴュー制限できつい。
    まずは表題作「りんご、木から落ちる」は評価がダントツ高い作品。
    学園の人気者(ファンクラブまである)黒川楓がリンゴの着ぐるみ姿で熱中症に倒れてしまう。彼を介抱したのは園芸部部長の高見清春だった。これを境に楓は清春に惹かれていく。やがて告白。普段の楓はキザで自信家。歯の浮くセリフをサラリと口にするも何故か人気者。そんな彼が清春と二人きりになると赤くなって可愛い乙女(それもとびっきりのウブな少女)になるギャップが衝撃だった。楓の懸命な好意を可愛いと思いながら自分の見た目や性別で釣り合わないと悩んでいく清春。思慮深く誠実な清春と好きに前向きな楓。対照的なのに思いあう熱量が同じなのもグッとくる。笑平先生のタッチは一目で分かる。クセとみるか味と感じるかは受け手次第。少なくとも楓が乙女になる瞬間の表情はこの作風だからこそ。清春の性格や行動は犬時先生の繊細な世界観が伝わってくる。2巻は部室で我慢できなくなった二人が進展、誠実なはずの清春がリードして萌えポイントだった。

    2作目は人の心の声が見える大学生と後輩の話。3作目は女装趣味のゲイとノンケリーマンの話。コメディの要素を盛り込みながらも最後は感情が振れてしまう内容になっている。

    つぎは4作目の「オレは人気者」闇DKBL。マウントを取らないと落ち着かない鈴木五郎とドジな仮面の下に闇を抱えている小笠原洋介。1巻ではこの二人の奥深いところは計り知れなかった。2巻でやっと二人のドメスティックな関係が見えてくる。だが、それが加虐性なのか執着なのか寂しさを埋める素材なのかは作中ではつかみにくい。このあと五郎の家庭環境や洋介の仮面を作っていく過程があれば希望は差してくるのか。しかし物語はその一部しか開かなかった。
    素晴らしい語り手として輝く才能をもっとたくさん発揮できた犬時先生、ハートを打ち抜く作品をありがとう。また読みます。
  • 今夜も使っていいですか?【デジタルコミックス版】

    あいかわあき

    妄想劇場
    ネタバレ
    2025年7月20日
    このレビューはネタバレを含みます▼ 手作り弁当を交換条件に妄想劇場(ずりぃネタ)へ連れて行かれるリーマンもの。かなり斬新だった。128頁。
    結論はレビュー書いておこうと思えるくらい面白かった。星☆3.9

    木羽奏助と安西宙人は会社の先輩後輩。木羽はゲイで上司に淡い片想中。そこへ後輩の安西から手作り弁当と交換で夜のズリネタに使わせてほしいともちかけられた。めちゃくちゃ美味しいオカズを食べられる魅力に抗えずOKする木羽(あーチョロい、現実ならセクハラだがここはBL)

    毎日濃密なシチュエーションのネタがドヤ顔安西の高解像度な解説で繰り広げられる。
    初めての夜から始まり玩具を使うプレイまでバリエーションは豊か、劇場の木羽はどんどん開発される。
    しかし現実は昼休みの会議室で楽しそうに話す安西と恥ずかしそうな木羽がランチしている、これはこれでかなりの羞恥プレイ(笑)

    そう、ここまでくれば察してほしい。安西は推しに押しているのに木羽の鈍さはスペシャルだった。
    序幕はコメディ寄り?だが木羽の恋心をはさみながら物語は最終幕へ向かっていく。
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