2075
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2075

三月えみ

愛しきロボ。ネタバレなしで/8.29追記

ネタバレ
2025年8月25日
このレビューはネタバレを含みます▼ 旧型リールーのトートが愛らしくて愛しくてたまりません。私がミカだって交換するだなんて言えないですよ絶対に。ラスト、何度読んでも泣けてくる。
隔離期間終了後、ミカが思い出してる旧型トートの絵、何度見ても悲しくなる。その後、明るめの読後感が待っていると分かっていてもです。その後の、巻き付いて離れないトートを思い浮かべるシーンも、ぎゅっと胸を掴まれます。

この終わり方は救いなのですが、復活して良かったハッピーと受け取っていいのかはちょっと分かりませんでした。「前任リールーのメモリをそのガワで再生するな」ということとどう違うのか、新型にデータを載せ替えたとして、それは本当にトートと言えるの?
そういう意味で、新型トートは旧型トートの擬人化を見ているようで、不思議な気持ちになりました。

でも、何度も読んでいると、これはやはり同じトートなのだと確信して来ました。新型トートは涙を見せるところが描かれていますね。今までのシリーズでは、アオイもスルガも泣くことができないと言う表現が入っていました。トートでなければAIが涙は見せないだろうし、このような人間臭さがオリジンのコピーでもない生粋ニューオーダーのエラーから生まれたことは、確かに“希望”と思えます。
「俺には希望に見える」と言ったサガミの気持ちも思うと切ないですね。

すべて読み終えてから改めて表紙を見ると、ボロボロになった旧型リールーとその中身を抱きしめているように見えて、また胸が痛くなりました。
そしてP54のミカは、中空に手を伸ばし、旧型トートを抱きしめているのでしょう。

それにしても、あの愛すべきトイレットペーパー型の造形を考えた作者先生に脱帽です。

2025.8.29追記 Chapter.2
1話完結だと思ってたから続きを読めて嬉しいです!! 可愛いトートは人間になったんだなあ。そしてこれはシリーズの完結でしょうか。弔われたオールドAIはあちらではオリジンに還り、一つになるのかなと思いました。
そしてスルガはやっぱり切ない…。
たった48Pで、まるで良質な映画を1作観終わったような気分です。1ページ1ページが大切で、このページをめくったら変わってしまうかもしれないと、大切な時間を刻むように読み進めました。ここまで描ききった先生に敬礼。

シリーズを通して、人間の同一性とは何かについて深く考えさせられました。
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