このレビューはネタバレを含みます▼
戦争を賛美するでもなく、かといって戦争を過度に批判するわけでもなく。
淡々と「そういう時代だった」「こういう人たちが居た」という事実ベースの悲しさを描いた傑作だと思います。
こういう戦争ものの作品はどうしても誰が悪い、何が悪い、政府が他国がとか、良くも悪くも作者さんの思想が入ってしまいがちで、それが肌に合わない作品もあるのですが。
それを極力入れていない表現に徹しているのが本当に素晴らしい。マユとサンという現代の価値観を持った架空のキャラを、現実であったことに投入することへの誠実さすら感じます。
物語としても秀逸で、作中で断言はしきらないけど、おそらくマユはお偉いさんの息子で戦争に行かせないために女装をさせてたんだろうとか。
マユが男性と分かると最初後輩たちに「先輩の部屋に行って良い?」と言われ動揺していたり少女向け絵ハガキを趣味じゃないと言ったり、読み返せば男性的なところが見え隠れするのも秀逸。物語としてもキレイに伏線を貼っているため何度も読み返す度に印象が変わります。