タイトル未定のプロローグ
」のレビュー

タイトル未定のプロローグ

夜更宵

片田舎のDKの眩しい恋とその顛末

ネタバレ
2025年9月1日
このレビューはネタバレを含みます▼ 高校の同級生・八田守叶の落としたノートを読んだ結城七海は、その興奮を伝えようと担任から八田守くんの住所を訊いて家を訪ねます。呼び鈴に返事はなく、鍵が開いていて物音がしたことから七海は空き巣かと家に飛び込みます。ところがそこにはいたのは、見知らぬ男性と「真っ最中」な八田守くんでした。思わず「彼氏?」と訊いた七海に、八田守くんは違うと軽くて答えて行為を継続するのでした。七海はそっとノートを置いて帰って来るのですが、その時の光景が焼きついて離れなくなってしまいます。八田守くんが中学生の時に賞を獲ってから小説を連載していること、人の心の機微を知ろうと出会い系で色んな男と関係していることを七海は知ります。八田守くんの書く小説と同じくらい八田守くんに惹かれた七海は、出会い系の男を切るために彼氏のフリをして八田守くんにキスするのでした。家でも学校でも一人ぼっちで飄々としていてお昼はいつも一人でカップ麺という八田守くんが抱えている寂しさや、そんな八田守くんの全てを受け止めようとする七海の優しさが丁寧に描かれます。DKの両片想いからの夏休みがたまらなく眩しく、それを逃げ水に例える八田守くんの、書かずにはいられない小説家の業が切ないです。二人の長いプロローグ、ぜひその行方を確かめて下さい。
いいねしたユーザ1人
レビューをシェアしよう!