蜘蛛の男【単行本版】
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蜘蛛の男【単行本版】

あるくジョー

雰囲気は好き、だけど何かぬるい

ネタバレ
2025年9月7日
このレビューはネタバレを含みます▼ 初読み作家様。私の好みよりは線がぱっきりしすぎているものの、絵柄全体の雰囲気にひかれて購入。
マフィアの愛人だったウィリアムと、彼にひそかに執着するナイン。「しばらくやってないな」なんて考えながらバーに男あさりに行くような、貞操観念ドライな受け、けっこう好きだし、そんな受けに執着して裏で狂気の振る舞いをする攻めという組み合わせはなかなかよいし、絵の見せ方とか、作品の雰囲気の出し方とかはいいなーと思ったのだけれど。。。

なんだろう、憎しみとか裏切りとか、身代りにしようとしてたとか、悲惨で残酷な真実が充満してる話なのに、何かがとってもぬるい。何がぬるい?
うまくいえないけど、上っ面だけ深刻というか、いわゆるよくある悲惨な「ネタ」を寄せ集めてつなぎ合わせて作ったような話に私は感じて、雰囲気だけマフィアっていうのも、コメディーならいいのだが、このタイプの話でそれをやられると、絵の感じがよいだけに残念に思ってしまう。

また、絵柄がいいのにちょいちょいでてくる、顔のない脇役の描き方に違和感。探偵マンガとかで、犯人がネタバレされる前、犯人を黒塗りシルエットに描いてわからないようにしたりするけど、あの黒子のような感じを思い出してしまい、ギャグっぽくて気が削がれた。エリックの顔をあえてぼかしていること自体はいいと思うけど、頻繁に真っ黒顔が登場しすぎて期待されているような効果が発揮されていないと感じた。さらには途中からでてきたレイモンドまでスキンヘッドで、この作品、このシルエットの人物多すぎやしないかとどうでもいいことが気になって、大変もったいない。
おまけページで顔だけ真っ黒ですりすりしてるエリックというのはなんともシュールだったけど、やっぱり探偵漫画の犯人に見える(笑)うーん、この表現もっとどうにかできないかな。

なお、最後のAnotherLifeは、どうなんだろ。。
本編であんなラストで、そのあとにこれを持ってくるのは、私は何か違うと思ってしまった。もう一つの人生の可能性を、ここで見せなくてもいいような。

ごちゃごちゃ書いたが、まぐわい方とか抱きしめ方とか、絵柄が安定していてとてもよかったし、裸体の見せ方も魅力的なので、もっと濡れ場がみたい!
漂う空気みたいなものもよかったので、次作に期待させていただきたい。濡れ場じっくり濃厚長めで、ぜひともお願いいたします!
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