このレビューはネタバレを含みます▼
5巻末予告では2023年春6巻となっていたけれど、シーモアさんでは続きを読めないのかな? 主人公のサイコパスをどう受け止めるかは複雑なところだけれど、現実には絶対できないことを前提に創作としてこういった表現は許してほしい、リボ払いのような持たざる者からさえも搾り取るようなシステムがあるのだから、秩序社会(=本来カオスなところを頑張って頑張って秩序的に保とうとして、成し遂げられずにいるけど自分たちのために少しでもよくしようと頑張っている社会)で、裁けない悪ってあるよなあと思うからこそ、こういう理不尽さを訴えつつ現実には不可能なぶった斬りの結末を見せる作品は生き残ってほしい。主人公が正義感とか必殺仕事人とかではなく、ただのサイコパスというのが押しつけがましくなくていい。サイコパス同士で互いの死肉を喰らいあっている感というか、カタギを巻き込まない形の闘争というか、そういうところがこの作品はいい。彼の被害者が一個の人間として一切掘られておらず、故意的な悪の純粋な悪だけを抽出して、それを集合体のように再構築したようなキャラに描かれていて、そっちに感情移入しなくて済むのもよかった。構図だけ見ると特撮ヒーローと、悪とされているものの集合体としての怪獣(人間社会で生きていかなくてはならない子どもたちに人間社会の善悪の初手の部分を一応でも教えておきたいんだろうね……)。なんだけど、実際の人生を経験していくと善悪とは何かを考えすぎてニーチェとか読んじゃう、そういう大人の特撮的あれかなっていう気もします。私刑人はヒーローであってはいけないと思うから、壇をサイコパスにしたのは正解だと思うし。警察官でそれなりに出世している仕事のできる人だけどサイコパスの殺人狂というのも一種のアンチテーゼが含まれていて。壇のいかれ具合が、単純にスカッと復讐劇というよりは、より深く正義とは、と考えさせる設定でいいなと。