恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで【単行本版】
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恋愛体質 恋を知らない僕が君を愛するまで【単行本版】

近藤旭

大人でビター。気付けば泣いてました

ネタバレ
2025年9月11日
このレビューはネタバレを含みます▼ 賛否分かれてる作品って何かしらきつい描写があったりするイメージなのですが、一宮の嘔吐と深山の恋愛体質。作品の肝である部分が重厚に描かれているので一巻だけ読んで挫ける人確かに多いだろうなと思うのですが、ぜひ3巻まで読んでほしい。
甘くて幸せなお話を求める方は向いていないのは間違いなくて、ひたすらに重くて辛い。なのにこの2人から目を離せなくなるのは人間臭いからですかね…。
一巻の終わりに過去のトラウマだったキスを深山が特訓してくれたから乗り越えられて(ゲロキスまでするんですから)普通ならここでハッピーエンド待ったなし。
でもそうはならずに何ならここからが本番と言わざるを得ない深山のどうにもならない体質。
辛いのに離れられない、深山のどうしようもない気持ちが痛くて痛くて…。頭では矢倉との関係が良くないことだとわかっていても縋らずにはいられない。沼です、底なし沼。
それを全部分かった上で深山という存在丸ごと受け止める一宮、本当できた男。
献身的に深山に尽くす一宮も考えてみたら、深山が打算的だったとはいえ何度も嘔吐しても嫌な顔をせずに一緒にいてくれて、好きにならないわけがない。
言い方は悪いけど深山が落とした男は深山にとって自分を救済してくれる存在まで昇華したいい男だったね。
一宮にとっても過去のトラウマを上書きしてくれた深山という存在は彼の人生観を大きく変えてくれたから、お互いにとって過程はどうあれ自分のありのままを認めてくれた稀有な存在。
キラキラした恋愛とは程遠いどろどろで澱んだ愛憎溢れる描写の数々に心がぐっと苦しくなるんですけど、それを乗り越える途中で見られる2人の何気ない日常に気付けばじんわり涙が…。
あれだけ矢倉に依存していた深山が自分の手でキーホルダーを引きちぎるシーンは感極まりました。
奥さんとのシーンはあの後味の悪さがリアルで(きっと現実はもっと厳しいでしょうが)漫画ならさらっと割愛しそうなシーンもしっかりと含まれていて深山の罪の重さもそれを背負って行かねばならない責任も感じさせられました。
深山のような存在が幸せを望んでは行けないかもしれませんが幸せになってほしいと望んでしまうのは過去を垣間見てしまった性なのでしょうか?…でも私は2人には幸せになってほしい…!!!作品一つでここまで考えさせられるとは…作者凄い…。
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