ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される(コミック)
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ずたぼろ令嬢は姉の元婚約者に溺愛される(コミック)

サクマノマ/仲倉千景/とびらの

9巻

ネタバレ
2025年9月12日
このレビューはネタバレを含みます▼ ヒロインことマリーの男爵家問題&行方不明の姉問題が解決するまでは、マリーの成長を読む物語という感じ。他人の意思に振り回される形で嫁いだマリーに関わるキャラがみんな優しい苦労人。失敗や間違いに寛容で、整理のつかない話も聞いてくれる。献身的な性格の使用人が多くて、技能才能もそうだけれど人間力がとても高い。自ら選んで暮らしている、とマリーは思っているみたいだけれど、流れ流れてその選択に覚悟を持っているだけで、必ずしも自らが選んだ道ではないと思う(ミオは元々拾われた子で、その運命はミオ自身が選んでいない。少なくともこの作品の世界観社会では出自で職業を完全に自由に選ぶのは難しかっただろうし、ある程度消去法で人生を選んだ側面もあると思う)から、人生を輝かせているのはマリーを含めてその人本来のポテンシャルだと思う。
使用人ネタの細かい所だとトッポの太ったり痩せたりが可愛い。序盤に登場するイレギュラーないじわる使用人以外は、みんな(精神的にも)強くて優しい。絵師さんはいじわるキャラを、いかにもいじわるそうな顔で描くのが上手い。記号的にこれ絶対にヒロインに嫌なことしてくるキャラだ、と直感的にわかりやすくていい。漫画の特性をこういうところで活かしているのが好き。
マリーが成長し、マリーの実家問題が片付いた後は、王家とのドロドロストーリーがスタート。第三王子ルイフォンが、実は哀しき人生を歩み背負っていたことが判明し、印象が一気に変わる。そんな哀しいキャラだとは思わなんだ……。マリーや姉のアナスタジアの時も「身内によって身売りさせられる」というキーワード、テーマが出てくるのだけれど、男性側のそれを担っているのがルイフォン。貴族社会の身売り問題がこの作品の大きなテーマなのかな?
単純なヒロインの人生大逆転劇、みたいなストーリーを期待して読み始めましたが、話が進むほどにドロドロとした人間ドラマがありました。マリーの実家問題には、母親が毒親と化した根源がありましたし。やっぱり自分(親側)が夢想する箱庭設定に子どもを当てはめて夢小説に付き合わせるみたいなのは、毒親あるあるですよね。私も祖母のフリースタイルすぎる振舞を我が家は劇団おばあちゃんやねんなー、と冷笑し何とか心の平穏を保とうとしていたことを思い出し。それもあってマリーやアナスタジアのストーリーでは結構感情移入してしまいました。
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