初恋、ざらり
」のレビュー

初恋、ざらり

ざくざくろ

読後感がよかった

ネタバレ
2025年9月19日
このレビューはネタバレを含みます▼ 関係に悩みながらも幸せになれたハッピーエンドで読後感が良くて漫画として楽しかった。
けど現実に立ちかえっちゃうと、少しシニカルな受け止め方もしてしまう。
・結局、アリサの見た目が可愛かったから受け入れられた。性格の良さは受け入れてくれて人付き合いが発生してわかること。ルッキズムといえばまさにそれまで。ここに発達障害などが加わると、見目を人から好かれるように整えるのも難しくなってくる。
・アリサはとても素直でやさしいけど、知的障害者の人が優しいとは限らない。人からバカにされたりできないことが多いために自己肯定感が持てなかったりして、被害妄想や自己憐憫に駆られることもある。精神疾患を合併して情緒不安定になったり、親にも知的障害があってきちんと養育されていなかったり、人が良かれと思ってしてくれることの意味がわからず逆恨みしたり、なぜ自分ができないのかが解析できずヤケになったりする。結果、知的障害があるといことだけでなく、いわゆる「性格が悪い」「付き合いづらい」「倫理観の低い」人間になることもある。社会的に弱者であり生まれつき逆境に立たされながら真っ直ぐに生きることは、本来とても難しいこと。
・岡村さんは相手に対して良くも悪くも上から見ている。アリサを傷つけないように嘘をつき、守っているように見えて実は、アリサを対等な人間として扱っていないし、アリサを取り巻く問題の主体をアリサから奪っている。だからと言って対等に扱われればそれもまたアリサには困難な課題だ。アリサは歳をとる。見た目も若い女の子の可愛さではなくなってくるし、歳を取れば体型だってかわる。いずれは親の介護や自分の病気など、人生の課題はより深く、重く、のしかかってくる。自分の生活を整えられないありさに、他人の介護はできない。その時に、パートナーが自分で自分のことすらできない状況を、好意的に受け止めて「いてくれるだけで人生の支えだ」と言えるのかどうか。収入、生活、大きな決断、全て岡村さんがして、アリサは横で可愛く笑っている。それでうまくいくというのは結構ハードルの高い話だ。

なので、なかなか漫画通りにはいかないと思う。いかなちとおもうけど、漫画は面白かった。
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