刺青の男
」のレビュー

刺青の男

阿仁谷ユイジ

オブラートに包まない剥き出しの美しい作品

ネタバレ
2025年9月27日
このレビューはネタバレを含みます▼ 闇系のお話を読みたくて色々検索していて、オムニバス形式のこの作品に辿り着きました。かなりネタバレしています。

自分はヤクザを綺麗事だけで描いている上っ面だけの話は好きじゃないけれど、この作品のように包み隠さす(それでも足りないだろうけど)描いている作品は読んでみたい方です。

闇社会だけど闇系とはまた違うと思ったのはそこにしっかりとした愛があったからです。

阿仁谷ユイジ先生の作品は初めて読んだのですが、絵柄がものすごく好みでした。
ちょっと劇画調にも見える綺麗な絵で色気があって格好良いのだけど、鼻水垂らしてぐしゃぐしやの泣き顔とか格好悪いのも好きです。

潟木のキャラが素直で可愛げがあって憎めない感じで好みです
久保田の為に我慢して模範囚として早く出所したこととか、たとえ相反する職業でも幼馴染の久保田を本当に愛しているところも良いです。
久保田は自己犠牲をしてまで職務遂行するのか疑問でしが、総監の影があって、潟木を愛してからは潟木のためもあったのかと思いました。

何と言っても一番印象に残ったのは武藤と有馬です。前組長で有馬の母、今は亡き鶴子との忍ぶ恋。武藤には鶴子に請われて胸に刻んだナランキュラスの刺青があった。

そして、最後の「みんなの唄」。
武藤は有馬が組織に造反し、二人で組を出て外の世界で暮らすなど出来ないと分かっていたけれど、有馬を希望通り外の世界へ出してあげたかった。
それは武藤の鶴子への想いも重なっていたように感じました。

生命維持装置に繋がれた有馬が見た夢は逃げた先で普通の暮らしを楽しむ幸せな二人という叶わぬ夢。幸せな二人なのにこれ程悲しくて切ない夢はないと思いました。『皆が幸せな夢を見られますように』『せめて夢だけでも』に更に泣けました。

実は自分の読解力のなさで最初は現実かと思った二人の幸せな生活ですが、久保田の言った時系列と合わずおかしいなと思ってSNSで検索したら答えが見つかり再度読み返して全て有馬の夢だったと納得しました。耳鳴りの音が病室の装置音とは思い付かず先生の発想に舌を巻くと同時により切なくなりました。
再度読み返えして時系列が繋がる作品です。

読了後はこころの奥底に澱のようなものが溜まったようでしばらくはぼーっと余韻に浸っていました。
出逢えて良かった多分一生忘れない心に残る作品です。また凄い先生に出逢ってしまいました。
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