このレビューはネタバレを含みます▼
お金もちで、苗字が漢字3文字な人々が集うスーツな倶楽部、彼らのゆるいやり取りをおおらかな気持ちで愛でたい作品。
キャラが大勢なので、顔の区別に不安があったのだが、眼鏡やひげ、しわの有無など細かな書き分けのおかげで、大きい画面であれば老眼な自分でも見分けられた。
本作だけだと倶楽部内の人物たちの関係性をチラ見した程度、序章という感じ。
メインにあるのは幼馴染の大雅と煌己の両片思い。この二人以外にも、兄に歪んだ執着を見せる弟一ノ瀬兄弟、呪いの (?) 人形と連れ添う加賀美に片思いしてるらしい五十嵐など、今後が気になる人々多数。ほどよくミドルな西園寺、後光がさしてそうな綾小路、奥さんに管理されてる早乙女といった脇役たちや、さらには煌己に仕える侍従の東も小気味良くからんできて盛り沢山。一つ一つの関係を深堀りしてうまくからませられたら楽しく萌えるお話になりそうだが、本作ではまだ関係性の魅力や設定の妙みたいなものが十分には発揮されておらず、これだけだと不完全燃焼で、いろいろ詰め込みすぎて焦点がぼやけてしまっていてもったいない。
また、最初の泥棒や、途中の体調不良の人など、街中でハプニングに出くわし、それに対処するイケメンたちという展開がやや安易に感じられ、登場人物たちのかっこよさを読者に見せたり、なんとか二人きりの空間を作るためだったりなんだろうけれど、もうひと工夫なにか違った展開をしてほしかったような。強壮剤入のお茶を飲ませる展開もいかがなものか。。BLでは薬持ち出して興奮させるようなことをやりがちで、本作ではそんな薬に負けないかっこいい大雅を演出してはいたけれど、この強壮剤展開も安易に感じた。
大雅と煌己の思いが通じあったところで終わってしまい、軽いキスのみでからみはなし。里先生の余計な汁や喘ぎのない、ドライなようでだからこそエロい濡れ場が大好きな自分としては残念。
煌己は世間知らず風だけどやるときゃやり腕っぷしも強そうで、大雅は一途な年下でこの二人いい組み合わせだし、最後の最後でキスの一線をためらった大雅と、自らその一線を越えにいった煌己の姿に、二人の今後の関係に想像がふくらんだので続きが見たい。というか、続きありきの作品だと信じたい。
大人数スタートに初挑戦された作者の前向きな姿勢に敬服すると共に、大好きな「スーツ+メガネ」を拝めたことに心から感謝します。